Extra13 サフィルス宮殿メイドによる業務日誌。
私たちはサフィルス宮殿メイドにございます。
サフィルス宮殿の主人であるユーリス・モレット・ヴィーダ第二皇子殿下。そして殿下の婚約者であらせられますエリーシャ・フォレノワール様に誠心誠意お仕えしています。
本日はそんな私共の業務日誌をお目に掛けようと思います。お見苦しい点が多々ございますが、何卒ご容赦くださいませ。
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花咲月20日――本日、ユーリス様はサンルームでうたた寝。そこに通りがかったエリーシャ様、故郷の毛布を手にそっと近寄ってかけてあげる。初々しく愛らしいやりとりを目撃。<担当:ヴィノ>
「自カプの壁になりたい……それが実現できるメイドって天職よね」
「わかる」
「それな」
「でも、ユーエリちゃんもっとイチャコラしてほしいんですけど」
「私達がどうにかしてもっといい雰囲気にするしかないのかしら。でも単なる観測者でありたくもあるし、難しいわねえ」
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百繚月1日――本日は、エリーシャ様がユーリス様に「ユーリス様なんて大嫌いです」との発言。ショックを隠し切れないユーリス様が茫然としているあいだに、ととと、と近づいたエリーシャ様が服の裾を引っ張って見上げ――。
なんて「嘘ですよ」と小悪魔的な微笑みを浮かべておりました。<担当:シア>
「最&高」
「無理」
「尊い……神に感謝。エリちゃん様いつのまにそんな技術を」
「爆発しちゃうわね、こんなの見せられたらね」
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葉緑月13日――ユーリス様、またもや体調不良。傍らには献身的にお世話をなさるエリーシャ様の姿が。お体の具合が優れないときは近くに他人を近寄らせないのに、エリーシャ様はやはり特別なのね。<担当:ミレイア>
「はあ……狼みたいよねユーリス様って」
「何でいきなり主人をケダモノ扱いしているのよ」
「違……そういう意味じゃなくって! ヴィノ、あんたこそどうしてそう下品な方に持っていくわけ」
「まあまあ落ち着いてくださいよ先輩方」
「なによ、年下のくせに落ち着いちゃって」
「ぶっちゃけ推しカプ平和ならなんでもよくね?」
「「確かにー!」」
「しょうもないことで言い争っている場合ではないわね」
「休戦と行きましょう」
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青薔月30日――ジェスタ殿下の結婚式が大聖堂にて行われました。エリーシャ様は青薔薇の花束をお持ち帰りになりました。どうやら、花嫁からのブーケトスで受け取ったようです。
花束を抱いたエリーシャ様を眺めながら、ユーリス様は隣で満面の笑みを浮かべていらっしゃいました。<担当:シア>
「あー、花嫁のブーケトスって若干出来レース的なところあるものね」
「おそらくエリーシャ様は何もご存知でないに一票」
「私も一票」
「ええ私も一票投じますわ」
「ほら、花嫁の方も誰にお渡しになるか決めているし、受け取る側の方もさすがに空気読みますわよね。どなたが次の花嫁にふさわしいかと言ったら、それはもちろん……」
「エリーシャ様に決まってんじゃん⁉」
「はあ、楽しみですねえ。エリーシャ様はどんなドレスをお召しになるのかしら」
「私達も誠心誠意、エリーシャ様をお支えしなければなりませんわ!」
「よっし、これでユーエリちゃんを幸せにする会、ミーティング終わりっ。これからも頑張ろうね!」
「「「えいえい、おう!」」




