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【11】仮想ダンジョン攻略課題② 〜前夜の作戦会議〜


 仮想ダンジョン課題が発表されたその夜。

 学生寮の共有スペースの一角。四人掛けの丸テーブルに、アーシス、シルティ、マルミィ、アップルの姿があった。


 窓の外にはまだ暑さを残した夏の夜が広がっていたが、部屋の中はにわかに熱気に包まれていた。


「……ってことで、やるからには勝つぞ。どうせなら一番早く、ダンジョンを突破してみせようぜ!」


 アーシスが拳をテーブルにコンと置く。その表情はいつもの軽さではなく、真剣そのものだった。

 それを受けて、シルティが腕を組みながらコクリと頷く。


「当然。……負けるつもりでやるバカはいないだろ」

「うぅぅ……勝つとか、そんな恐ろしいことを……でも、アーシスくんなら……が…がんばりますぅ……」

 マルミィはすでに緊張MAXで半泣きだったが、それでも小さく拳を握っていた。


「へっ、上等じゃん!あたしが支援しまくってあげるよ!ヒーラーなめんなよな!」

 アップルは珍しく胸を張っていたが、緊張のせいで紅茶を飲もうとして砂糖入れを口に運びかけるという天然っぷりを見せていた。


「それじゃ、役割分担から決めようか」

 アーシスが真面目な顔で言った。

 そして、紙とペンを取り出す。


「まず、前衛は俺とシルティ。二人で敵の注意を引きつけて、その間にマルミィが遠距離から魔法支援。アップルは後衛で回復とサポートだな」

「わ、私、足手まといにならないように、支援魔法もちゃんと練習します……!にゃ、にゃんぴん先生にも協力してもらって……」


「うにゃ? 僕の名前が出たにゃ」

 どこからともなく現れたにゃんぴんが、アーシスの肩の上に乗って紅茶の香りだけ嗅いで帰っていった。


「今……なんか声、したよね?」

「……何のことだ?空耳じゃね?」

 アップルはアーシスをジト目で見たが、彼は涼しい顔でスルーした。


 その後も、作戦会議は続く。

 マップ構造は不明、敵の情報も不明。

 わかっているのは、実際に戦闘と探索が求められる“本物の訓練場”であるということ。


「連携は命だ。全員、自分の判断だけで突っ込むな。誰かがピンチになったら、即フォローするのが鉄則だ」

 アーシスが改めて強い口調で言うと、みんなの表情が引き締まる。


「……アーシスって、意外と隊長っぽいんだな」

 シルティがぽつりとつぶやく。


「え、意外ってなんだよ! 俺、ちゃんと考えてんだぞ?」

「いつも“なんとかなる!”って顔してるから」

「まあ、それもアーシスくんのいいところ、だと思います……ふふ」

 マルミィが微笑むと、アップルもくすりと笑った。


「なんとかなるかどうかは、明日しだい、だね」

 アップルのその言葉に、四人はふと顔を見合わせる。


 なんとなく、いいチームになれそうな気がした。

 そして、誰ともなく拳を中央に出す。

 四つの拳が、コツンと音を立てて重なった。


「よし。明日、最高の冒険してやろうぜ!」


 アーシスの声に、三人がそれぞれのやり方で頷いた。 そして、仮想ダンジョンへの挑戦前夜は、静かに更けていった──。


(つづく)



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