表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/30

4-4

 出来るだけ、花を鑑賞する風変わりな少年を装いつつ、私は端から花壇を丹念に眺めていった。すると、三つ目か四つ目で、すでに奸悪(かんあく)の便りと化した紙が土に刺さっているのを見つけた。全部で三文字。


 ハズレ


「ハズレなら書かなくていいだろ」私は紙を握り潰し、なおも捜索を続ける。


 一番端まで来たとき、木の影になって目立たない花壇の一部が、不自然に盛り上がっているのに気づいた。ほじくり返された土がまだ水気を保っていて、かなり濃く茶色がかっている。

 ここだ。人目にもつきづらいし、間違いない。


 最初は靴のかかとで土を掻き出そうとした。しかし連中の掘った穴は思いのほか深く、途中で諦め、素手に切り替えた。両手首が完全に土まみれになったとき、指先に小冊子のようなものが触れた。何かも確かめず、私はその端をつかんで、一気に引っ張り上げた。それは国語の教科書の下巻だった。気が利いていて、コンビニの袋に入っている、ということは全くなく、それは完全に裸で土に埋まっていた。


「あいつら、せめて上巻にしろよ」

 カラスが馬鹿にした鳴き声をあげ、飛び去っていった、ことにしよう。因果応報を学び始めたこの世間知らずの少年に捧げる情景として。


 このようにして、私はそれから半年間、どのページを開いてもさらさらと砂がこぼれる教科書で授業を受けなければならかったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ