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4-5

「雄二くん」と、ある晴れた日の廊下で私。「やっぱり、人の大事な物を隠すのは良くないと思うんだ」


 完全に自分を棚に上げた私を(とが)めず、雄二も私と同様、殊勝(しゅしょう)に口を開いた。


「そうだね、駆留くん。確かに人の物を隠すのは良くないことだよ。こんなことは、小学生でも知ってることだ。僕たちも、もうすぐ中学に上がるんだし、それにふさわしい態度を身につけないといけないね。だから、二度とあんな人の迷惑になることはしない、と誓うよ。ところで」


 雄二は真面目な顔を私に振り向け、さらに言った。「結菜さんという女子を知ってるかい」

「ああ、もちろんさ。あの、おたんこなすだね」


「そう。その結菜さんなんだけど、昨日、僕たちのクラスで家庭科のテストがあって、さっき答案が返されたじゃないか」

「そうだね。寝起きのイボイノシシでも解けそうな、簡単なテストだったね」


「その家庭科のテストで、『野菜の名前を一つ書きなさい』というサービス問題が出たのを覚えているかい」

「もちろんだよ。僕は『白菜』と書いて、見事に点を獲得したよ」


「駆留くんの鼻くそレベルの答えなんか聞いていないんだけどさ、僕はさっき偶然、結菜さんの答案を見てしまったんだよ。知ってるだろうけど、結菜さんの斜め後ろが僕の席でね。ここで質問なんだけど、例の『野菜の名前を書きなさい』という問題で、結菜さんが何と書いていたか知ってるかい」

「いいや、知らないな。ぜひ教えてくれよ。雄二くん」


「いいかい、よく聞いてくれよ。彼女は何を思ったか『栗』と書いて、バツを食らっていたんだ。今度はその答案を奪って、隠してみようじゃないか」

「よし、やろう」


 結菜が友美とトイレに立ったとき、雄二は結菜の机から家庭科の教科書を取り、挟まれていた答案を抜き取った。そして、端が折られて点数が隠れているそれを、素早く懐に隠した。気づくと、平太も敏感に遊びの匂いを嗅ぎつけ、隣に来ていた。


「平太」雄二が喜色をあらわにして言った。「今度結菜のテスト、隠し場所考えといて」

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