社会の不幸
「できましたあ〜」
野田さんはテレビ電話で報告をしたいと行ってきたためテレビ電話で報告してもらっている。
野田さんの目元に隈ができているのが痛々しい。
何故か罪悪感が湧いてくる。
まあ ごめん、と心のなかで思う。
「それで、できたんですか?」
俺はできましたよ。何ていう答えなど想像していなかった。
このときまでは。
「できましたよ。」
「え?」
正直この展開を予想していなかった訳ではない。しかしできたのならば正直すごいと思う。
1ヶ月間ダメ出しし続けて、ほとんどのイラストレーターは依頼を断る。
ここまでして心が折れないという奴は正直言って”異常者”である。
「これでどうでしょうか。」
そう言ってその数秒後に送られて来る。
とはいっても立体映像なのだが。
完璧だ。
髪の色はカスタードな色と白髪に近い銀髪だ。
体は今は服を着ていないが素晴らしい。
胸元は大きくもない、かと言って小さくもない、
しかし形がいい。
素晴らしい。
「それで〜どうでしょうか?」
「最高だ。」
その瞬間、昇天したような顔を見せたと思ったら、倒れてしまった。
画面の向こうで
「主任!」「大変だ! 主任が倒れたぞ〜」
なんだか騒がしくなってきたな。
「じゃあ切るぞ〜、あと、これだけの大作ができたんだ。
報酬は期待しとけ。」
そう言ってテレビ電話を切る。
そして、しばらくAIを見つめていると1件のメールが届いた。
「ん? なになに」
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七条クオン主任へ
元気ですか?
ちゃんと食べていますか?
VRのやりすぎには注意してね。
あと、あなたがグランドマスターにいることが気に食わない人達がいるみたいだけど心配しないで。
なんとかするからね。
代表より (ママ)
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「あ〜」
めんどくさいな〜
!!
俺はひらめいた。
“そんなに激務がしたいのなら押し付けてやる”
俺は世の中でよく聞く“クズの笑み”を顔に出しながらそんな社会の不幸にしかならない事を考えているのであった。