後方職種
十数名のゲリラ達が綺麗な縦隊を組み足並みを揃え本部建屋に向け走っていく。
「やれやれ、久しぶりの大立ち回りですね。」
物陰に潜み縦隊をやり過ごしたミツバは呟いた。
本部建屋の方向からは時折、銃声が響き断続的な戦闘が行われていることが窺える。
「さて、どうしましょう・・・」
周囲の様子を伺うが、厳戒態勢に入った遺跡群は照明によって全体を昼間のように照らされ、身動きが取れない状態になっていた。
「ふーむ、気が進みませんがやむ終えませんね・・・」
そう呟いたミツバは、屋内を経由して前進する事を選択し、近傍の扉を開き中に入った。
そこは洗濯工場のようで、広い構内ではゲリラと同じオリーブドラブ色の戦闘服を着た作業員が複数、大型のドラム式洗濯機から大量の被服を取り出したり、被覆の詰まったカゴを運搬したりしている。
中の様子を観察するため一時的に身を置く場所を探そうとするミツバだが、すぐ目の前を作業員が横切った。
「・・・っ!」
驚き身をこわばらせるが、作業員は完全に素通りして行ってしまった。
「完全に見えてましたよね?」
作業員の後ろ姿を見送りながら首を傾げるミツバ。
「・・・後方職種は攻撃してこないのでは?」
ミツバはそう結論づけると、警戒をしつつ前進を始めた。
工場の中ほどまでミツバは進むが、作業員達はこちらに見向きもせず淡々と作業を続けている。
「やはり・・・」
自分の出した結論に確信を得たミツバは、警戒を解きやや前傾になっていた姿勢を真っすぐ伸ばした。
「こちらHQ、レーベン聞こえる?」
その直後にグレン中佐から無線が入る。
「はい、どうしました?」
スタスタと歩きながらミツバは応答した。
「先程のデータだけでは判断が難しいわ。可能ならもう少し情報収集をしてちょうだい。」
「了解しました。・・・お二人共。」
グレンに返答したミツバは、別行動をするジャックとランスに呼び掛けた。
「どうした!?」
切迫したジャックの声がヘッドセットに返ってくる。
「本部からもう少し情報を集めてほしいとのことです。」
「了解!」
通信が打ち切られるのと同時に、ミツバは工場の突き当りに到着し、その奥へと通じるドアを開けた。
「おっと・・・?」




