【62】体育祭編⑥ 〜掴め!愛しの魔導球!〜
【体育祭・最終種目】──魔導球保護ゲーム──
午後の陽光が、砂煙立つグラウンドを照らしていた。
「ルール説明だァァ!!」
ファラド教官の怒号が響き渡る。
全生徒が一斉に耳をそばだてた。
「この競技は、宙を飛び交う"魔導球"を制限時間いっぱいまで保持していたチームの勝ちだァ!
魔導球はどこに飛ぶか分からねぇ!奪って、守って、奪い返せェェェェ!!
最後に持ってた奴らが栄光を掴む!──これが最後の闘いだァ!!」
教官の声に続き、さらに重い宣告が飛び出す。
「そして──この競技、勝利チームには特別ボーナス《10,000ポイント》だァァァァッ!!」
ざわああああああ!!
1年生たちの間に衝撃が走った。
「えええええぇぇぇぇ!?」
「そ、そんな!今までの競技で稼いだポイントって……」
「全部ひっくり返るじゃんかあああ!!」
アーシスたち1-A生徒も絶叫する。
だが──
2年生たちは、涼しい顔をしていた。
ガイラ、ゼマティス、キョウスケら、2年の主力たちが、それぞれニヤリと笑う。
「ふっ……まぁ、そうなるよな」
「体育祭の本番は、ここからだぜ……」
──最初から分かっていた。
体育祭の【本当の勝負】は、この最終戦で決まるということを。
「くっそ……こうなったら、絶対勝つしかねぇ!」
アーシスが気合いを入れ直す。
シルティも静かに剣に手を添え、マルミィは小さく拳を握りしめ、アップルはいつもより真剣な顔で頷いた。
「……よし、やるか!」
◇ ◇ ◇
フィールドの中央に、無数の光る球体──魔導球が浮かび上がった。
それらは生き物のようにビュンビュンと不規則に飛び回り、捕らえることすら一苦労という代物だった。
A、B、C──三チーム全員参加。
総勢50人以上が、今、火花を散らさんとしている!
「みんな、作戦確認だ!」
アーシスが、シルティ、マルミィ、アップル、それに同じチームの2年生たちへ向かって叫ぶ。
「魔導球を確保したらすぐに防衛態勢!前衛が守って、中衛が支援、後衛は回復と状況監視!」
ガイラ先輩が豪快に笑う。
「へっ、言われなくても分かってるさ坊主!前に出るのは俺の役目だ!」
ピーピアが優雅に羽帽子を整えながら、バフ魔法の準備を整える。
「任せな。バフの嵐でフォローしてやるよ」
ティアニーはサングラス越しにウィンクして、神聖魔法の詠唱に入った。
──そして
「位置についてェェ!!」
ゴルザック教官が再び怒鳴る
「スタートォォ!!」
魔導球たちが一斉にフィールドを跳ね回り始めた!!
「行くぞおおお!!」
ガイラが地面を蹴って突撃、目の前の魔導球を素手でガシィッとキャッチする!
「よっしゃあああああああ!!」
「バケモンかあいつ!」
それを狙って飛びかかってきたBチームのキョウスケに、シルティが滑り込みカット!
「させるかッ!」
得意の機動剣技でキョウスケの槍を弾き返す。
「このっ……速い……!」
その隙に、マルミィが展開した魔力障壁でガイラを防護。
さらに後方からアップルの支援魔法が発動!
「《ハイガード・ブースト!》みんなを守る!」
一方──
BチームとCチームも負けじと突撃していた。
Cチームのゼマティスが赤魔法で道を切り開き、Bチームのシナコが氷魔法で足止め!
「氷の道だよっ、みんな気をつけて!」
ツルツルの地面に翻弄される生徒たち!
「おっと……っぶね!」
アーシスがギリギリで回避しながら、宙を飛ぶ別の魔導球に目を光らせた。
「マルミィ、三時方向!飛ぶぞ!」
「は、はいっ!」
二人は息を合わせ、跳躍。
アーシスが空中で魔導球をキャッチ──したかと思いきや、そこへBチームのアーチャー、トキチャがロングショット!
「《マジックアロー・バースト!》」
連射される光の矢──!
「甘いにゃ!!」
ふわりと現れたにゃんぴんがアーシスにミニバリアを展開、矢を弾く。
「セーフ!!」
「ナイス、にゃんぴん!!」
時間は刻一刻と過ぎる。
魔導球の奪い合いは、さらに激化していった。
「てやああああ!!」
筋肉モリモリのガイラと、スリムなゼマティスが組み合い。
「むぐぐぐ……っ!」
「お前……怪力すぎる……!」
押されながらも、ゼマティスは剣と魔法のコンビネーションで対抗。
そして──
「……これ、まるでバトルロイヤルね…」
遠巻きに見ていたアップルがぽつりと呟く。
そう、最初はチームごとに戦っていたが、今や個人技と小規模連携のオンパレード。
それぞれが、自分たちの【生き様】をかけて戦っていた。
残り時間、5分──!!
フィールドはますます混戦へ。
アーシスたちのチームワーク、2年生たちの本気、1年生たちの意地、それらがぶつかりあい、火花を散らす!
──誰が、最後に魔導球を掴み、勝利を手にするのか──!
(つづく)




