表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/187

【40】合同合宿編② 〜魔法と剣の閃光〜


 合宿初日。


 王立魔法学校の広大な演習フィールド。

 冒険者育成学校の生徒たちは、普段の訓練場とは桁違いの設備に目を奪われていた。


「な、なんだあれ……リンゴが浮いてる……」

「いや、浮いてるどころか……走ってる!?」


 演習場の中央では、細い足場の上にリンゴを魔法で浮遊させながら、バランスを取って走る訓練が行われていた。


「“浮遊制御”と“集中保持”を同時に行う……なるほど、魔法学校らしい訓練だね」

 アップルが目を輝かせて言う。


「……私、ああいうの……苦手かもです……」

 マルミィは指をもじもじさせながら呟く。


「………シルティがいたら、喜ぶかもな…」

 飛び交うリンゴを前に呟いたアーシスの言葉に、マルミィたちの緊張はほどけた。


 ——だが。


「ふん。愚かな連中だな。魔法という繊細な術を、そんな感覚だけで扱うとは」


 冷ややかな声が、アーシスたちの背後から響いた。

 振り返ると、そこにいたのはカレル=リシェリウス。王立魔法学校・主席魔導士。

 その傍らには、いつものようにふんわりと微笑むユーニャ=リィラの姿もある。


「…誰だよお前……」

 アーシスは眉をひそめた。


「王立魔法学校では、魔力の制御は論理と理論によって導かれる。我々は“再現性ある魔法”を使う。

お前たちのような“感覚魔術”など、ただの事故に等しい」


「……事故、ね」

 アーシスは静かに前に出ると、右手にそっと魔力を込める。

 青い魔力の剣が、空気の中にスッと浮かび上がった。


「じゃあ、ちょっと事故、起こしてみるか?」

 その言葉に、周囲がざわつく。


「アーシス……やめとこ? 合宿はじまったばかりだし……」

 アップルが困ったように止めようとするが、カレルはすでに杖を構えていた。


「望むところだ。——来い、“剣士魔術師”」

「うぉぉぉっ!!」

「はぁああっ!」


 剣と魔術、交錯する閃光。

 アーシスの斬撃は魔力の壁を割り、カレルの魔法は足元の地面を凍らせる。


(こいつ、詠唱が速い……!)


 お互い一歩も譲らない攻防の中、決定打となる一撃が放たれようとした——その時。


「そこまでだ!!」


 怒号と共に雷の閃光が落ち、二人の間を裂いた。

「魔法学校敷地内での実戦は許可されていない! 貴様ら、次やったら減点どころじゃ済まさんぞ!!」


 雷を落としたのは、全身真っ黒の法衣を纏った坊主頭の老人。

 顔は仏のようだが、目が完全に鬼だった。


「ひ、ひぃ……メガディス先生……」

 魔法学校生たちが一斉に背筋を伸ばす。


「……くっ」

 アーシスは剣を収め、カレルもそっと杖を下ろした。


「これで終わりじゃないぞ、剣士」

「望むところだ」

 睨み合う二人の間に、静かな火花が走った。



   ◇ ◇ ◇


 その日の夜。校舎の裏庭で、アップルとマルミィが静かに話していた。


「……マルミィ、モモのこと……まだ、つらい?」

「……うん。もう、ずっと会ってないし、あの時のまま、止まってる気がする……」


「でも、会えるよ。きっと、また話せる……その時は、素直になれたらいいね」

「……うん、アップル。ありがとう」


 ふと夜空を見上げると、肩の上のにゃんぴんが、にゃふ〜と鳴いた。


(つづく)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ