【13】仮想ダンジョン攻略課題④ 〜罠と誓い〜
にゃんぴんの魔法処置により、アーシスとシルティは一命をとりとめた。
ほどなくしてマルミィ、アップルとも合流。苦戦しつつも力を合わせてエリアボスを討伐し、元のダンジョンに帰ってくることが出来た。
満身創痍の状態ではあったが、アーシス達はなんとか最下層へと辿り着き課題のオーロラフラワーを手に入れた。
……だが、帰還したときには他のチームはすでに全員戻っていた。
グリーピーが勝ち誇った顔で現れる。
「ハッ、随分おそかったなアーシス!やっぱりお前らには無理だったんだよ!」
「っお前……!」
悔しさに拳を握るアーシスたち。
だが──、このままでは終わらない。
「……明日。明日で全部ひっくり返す」
アーシスの目は、燃えていた。
◇ ◇ ◇
夜も更けた教室。
窓の外では月が雲間から顔を覗かせていた。静まり返った空間に、淡い魔導灯の光が四人を照らしている。
「……ごめん、みんな」
アーシスの声が静かに響いた。
その手は拳を握りしめ、悔しさを隠しきれない。
「俺が、もっと強ければ……。俺がうまく立ち回れてたら、みんなにあんな無理させることはなかったんだ」
俯く彼の言葉に、しばし沈黙が流れた── が、すぐに破ったのはアップルだった。
「そんなことないよ」
彼女は優しく微笑みながら、まっすぐアーシスを見る。
「アーシスくんがいたから、私は怖くなかった。敵がどんなに強くても、あなただけは絶対に逃げなかった。……だから、私も逃げなかったの」
「……私も」
続いたのは、いつもよりほんの少しだけ大きな声を出したマルミィ。
「アーシスくんがいなかったら、きっと……シルティは、倒れてた。あのとき、アーシスくんが前に出てくれたから、私は迷わず魔法を撃てた…」
シルティは頬をかすかに赤らめ、そっぽを向いた。
「……別に、あんたがいなきゃ戦えなかったなんて言わないけど」
それでも、ぽつりと続ける。
「……感謝してる。あんたのおかげで、助かった」
沈黙がもう一度訪れる。
だが今回は、温かく、確かなものがその場を包んでいた。
アーシスは、顔を上げる。
どこか目元が赤かったが、笑っていた。
「ありがとう、みんな……明日は、絶対に勝とう」
四人の視線が交わる。
明日――すべてを賭けた、最終決戦が始まる。
仮想ダンジョン攻略課題は、2日目、最終日へと続く。
(つづく)




