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11 魔王VS魔獣

ブクマしてくださった方、ありがとうございます。

拙い文章ですが、読んでいただけているのであれば、とても嬉しいです。


「うわあああ!」

「あなた!」

「パパー!」

「うぐっ!お前たちは下がってろ!」

「ああ、神様…どうか、私たちをお助けください…」


ヒュン!


ボウッ!ボワッ!メラメラメラ

「ギエエエエエ!…エエ…」ドサッ


「神様じゃなくて悪いが、助けに来たよ。大丈夫?」


「え?あ、はい…あなた方は一体…」

「とりあえず話は後にしようか。エル君、その人怪我してるみたいだから治してあげて。それから、他にも怪我してる村人は全員お願い。」

「承知しました、魔王様。」

「さて、僕とウル君は魔獣退治といきますか。」

「かしこまりました、魔王様。」


僕達がタダーパ村に到着した時には、すでに人一人分より大きな体躯を持った恐竜のような魔獣が村の中へ侵入していた。

見たところ、話が通じるような相手ではないし、襲われてしまった村人もいる状況だ。村を守るためだ。仕方がない。魔獣には悪いが殲滅させてもらう。


「僕はこっちから魔獣を倒していくから、ウル君はあっちをお願い。」

「分かりました、お気をつけて。魔王様に何かあればすぐに駆け付けますので。」

「ありがとう。でも、そうならないようにするつもりだから安心して。」

「はい。私も自分の使命を全うします。」


僕とウル君はそれから二手に分かれて、魔獣を倒していった。

この間にもエル君が村人を回復させてくれている。

数はそこそこいたが、これまでの魔法の訓練が効果を発揮していた。

魔力感知もできるようになったことで、ある程度敵の強さも把握できるようになっているし、これくらいの魔獣であれば、僕一人でも十分対処可能だ。

それに、ウル君と2人がかりでなら、この数でも何とかなりそうだ。

そして、順調に魔獣を倒しつつ、建物の角を曲がり、少し開けた場所に出た。

その瞬間、明らかに今まで感じていたものとは違う魔力を纏う魔獣が一体、目に入ってきた。

周りの魔獣より一回り以上大きな体躯を持ったその魔獣は、じろりとこちらを睨んだ。


(あー、これはあれだ。あの魔獣、こいつらの親玉だな。)


そう思っていると、ウル君の方も同じ場所に出てきた。


「魔王様!あの真ん中にいる魔獣が恐らくこの魔獣たちを率いているリーダーでしょう。明らかに他の魔獣より格上です。」

「やっぱりねー、そうだと思った。ウル君、あれは僕が倒すから他のをお願いしてもいいかな?」

「勿論ですとも!他の魔獣は私にお任せください。」

「じゃあ、早速。」


そう言って、勢いよく親玉に向かっていった僕だったが、次の瞬間、


ブンッ!ドガッ!

ヒューーーー、ドガンッ!!!


親玉の尻尾に左側面を打たれた僕は、見事に右にあった納屋に突っ込んだ。


「魔王様!」

「あー、大丈夫!大丈夫!怪我もないし、心配しなくていいよ。」


少し油断してしまったか。ウル君には余計な心配をさせてしまった。

訓練は今までうんざりするほどしてきたが、実戦ではまだまだだな。

油断は禁物!集中!集中!と自分に言い聞かせて改めて親玉へ仕掛けた。

今度は移動魔法で。


ヒュン!

近くへ移動してからのー

「魔王流・煉爆術・炎爆撃エンバクゲキ!」


と叫びながら、煉爆術と炎魔法を組み合わせた打撃を親玉の脇腹にぶち込んでやった。

先程の僕ほどではないが、吹っ飛び、もがき苦しむ親玉。

みたか!さっきの借りは返してやったぜ!

いつの間にそんな名前の技ができたかって?なんで態々叫んだかって?

たった今作ったんだよ!んで、叫びたかったから、叫んだんだよ!

だって…その方がカッコイイじゃろがーい!


そんなことを考えながら、腕を組み仁王立ちしていた僕だったが、親玉は苦しみながらも立ち上がり、再び戦闘態勢に入った。


「あれ?」


僕の未熟な煉爆術では、一撃で倒せなかったか。

なら、手数で勝負するしかなかろう。

そう思い、先程と同じやり方で攻撃を試みたが、親玉の奴、移動魔法で接近されることを学習したのか、移動魔法で接近した瞬間、僕から離れるという動作を繰り返した。

こいつ、全神経を回避することに費やしているな。

逃げない理由は分からないが、このまま回避を続けて、こちらの動きを先読みしてからカウンターでも食らわせるつもりか?

長期戦でもこちらの有利は変わらないはずだが、何か引っかかる。


早く終わらせた方がいい気がする。


そんな感覚になっていた頃、ウル君の方は他の魔獣を全て倒してしまっていた。

これで、残っているのは、親玉一体のみだ。

後は、僕が親玉を倒せば終わり、そう思った時だった。


急に親玉が光り出し、同時に辺りの魔獣たちの死体も光り出したと思ったら、何かが親玉へ集まっていった。


それは、魔力だった。


この時、僕の脳裏には、魔王教本部で読んだある書籍の内容がよぎっていた。

通常、魔獣は死ぬとその魔力と共に消えてなくなると。


しかし、目の前で起こっている光景はそれとは別の何かだった。

僕には、それ以上のことは分からなかったが、ウル君は何か感づいているようで、彼にしては珍しく、驚いた表情をして静かに語りかけてきた。


「魔王様…これは、この魔獣の特殊能力のようです…。」

「特殊能力?それは、今説明する時間ありそう?」

「…いえ…ないかと…。」

「じゃあ、まずはあれを何とかした方がいいね。」

「…ええ。」

「あれは僕が倒すと言ったから、僕がやる。ウル君は手を出さないように。」

「え?あ、はい、かしこまりました。」


魔獣の特殊能力とやらが何かは分からないが、元々格上だった魔獣の魔力がさらに上昇しているのを感じていた。

それに、あいつ、僕から受けたダメージも恐らく全回復してやがるな。

これじゃあ、僕の今までの攻撃が水の泡じゃないか。


とりあえず、さっきまでの攻撃を続けてみるか。

だが、移動魔法で親玉に接近した途端、僕は目を疑った。

奴が消えた。というより、移動魔法で移動して距離をとりやがった。

どういうこと?今まで、普通に回避してただけなのに、何故急に移動魔法で?

今まで隠していたのか?

いや、特殊能力で今できるようになった可能性が高い。

だとしたら、ヤバい。

想像以上に特殊能力というものは厄介かも知れない。


そこで、僕は距離をとり攻撃魔法での地道な攻撃に切り替えた。

幸い、ここは少し開けていて村人を巻き込むような恐れもない。

だから、攻撃魔法をしこたま打ち込んでやったが、回避するわ回復するわで、どれも致命傷には至らない。


その時、僕はあることを思いついた。

上手くいくか分からないが、やらないよりマシだろう。

そう思った僕は、実践してみることにした。


まずは、同じように攻撃魔法を続けた。敢えて単調に。

奴も単調な回避になってきたところで、今度は敢えて逃げやすい場所を作っての攻撃魔法。

そう、そうすれば、散々僕の魔法を回避した、今の自信たっぷりな奴なら勿論そこに逃げる。

仮に罠でも、僕の攻撃なら回避できると思っているだろう。

その自信を利用させてもらう。

その逃げた先では、僕の攻撃魔法で地面が少しぐらつく。

奴も少しぐらつく。

その一瞬で十分。

移動魔法で奴の背後、首筋付近に移動して、ってどこが首かよく分からないが、その辺は大体だ。

そこで、そのまま奴の首に、流操術と煉爆術で魔力を鋭利にコーティングした右腕を振り下ろす。

所謂手刀だ。

ビュン!


ゴロンッ!


奴の首が地面に音を立てて落ち、少し遅れてその体も崩れ落ちた。

その後、奴の体は徐々に魔力と共に消えてなくなっていった。


作戦成功だ。

不確定要素も多かったが、概ね思った通りに動いてくれたし、今度は煉爆術も上手くできた。

我ながら、よくできました。


すると、一部始終を見ていたであろうウル君が声を上げた。


「お見事です!魔王様!」

「いやー、なかなか手強い相手だったけど、上手くいったよ。」

「あの魔獣相手にあれだけの戦闘ができるのはさすがです!やはり、魔王様は素晴らしい!」

「えー、それほどでも…あるかな?なんつって。」


なんて、冗談っぽく言っていたら、エル君の姿が見えた。

エル君も僕が頼んだ仕事を終えたようだ。


途中想定外の展開はあったものの、僕たちのタダーパ村魔獣討伐作戦は、これにて一件落着したのだった。

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