3-6
後に、紛失事件が起きるこの森勢神社を隠し場所に決めたのは、平太だった。我々三人は用水路で隔てられた向かいの通りに自転車を停め、白いガードレールに身を隠した。友美に暗号が解けないはずはなく、それから女子二人が自転車でのろのろと現れるのに、数分の時間もかからなかった。
このときすでに、穏やかさとは無縁のシェパードが吠声を通り中に響かせていた。厳密に言うと、隠し場所は神社ではなく、隣家の庭でいつまでも吠え続けるこのシェパードの犬小屋なのである。
その屋根にCDを置いてくるのは、前もって想像した以上に骨の折れる作業だった。当然、ただ歩いて「宝」を置き、それまでと同じ速度で戻ってくればいい、わけがない。
まず、私と雄二が来る途中に拾った生ゴミのカボチャで、金網越しに警備犬の注意を引いた。そして、その間に平太が正面から突入し、一気に目的を果たした。彼が門から脱出する寸前、シェパードは侵入者に気づき飛びかかっていった。その勢いというと、後ろ足で掻いた土が我々に降りかかるほどだった。後で平太が語ったことだが、このとき肩の高さまで跳んだ犬の牙が、Tシャツごしに背中の肉をかすめたという。
いつも通るたび反目心を呼び起こすこの鳴き声も、そのときは違って聴こえた。私にとっては、不安と好奇心を交互に呼び起こす砲声のようであった。ただ、男子二人の顔を見るとそこに慈悲の発芽は見られず、低俗雑誌を読むときの狡辛い笑みがにじんでいた。
しばらく友美は結菜を伴って、赤くなり始めた木々の境内をさまよっていた。遠目から、友美がまだ持っている紙に、平太が書いた六つの黒マルを確認することができた。




