【63】体育祭編⑦ 〜乱戦!激突する意地と意地〜
──フィールド全体が、沸騰していた。
魔導球が高速で跳ね回り、地面を、空を、縦横無尽に駆け抜ける。
その魔導球を、各チームの生徒たちが奪い合い、ぶつかり合う。
「よし!いっけぇ!!」
アーシスは素早く魔導球に飛びつき、地面を転がりながらひとつを抱え込む。
「もらったぁ!」
そこへ、黒髪のランサー──2-B組のキョウスケが猛烈なスピードで突進してきた!
「ちっ!」
アーシスはすかさず後ろに跳び下がり、ランスの突きを回避。
だが魔導球を保持し続けるのは容易じゃない。
「シルティ!」
「わかってる!」
赤髪の少女シルティが駆け寄り、キョウスケの横から高速の打ち込み!
二人の剣と槍が激しく火花を散らした。
「マルミィ、アップル!援護頼む!」
「は、はいっ!」
「了解ーっ!」
後方ではマルミィが素早く詠唱、アップルもサポート魔法を重ねる。
「《ファストリペル》!」
「《スピードブースト》!」
アーシスの機動力がぐんと上がる。
「っし、いくぜ!」
アーシスは加速し、逃げる──かに見えたが!
「フェイントだ!」
跳ねるようにターンし、逆にキョウスケの背後に回り込む。
その隙にもう一個、飛んできた魔導球を抱えた!
一方その頃、他のフィールドでは──
「よっと!」
2-A組の巨漢、ガイラ=ジンクスが、巨大な魔導球を片手で抱えながら突進していた。
その肉弾戦力はまさに戦車クラス。
何人かの生徒がガイラに体当たりを試みるが、まるで壁に弾かれたように吹っ飛ばされる。
「はっはっは、当たるなよー!」
その後ろから、バッファーのピーピアが次々にバフ魔法をかけまくる。
「パワーアップ!スピードアップ!ディフェンスアップ!」
「いや強化しすぎだろ!!」
「なにあの無敵コンボ……!!」
もはや無双状態のガイラチーム。
そして、フィールド中央では──
赤魔導士ゼマティスが、冷静な指揮を飛ばしていた。
「レスポ、テレーナ、包囲網を狭めろ」
「了解」
白髪の回復士レスポ、炎使いのテレーナが連携し、魔導球を持つ生徒をじわじわと追い詰めていく。
「《氷結バインド》!」
別方向からはシナコのアイスボルチ連打!
「うひゃああ!?」
魔導球を抱えていた生徒が転倒し、その隙にゼマティスがするりとボールを奪取!
「完璧だ」
──全員が本気だった。
勝利のため、意地のため、そして──温泉リゾート宿泊券のため!!
(絶対負けねぇ!)
アーシスは歯を食いしばった。
この戦いに、今までの全てが懸かっている。
「シルティ、マルミィ、アップル!!」
「了解!!」
「はいっ!」
「いくよっ!」
Aチーム、全員が一斉に動いた!
(つづく)




