古井戸
背の高い草を掻き分け道なき道を進む三人。
時折、ランスが偵察ルートを確認しつつ、全員で遺跡群と周囲の警戒をする。
「全員が戦闘服をきっちり着こなしてやがる。」
遺跡群を警備するゲリラ達を比較的近くで見たジャックが呟いた。
ゲリラ達はオリーブドラブ色のシワのない戦闘服を着崩す事なく身に着けており、統率が取れていることを示していた。
「しかも、動きが殆どありません。人形じゃありませんよね?」
要所要所に立つゲリラは微動だにせず、マネキンと見間違う程である。
「停止。」
先頭のランスが手でグーを作り短く指示を出した。
二人がランスの肩越しに前方を見ると、草木に呑まれつつある荒れた古井戸が鎮座している。遺跡群への侵入口の一つだ。
三人はゆっくりと古井戸を取り囲むようにして周囲と井戸本体の検索を行う。
「クリア。」
トラップ等がないことを確認した三人は、口々にそう言って銃を下ろした。
「変わりがなくて安心した。」
ジャックが枯れた井戸を覗き込む。
「底も大丈夫そうですね。」
薄暗い穴の奥の露出した岩肌に目を凝らすミツバ。
「可能ならもう少し奥も調べたいな。」
井戸の縁に片手を掛けたランスは、どうにか奥を覗こうと頭の位置を小刻みに動かしながら言った。
「それは侵入するときでいいのでは?」
「・・・そうだな。」
ミツバの言葉に少し思考したランスであったが、すぐに納得し縁から手を離す。
「早く行こう。偵察ばかりに時間を掛けてられん。」




