巨人
驚愕するランスの視線の先には、身の丈五メートル程の筋肉質な巨人が立っていた。
「貴様ら許さんぞ!叩き潰してくれる!」
巨人は怒りを露わにして叫んだ。
僅かに残る紫の頭髪と声から、巨人がアルマエルの成れの果てだということがわかる。
「ミツバ!火力のある武器を持って直ぐに合流地点に来い!」
ランスは無線機に怒鳴ると、巨人に対してAKMを発砲した。
ジャックも車輌置き場に来る道中、敵から鹵獲したAKMをぶっ放すが、まるで効果がない。
攻撃を分散させるため、ジャックが射撃をしながら横方向に移動するが、巨人はジャックに強烈なタックルをお見舞いした。
派手に吹き飛び地面に叩きつけられるジャック。
「く・・・あ・・・」
声にならない声を上げながら、ジャックは起き上がろうとする。
しかし、巨人は薄ら笑いを浮かべながら近づいてくる。
「オラァ!化け物、俺が相手だ!」
そう叫びながらランスは巨人のヘイトを買うため頭部を狙い、射撃を続けた。
すると、目論見通り巨人は方向転換をし、ランスの方へと向かう。
その隙にジャックは身体を引き起こし、使える物はないかと周囲を見回した。
「・・・あれだ!」
荷台に重機関銃を据え付けたピックアップトラックが、ジャックの目に入る。
ジャックは痛む身体に鞭打ちトラックまで走り、機関銃にかじりついた。
弾はセットされている。コッキングレバーを引き薬室に十二・七ミリ弾を送り込むと、銃口を巨人に向ける。
巨人はいつの間にか手にしていたSUVを、ランスのいた位置に叩きつけていた。
ランスの銃撃が沈黙する。
「あー・・・あいつ死んだな。」
落胆の混じるなんとも言えない表情でジャックはこぼしたが、すぐに気持ちを戦闘に戻し機関銃のトリガーを押し込む。
AKMやM60よりも太くデカい音とともに、銃口から連続で大口径の弾丸が吐き出される。
そして、それをもろに食らった巨人は、前につんのめるような形でバランスを崩した。
「ランスの仇だ!化け物め!」
ジャックは叫ぶが、巨人はすぐに体勢を立て直しこちらに向かってきた。
「クソッ・・・!これでもダメか・・・」
悔しそうに口を歪め半ば諦めかけるジャック。
しかしその時、甲高い飛翔音が響き、白い煙の尾を引く細長いロケット弾が複数、ジャックの上空を取り抜け巨人に命中して爆発した。




