【45】エピック・リンク誕生! 〜それぞれの名案(迷案)〜
最近、冒険者育成学校ではあるパーティの名がささやかれはじめていた。
「アーシスだ。あいつ、合同合宿でB級モンスターにとどめを刺したらしいぞ」
「魔法剣を使うらしいぜ」
「肩に乗ってるもふもふ、なんだアレ?」
「でも、かわいいっ!」
◇ ◇ ◇
別の廊下では——
「シルティ=グレッチ……仮想ダンジョンにクラス対抗戦、全部で活躍してるよな」
「剣聖の後継者って話、マジらしいぜ」
「顔も美人で、カッコいい……」
◇ ◇ ◇
別の階では——
「マルミィって子、授業で毎回爆発起こしてるよな」
「でも魔力量は学園トップ、って噂だぞ」
「ふわふわしてるけど、実はヤバい天才らしいぜ」
「顔もかわいいよな」
◇ ◇ ◇
そして——
「……あ、あの子は…」
ふふん、とすまし顔で歩くアップル。
「……誰だっけ?」
ズコーッ!!
「な、なんでよおおおお!!」
アップルの哀哭は学園中に響き渡った…。
◇ ◇ ◇
その日の放課後、教室の空き部屋に4人が集まっていた。 アップルがドン!とテーブルに手をつく。
「みんな、重大なことに気づいたわ!」
「え?な、なに?」
アーシスがびくっとする。
「このメンバーには——"足りないもの"があるのよ!!」
「…え?」
シルティとマルミィがごくりと息をのむ。
「そう、それは……、——"パーティ名"!!」
キラーン!
「……あー、たしかに考えてなかったな」
アーシスが頬をぽりぽり掻く。
「これだけ結果出してるのよ? ちゃんと名前つけて、ロゴ作って、装備にも刻印して!“私たちのパーティ”って、誰が見てもわかるようにしなきゃ、でしょ!」
「……よし、じゃあ、みんなで考えるか」
アーシスがうなずき、全員が真剣に悩み始めた——
◇ ◇ ◇
「……“リンゴスター”とか、どうかしら」
最初に名乗りを上げたのはシルティ。
「それ、私の名前入ってません!?」
アップルが思わず突っ込む。
「しかもどっかのバンド名みたいだぞ」
アーシスも口を挟む。
「……却下、か」
シルティが無表情で俯く。
「じゃあこれはどう? ——“ミラクルホーリースターズ”!」
アップルがドヤ顔。
「……キラキラすぎて恥ずかしい……」
マルミィがもじもじ。
「"スター"かぶってるな」
シルティがボソッ。
「う〜ん……じゃ、マルミィは?」
「……“にゃんこウィズラブ”……とか……」
マルミィがもじもじ言う。
「猫カフェのメニューか!?」
「いや、完全ににゃんこ推しだろそれ!」
全員が総ツッコミ。
そして、アーシスがふっと立ち上がる。
「ふっ……ここは俺が決めるしかないな」
「出た、主人公」
アップルが冷ややかな目を向ける。
「我らがパーティの名は——
“漆黒の閃光!!”」
「うわああああ! なんか中二っぽい!!」
「めっちゃダサい……」
アップルとシルティが揃って顔をしかめる。
「えええぇぇ……!?」
その時だった。ふわふわと空中を泳いでいた小さな青い影が、アーシスの肩にぽふっと乗る。
「にゃふ〜……みんなは、壮大な絆で繋がってるにゃん。
“エピック・リンク”って感じにゃ〜」
一瞬、全員が固まった。
そして——
「それ、いい!!!」
「かっこいい!」
「しっくり来ます!!」
「にゃんぴん、天才……!」
「えっ、俺のブラック・ブレイズは……」
アーシスががっくり項垂れる。
「満場一致で“エピック・リンク”だな」
シルティがうなずく。
こうして、彼らのパーティは——
**《エピック・リンク》**
という名前で知られるようになる。
そして彼らの絆は、物語と共に、さらに強く繋がっていくのだった。
(つづく)