【61】体育祭編⑤ 〜一狩り行こうぜ!仮想モンスター狩競争〜
Aチームの快進撃に、他チームの生徒たちは焦りを隠せずにいた。
次なる第三種目は──「仮想モンスター狩り競争」。
「ルール説明だァァ!!」
グラウンドの中央で、ファラド教官がまたも絶叫。
「4人1チームで仮想モンスターを狩るッ!!制限時間は10分!より速く、より正確にモンスターを討伐したチームが勝者だァァ!!」
フィールドには、魔術投影された【仮想モンスター】が多数出現していた。
今回は難易度調整のため、統一された個体──"ブラッドウルフ型"──が放たれている。
「よーし、行くぞ、みんな!」
アーシスたち四人──シルティ、マルミィ、アップル──は作戦を素早く確認し合った。
「今回も前衛は俺とシルティな!」
「了解。サクサク行く」
「マルミィは中衛から攻撃魔法で援護、アップルは回復と支援を頼む!」
「う、うん、がんばる!」
各チームがそれぞれ陣形を整え、スタートラインに並ぶ。
「位置についてェェェ……」
ファラド教官が旗を振りかざし──
「スタートォォォ!!」
「よし、シルティ、左から行くぞ!」
「了解!」
号令と共にアーシスとシルティが前方へ突撃。 二人の間合いは完璧だった。
アーシスが先行して敵の注意を引きつけ、そこにシルティが鋭く切り込む。
「うおおおおッ!!」
アーシスの剣がブラッドウルフの爪を受け止め、シルティがすかさずカウンター。
──シュバッ!
鋭い一閃が、仮想モンスターの首を断つ。
一体目、討伐完了。
「……あの二人、連携すごすぎる……」
観客席からどよめきが起こる。
そして──
「援護するにゃん!」
後方からにゃんぴんが、こっそりと小型サポート魔法を放ち、マルミィの詠唱速度を微増させる。
「《アイスランス・ツイン》!」
マルミィが発動したのは両手同時発射型の氷槍魔法。
二体のブラッドウルフを串刺しにして、一撃で仕留める。
「す、すごい……マルミィ……」
アップルも負けじと、味方に《エクスプロートバリア》(一時的な防御アップ)をかけ、リスクを最小限に抑える。
敵チームの2年生たちも、それぞれ技術を見せるが──
「……あの一年生、やばいって」
「一年生であれかよ……!」
特にアーシスとシルティ、マルミィの連携力に戦慄していた。
「くっ……こうなったら妨害魔法だ!」
Cチームの魔道士テレーナが妨害デバフ《フィアミスト》(恐怖の霧)を展開し、Aチームの動きを鈍らせようとする。
だが──
「にゃんぴん、お願い!」
「任せるにゃ!」
ふわりと浮かんだにゃんぴんが、謎のモフモフバリアを発動。
霧を呑み込み、きれいに中和してしまった。
「……なんだあれぇぇぇ!?」
またも騒然とするフィールド。
「ラスト一体、行くぞ!!」
アーシスが叫び、最後のブラッドウルフに剣を向ける。
シルティも横から同時に踏み込む。
マルミィの支援魔法が二人を包み──アップルの《スピードヒール》が同時発動、疲労を瞬時に回復!
「せぇぇぇの!!」
アーシスとシルティ、ふたりの剣が交差し──ブラッドウルフを一撃で撃破!
──ピィィィィ!!
ホイッスルが鳴り響き、フィールドに勝者を告げる声が轟く。
「Aチーム、またもや勝利ィィィ!!」
歓声と拍手が沸き上がる中、四人はハイタッチを交わした。
「……やっば、まじで一年生強ぇ……」
「しかも、チームワークも完璧……」
2年生たちも、心底からアーシスたちの力を認め始めていた。
次はいよいよ、最終種目──運命を決する最終決戦、「魔導球保護ゲーム」だ!
(つづく)




