総合訓練 ~離脱~
「後十分・・・ギリギリだな。」
森の中に現れた急斜面を登りきったジャックは腕時計を確認しながら呟いた。
奪った無線機で通信を傍受し、敵との接触を避けていたジャックはかなりの遠回りをしている。
「こちらHQ、索敵部隊に告ぐ。通信が傍受されている。直ちに緊急回線に切り替えろ。」
突然、敵司令部から通信が入り無線機が沈黙する。
「気づかれたか・・・」
緊急回線の周波数など知らないジャックは、ただの重りと化した無線機をその場に置くと、水筒の水を一口飲みピックアップポイントに向けて走り出した。
「おい、あいつ何やってんだ!?」
深い森の奥を睨みつけるようにしてランスは言い放った。
ピックアップポイントである草原は目前で予定時刻まで二分を切っており、ヘリの飛翔音は間近に迫っている。
「マズいですね・・・。ランス、どうしましょう?」
ミツバは深刻そうに呟くと、ランスを見つめ指示を仰ぐ。
「どうもこうも・・・時間がない。このまま離脱する。」
悔しそうにするランスの背後で、ダウンウォッシュを撒き散らしながら中型ヘリ“ブラックホーク”が着陸した。
「行くぞ!」
ランスはミツバを引き連れ森を飛び出すと、ブラックホークの貨物室に駆け込んだ。
「一人残ってる!もう少し待ってくれ!」
機内に乗り込んだランスがパイロットに叫ぶ。
「ダメだ!離陸する!」
しかし、パイロットは要求を拒否し、離陸を始めた。
急激に上昇する機体。その直後、森から飛び出す者の姿があった。
「あ・・・!あれ!」
ミツバが声を上げ指をさす。
ジャックだ。
複数の敵に追われている。
「戻れ!!残りの一人が来た!!」
ランスはパイロットに怒鳴ると、機内からアサルトライフルで援護射撃を始めた。その横ではドアガンナーが備え付けのミニガンを景気良くぶっ放している。
今度は要求が受け入れられ、機体は高度を下げていった。そして、再び車輪が地面に触れる。それと同時にジャックが飛び込んできた。
「間に合った!」
「大遅刻だ馬鹿野郎!」
やりきった感を全面に出すジャックをランスが怒鳴りつけ、脱力してその場に尻餅をつく。
「どうにか全員で帰れますね。」
ミツバが爽やかに微笑む。いつの間にかブラックホークは空高く舞い上がっていた。




