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2 異世界とは

「ウル君、ちょっとここ教えて欲しいんだけど。」


僕が、この世界に来てから約1ヶ月が経とうとしていた。

この世界でも時間の流れはだいたい同じみたいなので、そんなものだろう。

この間、この魔王教本部の彼らは僕のことをちやほやしていた。

そして、僕はその彼らの優しさにとことん甘えていた。

いけないことだとは思いつつも、僕はこの本部にある様々な書籍でこの世界のことをいろいろと調べ、ウル君にいろいろと教えてもらうという名目で、この魔王教本部に今日も元気に居座っているのだった。


あ、ウル君ってのは、最初に話をしたイケメン君がウルデスタという名前らしいので、僕がそう呼んでいるのだ。

最初は、僕も「ウルデスタ君」って呼んでいたんだけど、呼びにくかったんで、

あるとき、


「これからは、ウル君って呼んでいいかな?」


って言ってみたら、


少し戸惑った表情の後、


「はい!」


って満面の笑みで返事が返ってきた。

この時は、なんかちょっと、いや、すごく嬉しかったな。


そして、実は、僕が最初に目を覚ましたあの時、もう一人あの部屋に居たんだよね。

その彼は、これまたウル君と同じような銀髪にグレーの瞳を持つイケメン君で、でも体型はウル君とは違って、がっちりとしていた。

歳はウル君より少し上みたいなんだが、ウル君もそうだが、彼ら自分の正確な年齢が分かっていないようだ。この世界では皆そうなんだろうか。

名前は、エルーオソン君っていうんだけど、やっぱり呼びにくいので、「エル君」と呼んでいる。

今では「エル君」「…ま、魔王様」と呼び合う仲にまでなりました、はい。

エル君、あの時はすぐに気付かなくてごめんね。

因みに、僕はこっちでの名前は特にないので、彼らの好きに呼んでもらっている。


そうして僕は、こっちに来てからウル君、エル君の助けを借りて、何とかやれている。


話が逸れたが、まずは、彼らに教えてもらったり、自分で調べたりして分かった

この世界のことについて。


この世界は、地図で見たときに、便宜上、東西南北とすると、広さは異なるが、それぞれに1つずつ、計4つの国と、真ん中にそのどこにも属さない未開地があるようだ。

未開地は、そのほとんどが深い森に覆われていて、地図の中心のおそらくこの地図上で一番高いと思われる山、リギヴデ山から、その周囲数百キロメートル程度に渡って広がっているといった感じ。

そして、僕達が今いる場所は、この未開地の中らしい。

ここから一番近い国は、セタレイトニア王国といって、地図の北側にある国だ。

その他の国は、南がコスミスタ王国、東がダヘネ王国、西がナグザンタス王国となっている。

この世界の国は全て王国で、国王が国家元首となっているようだ。


ウル君の話では、魔王がこれらの国を統一し、彼らにとって住み良い世界を創ってくれるという思想、信仰があるらしく、それが最初に会った時に言っていた魔王教だそうだ。


そんなこと言われても荷が重すぎるわ!と思ったんで、この話が出たら話題を変えるようにしている。

そもそも僕が魔王なのかも分からない訳だし、ね?


けれども、彼らについて、また彼らの置かれている状況が次第に分かってくると、こんな僕にも何かできないものかという思いに駆られるようになっていった。


というのも、便宜上、僕は彼らのことを『彼ら』と呼んでいるが、そもそも男女の区別がない。

彼らには、今の僕と同じように、性別がないのだ。

この世界では、彼らのような人達を「キメラ」と呼ぶらしく、迫害される対象となっている。

身も蓋もない言い方をすれば、「キメラ」は他の人間達からすれば、殺す対象になっているようなのだ。

だから、こんな未開地に身を潜め、魔王教などというものに縋っているのかも知れない。


なぜこのようなことになっているのかは、「キメラ」の特徴が大きく関係している。


まず、この世界には、魔力という目には見えないエネルギーのようなものが存在する。

これは人を含めた、この世界のあらゆる動植物が持つ可能性がある。

実際に人間で魔力を持つ者は限られるようだが。

ただ、魔力を持つ種族の中に人と交配できる種族「亜人」が存在しており、この亜人と人との子を「キメラ」と呼び、持つことが禁忌とされている。

それは、「キメラ」が一般的に凶暴性を増し、人を攻撃対象とする性質をもつこと、そして、性別がなく生殖能力も無いので、一代限りで絶えるとされているからだ。


彼ら「キメラ」は、姿は人間と遜色無いのだが、皆銀髪にグレーの瞳を持ち、肌の色はとても白いという共通した見た目なので、人間側からは、そういう見た目の者が「キメラ」だと認識する目印のようになっているみたいだ。

また、「キメラ」は一般的に食が細く、人間の10分の1程度の食事量で事足りる。

これに関しては、詳しいことはまだよく分からない。


そして、これは余談なのだが、かく言う僕も彼らと同じような特徴がある。

髪は銀髪ではなく真っ白なのだが、肌の色が白いところは共通している。

それに、性別はないし。っていうかなくなっちゃったし。

食は細いどころか全く食べなくても問題ないし。と思う、現時点では。

そして、排泄もないし。そもそも出すところがない。

さらに、睡眠も必要ないようなのだ。

人間の三大欲求どこいった状態。

これはもう魔王でなくても、完全に人間はやめちゃってると思う。


また逸れてしまったので、閑話休題。

因みに、亜人の方は、詳しい生態は不明な部分が多いのだが、一般的に身体能力と魔力が高いとされている。

知能は人間の幼児程度で、個体数は少ないらしい。

普段は未開地の奥地で生活しているらしいので、この世界の人間が普通に生活している場合、遭遇することすら、まずないと言える。


ではなぜ、それでも「キメラ」が存在しているのか。

それは、「キメラ」が常人ではあり得ないような高い身体能力と魔力を持つからだ。

そういった部分に魅力を感じる人間は昔からいて、「キメラ」も昔から少数ながら存在し続けているらしい。


しかしこれ、見た目の特徴等はともかく、ほぼ書籍による、つまり人間側の情報だし、実際の彼らを見ていると、全ての「キメラ」が一様に凶暴な訳でもないように思えてくるんだよなあ。

いや、むしろ僕にはめっちゃ優しくて、『惚れてまうやろー!』状態。

ウル君も「我々は決して凶暴などではありません!」と言っていたし、

本当に「キメラ」は書籍にあるような存在なのだろうか?


そう思うと、彼らのために少しは何かしてやりたいと思うのが、親心ならぬ魔王心ってもんでしょ。魔王かどうか分かんないんだけどね!


そうして、

僕にできることって何だろうって考えながら、

今は日々『()()』の勉強をしている。

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