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潜入の裏側

 演習中の拠点内は車輌に給油をする者、荷物を運搬する者、休息のため上衣を脱ぎTシャツ姿のラフな格好の者など、様々な兵員達が闊歩していた。

「車輌と装備の配備状況、人員数よし。あと化学兵器の対処もよし・・・」

 そんな中、堂々と拠点内を歩き回るジャック。

 一般兵と同じ基本装備を身に着けているジャックに違和感を覚える者は誰ひとりおらず、完全に背景の中の一人と化している。

 そして、ジャックはそのままロープで囲われた喫煙所に入り、煙草を吸い始めた。

 喫煙所には煙草をふかす軍曹が一人と、ジャックの後を追うように入ってきた伍長が一人。

 伍長はライターを忘れたのか、煙草を咥えたまま迷彩服のポケットをまさぐっている。

「失礼。火を貸してもらっても?」

 ライターが無いことを認めた伍長がジャックに声を掛けた。

「いいとも。」

 ジャックはライターを差し出すと、伍長は礼を言って受け取り煙草に火をつける。

「それにしても平和なもんですね。」

 ライターを返した伍長が、喫煙所の外を見やりながらジャックを世間話に誘った。

「ああ。敵が来るなんて信じたくないな。」

 こういった世間話の中から有力な情報を得られる可能性があることを、除隊後に学んだジャックは話に乗った。

「うちの隊じゃ専ら夜に来るんじゃないかって話ですよ。」

「だろうな。」

「ところで軍曹殿、所属はどちらです?」

 流れるように伍長は鋭い質問をする。

「統裁部だ。」

 ジャックは慌てず演習の運営を担当する部署名を出した。

 演習部隊の末端兵からすれば統裁部は未知の組織だ。ボロが出る可能性はかなり低いだろう。

「それはおかしい。」

 突然の指摘にジャックは声のした方向を見る。

 そこには紫煙の立ち上る煙草を片手に、こちらを見据える先客の軍曹がいた。

「どういう意味だ?」

「俺も統裁部の人間だが、あんたなんか知らない。」

 まさかの本人登場。ジャックは窮地に立たされた。

「いや、待て。お前こそ誰だ?・・・さては工作員か?おい伍長。すぐにこいつを拘束しろ!」

 しかし、ジャックは負けじと反論し、困惑している伍長に指示を出す。

「待った。何故、統裁部の人間が演習部隊としての行動を取っている?」

「あ・・・」

 ボロが出た。統裁部の人間は原則、演習部隊に助言はしても指示を出すことが出来ない。

「伍長、敵だぞ。こういう時どうすんだ?」

 未だ困惑状態の伍長に、軍曹が行動を促す。

「・・・っ!」

 ジャックは伍長と軍曹に対し、アサルトライフルで空砲射撃をした。

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