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【58】体育祭編② 〜開会式 二年生との初対面〜


 そして迎えた、体育祭当日。


 夏の名残を感じさせる朝日が、校庭を照らしていた。

 白線で仕切られたフィールドに、冒険者育成学校の生徒たちが整列している。


 アーシスたち一年生は、緊張と高揚が入り混じった表情で並んでいた。


「おお……これが体育祭ってやつか」

「うわぁ……テントとか、飾り付けとか、めっちゃ本格的……」

「テンション上がってきたぁぁぁ!」


 アップルがバタバタとはしゃぎ、マルミィはおろおろしながら帽子を直す。

 シルティはキリッと目を光らせ、すでに戦闘態勢に入っている。


 アーシスは周囲をぐるりと見渡した。

(……で、二年生はどこだ?)


 ふと目を凝らすと、グラウンドの一角に、明らかにオーラが違う集団がいるのに気づいた。

「あれか……」


 屈強な体格の男。

 華奢なシルエットながらもピリリと緊張感を纏う者たち。 妙に貫禄のある少年少女たち。


(……人数、少なくね?)

 アーシスは眉をひそめた。


「なあ、二年生ってこんなに少ないもんなのか?」


「……うん。聞いたことある。進級するには、仮想ダンジョン攻略や実地試験、色んな課題をクリアしないといけなくて……脱落する人も多いって」

 マルミィが小声で説明する。


「……それだけ厳しいってことか」

 シルティが腕を組み、鋭い眼光で二年生たちを見据えた。


 やがて、グラウンドの中心に立ったパブロフが拡声魔法を使って声を響かせた。


「それでは──今より、冒険者育成学校【体育祭】を開始する!」


 生徒たちから一斉に歓声が上がる。

 開会宣言が終わった直後だった。

 二年生たちが、ぞろぞろと各チームごとに一年生の列へ歩み寄ってきた。


 アーシスたち一年A組の前に立ったのは──筋肉モリモリの巨漢だった。

 身長190センチはありそうな、鋼のような体をした短髪の男が、ガシガシと歩いてくる。


「よお、新入りども!」


 ドスのきいた声で言ったその男は、笑顔だが目が笑っていなかった。


「俺はガイラ=ジンクス、Aチームのリーダーだ!」


「よ、よろしくお願いしますっ!」

 慌てて生徒たちが頭を下げる。


 ガイラの隣には、細身でオシャレな羽帽子をかぶった男が立っていた。

 こちらは飄々とした笑みを浮かべ、ヒラヒラと手を振る。

「ピーピア=グレースケール。バフとデバフ担当だよ〜。みんな、よろしくね」


 さらに、ピンク色の巻き髪にサングラスという不思議な組み合わせの少女が、月のイヤリングを揺らしながら優雅に微笑む。

「ティアニー=ドロップスです。聖職者やってます。お手柔らかにね」


 三人の自己紹介に、アーシスたちは圧倒されていた。

(……なんか、すげぇキャラ濃いな……)


 シルティも険しい顔でガイラたちを見上げている。

 そんな中、ガイラがズイッと顔を近づけた。


「いいか、新入り。──これはただの体育祭じゃねぇ」

「?」

「温泉リゾート宿泊券と、休暇をかけた──本気の戦いだ!」


 その言葉に、アーシスたちはピクリと反応する。


「負けは許されねぇ。……だから、足を引っ張るなよ?」

 ゴリゴリのプレッシャーをかけられ、アップルは一瞬顔を引きつらせた。


「ひ、引っ張らないようにがんばります……っ」


 だが、アーシスは臆することなく、にやりと笑い返した。

「もちろんです!

 ……俺たち、勝つ気満々ですから!」


 その言葉に、ガイラもニヤリと口角を上げた。

「……気に入ったぜ、坊主」


 こうして、にわかに熱を帯びる一年と二年のチーム。

 今まさに、第一歩が踏み出された。

 空は高く、雲はゆるやかに流れている。


 ──そして、熱き戦いの火蓋が、静かに──落とされた。


(つづく)


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