ゴロゴロと並ぶ果物。美味しくなぁれ。(字足らずw)
……いや、そもそもそんなところが、一ノ瀬さんの
ダメなとこだよ? しっかりしていてそうで、
実は適当なのが玉に瑕……と瑠奈さんは
思ったけれど口を閉じる。
多分それ、言ってもダメなやつだ。一ノ瀬さんは
そーゆーところはホント疎いから。
そもそも瑠奈さん達が、あんなに……
あーんーなーにー自重し、我慢してたのに、当の
一ノ瀬さんは、林檎の香りで2人を呼んでいた
つもりだったらしいんだから、分りにくいったらない。
だから用心のために、紫子さんたちは自宅の
電話番号をちゃんと教えていたっていうのに、そんなの
全く意味ないじゃないの。
「……」
微妙な心境の瑠奈さんとは違い、紫子さんは
特に何とも思っていない。満面の笑顔でそれに応える。
「すっごくいい匂い。何を作っているの?」
「だろ? 今日はね、アップルパイ。
実はさ、ちょっと人手が足らなくて、君たちにも
手伝ってもらおうと思ってたんだ……」
言って引っ張り出したのは、林檎に栗にミカンに
それから洋梨!?
「うわ、凄くいい匂い……!」
「そうだろ? いい果物が手に入ったから、パイや
ケーキを作ろうと思ったんだけど、さすがに
量が多くて……」
言ってる傍から、ホネホネの梨愛さんが
器用に包丁を持って、栗の皮を剥いていく。
「私はマロングラッセを作ってるんだけど、この
量でしょ? さすがに今日のおやつのアップルパイ
までは手が回らなくて……」
「俺は洋梨とミカンでフルーツタルトを作り
たいんだ。カスタードクリームにしたいから
誰にも手を出されたくなくって……」
そして困った顔をする。
「アップルパイの中身は出来てるし、パイ生地も
冷蔵庫で寝かせてる。……で、お願いなんだけど」
そこでパァと紫子さんが微笑んだ。
「作ります! アップルパイ!!」
はいはーいと手を挙げるその姿は、まさに子ども。
「……」
けれど瑠奈さんは、何故だか少しイヤーな予感が
したのでした。