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それから五人の間で何度か、大きな意味などないメモ書きが回されるようになった。そうした中、放課後、平太と二人で雄二を待っていたとき、私の頭に、ある「要らぬ考え」が降りてきた。
今思えば、私が悪い。例えば、コンビニのゴミ箱に家庭ゴミを入れる、といった不埒な行為を繰り返すと、それは周囲に連鎖的に波及する。私はそういった人間のごく簡単な行動原理を、まだ理解出来ていなかったのである。
掃除当番か委員会かで、雄二はなかなか下駄箱に現れなかった。その日、三人で一緒に帰る約束は取り付けていたはずで、我々二人は玄関と無人の教室を、することのない獣のように行ったり来たりしていた。
教室後ろに並ぶフックに、雄二のリュックサックがかかっているのを、私が最初に見つけた。私はそのサイドポケットにいつも、彼の家の鍵が入っていることを知っていた。
それに結びつけられた紐を私が引っ張ったとき、すぐに平太にもその考えは伝わったらしい。退屈で燻んでいた彼の顔は、みるみるうちに不条理な刺激を期待する不遜な笑みに染まった。
「どこに隠す?」平太が聞き、一方、私の頭では下駄箱や掃除用具入れといった、いわば『生温い』返答が次々と排除されていった。
「先生の家」私が言うと平太は、よし来たと言わんばかりに帰り支度を始めた。
遊びを思いついた子供同士の段取りは、岩場を流れる湧き水よりも滑らかに進む。私が暗号を書き、平太が自転車で先生の家まで鍵を隠して来る。それぞれの役割はすぐに決まった。