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8-2

 何かの拍子に香水がふっと香るとき、あの四人を思い出すことがある。今部屋の本棚にあるのは小説やら学術書やら、学究的な本ばかり。少なくとも、開くと砂がこぼれ落ちる本は一冊もない。



 結菜


 案外、頭のいいお前のことだから、いい大学に入って一流企業に勤めているんだろうな。それとも、いい旦那さんと子供に恵まれて、とっくに退職しているかな。中学に上がってお互い気恥ずかしくなると、それからほとんど話さなくなってしまったけど、今でも幸せを願っているのは心から本当のことだよ。



 友美


 なんて言ったってお前は、平太を惚れさせた女だからな。スマップのナカイくんの千倍はいい男性を見つけたんだろうな。どんどん垢抜けていくお前を見てると、まさに高嶺の花を見上げる気がしていたよ。俺も大人になって、またお前と一緒に話せるくらい魅力的になれたかな。どうかな。



 雄二


 連絡を取らなくなって、もう何年になるだろうな。お前は小学校の先生として順調に進んでいるのに、俺はいつまでも作家の真似事をする(てい)たらくでいるから、話が合わなくなるのも無理はないよな。だけど、友だちでいた頃の心はまだ取っておいてあるから、いつでも昔したような馬鹿話をする準備はできているんだ。だから、心配しなくていい。



 平太


 あのラブレター、渡せば良かったのに。アイドルには勝てないと怖気づいたか?お前らしくもない。それとも、俺らの知らないところで実は、友美に告白してたのかな。奥さんが友美だったなんてオチだったらびっくりだけどな。

 俺たち五人の人生の線は一旦離れ離れになってしまったけど、どこかでまた交わると信じてるんだ。根拠はないけど。そこが、たとえ老人ホームだったとしてもいいじゃないか。

 この「最後の暗号」の残骸は死ぬまで捨てずに取っておくんだ。そして、また五人そろったとき、「平太、お前何これ?」って見せてやるんだ。それ以上ないふざけ切った表情で。

 それで、全員で爆笑してさ、そのとき四人の寿命が五秒でも伸びるんなら、それって最高じゃないか。


 だから、結菜、友美、雄二、平太。俺が死ぬまで絶対に生きていろよ。絶対にだ。

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