行軍終了
「こちらレーベン、ポイント“シンハー”到着。」
ミツバが無線で行軍のゴール地点に到着したことを本部に告げた。
数百メートル先にはクロチャの森の木々が壁のようにそびえたっている。
「やつはここにもいないな・・・」
姿勢を低くし周囲を探るジャックだったが、ランスの姿は発見できず声を漏らす。
「待ってたぜ。」
ジャックのすぐ近くで仰向けに寝そべっていたランスは、そう言いながらムクリと起き上がった。
「たった今ビーストマンとも合流した。」
横目でランスの存在を確認したミツバが追加で報告を上げる。
「なんだいたのか・・・どこに行ってた?」
「ちょっと流されて森に降りたんだ。」
ランスは親指で森を指し質問に答えた。
「行軍をまるまるブッチとは、中々やるな。」
「茶化すなよ。飛び出しで危うく死にかけて銃を失くした上、敵とも接触しかけたんだ。」
「しかけた?接触したんじゃないのか?」
弁明するランスの持っているAKMとチェストリグを指してジャックは指摘する。
「いや、こいつは・・・」
ランスは先程、森で起こったことを説明した。
「組織の内部崩壊が起こっているんでしょうか?」
話を聞いたミツバが私見を述べる。
「あれだけじゃなんとも言えんな。」
「だが、崩壊してたとしてもそれはそれで厄介だな。」
ジャックが不安を口にする。
統率が完全に失われた組織はどんな行動に出るか予測出来ない。
「なんにせよ情報収集をしないことには何もわからない。」
「それじゃ、始めますか?」
ランスの言葉にミツバは行動開始の確認をした。
「いや、その前に・・・ジャック、俺の五・五六ミリ弾を貰ってくれ。」
おもむろにバックパックを開いたランスは五・五六ミリ弾詰まったマガジンを十二本取り出し、M4を装備するジャックに差し出した。ランスが現在装備しているAKMは七・六二ミリ弾を使用するため弾種が違う。
「ありがたく使わせてもらうが、六本はそっちで持っといてくれ。」
ジャックはそう言ってマガジン半分を受け取った。
「よし、それじゃあ行くか。」
準備が完了すると三人は立ち上がり、森へと入っていった。




