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第57話 蹂躙がはじまりました。え?俺?休んでます

◇◇

 

 壁を背にして座り込む俺。

 そんな俺の目の前にゾンビが迫ってきた。


「グアアアア!!」


 ゾンビがひっかこうと手を伸ばす。

 だがサンはそれを許さなかった。


「ピートさんに指一本触れさせません!! はっ!!」


 彼女のボディーブローがゾンビのコアを見事にとらえる。


 ――ドンッ!!


 その瞬間にゾンビはバラバラになって散らばった。


「いっくよー!!」

「……負けない!」


 エアリスとカーリーは押し寄せるゾンビの群れに自ら飛び込んで、次々とほふっていく。


「危ない!」


 ルナはやられそうになったモンスターを助けながら、襲ってくるゾンビを片付け、


「はははー!! ぎゅーーん、ちゅどーん!!」


 ピピは遊び感覚で戦っていた。

 

 5人ともかなり活躍してくれてるよ。

 いや、彼女たちだけじゃないな。

 仲間のモンスターたちもまた懸命に戦っていた。

 少ならずダメージを負っているみたいだが、そんなことをおくびにも出さずに頑張ってる。

 倍近くあった戦力の差はみるみるうちに縮まり、むしろこちらの方が優勢になりつつある。

 そんな中、俺は……。


「よしっ! いいぞ! みんな頑張れ!!」


 壁にもたれかかって座りながら、みんなのことを応援していた。

 いや、別にサボってるわけじゃないよ!

 疲れて体が重いから仕方なく……って、これだとサボってるようにしか聞こえないな。

 だが事実だから仕方ないか。

 実を言うと、今まで発動したモンスター・オートメーションのせいでかなりMPが消費され、強い疲労感に襲われているのだ。

 これまでもMPが0に近くなることは何度かあったけど、ここまで強い疲労感は初めてだな。

 MPの上限値がアップするとこういう弊害もあるのか?

 いずれにしてもこういう時は無理したらいけない、ってダニエルのおっさんから聞いたことある。

 それに体を休めれば、わずかにMPが回復するんだ。

 万が一MPが0になれば、モンスター・オートメーションがその場で強制終了して、モンスターたちはたちまちゾンビの餌食になっちまう……。

 だから今、こうして壁に寄りかかってウトウトすることが、俺にとっても仲間にとっても重要な仕事なのだ。

 本当はゴロンと横になって寝てしまいたい気分だけど、さすがに気が引ける。

 ゾンビたちの亡骸に混じって転がるってのもちょっとな……。


「あはははは!! 蹂躙される気分はどうだい?」


 相変わらずどでかいニックの声が響き渡る。

 ああ、彼からは拠点の中をうかがい知ることはできないのか。

 きっとニックの脳内では俺たちが一方的にやられてるイメージが流れてるんだろうな。

 現実は逆なのに。

 蹂躙される気分ね。どうなんだろうね、ゾンビさん?

 近づいてきたゾンビに目で問いかけてみる。


「ガアアア!!」


 返事はない。どうやらただのしかばねのようだ。


「私のピートさんに近寄らないで!!」


 ――ドゴン!!

 

 今、「私の」って言った?

 だがそこを突っ込むと「ピートさんの意地悪っ!」って言いながら、『軽くポン』と肩を押されかねない。

 そうなったら火の海と化している外堀まで吹っ飛ばされるのは目に見えている。

 うん、完全に藪蛇だな。やめておこう。


「どうやら恐怖におののいて、言葉を発することすらできないみたいだね! いいさ、僕はここでお利口さんにして待っていよう! せいぜい楽しんでくれたまえ! あははは!!」


 だからここから何か言っても、どうせ聞こえないだろっつーの。

 それにこの状況で楽しむ余裕なんて敵味方ともにないだろうに……。


「はははー! ピピのかちー! 1ポイント!」

「頭へのハイキックどーん! はい、技がカッコイイから私、3ポイントー!」

「ああ! ずるーい! ピピなんてぴゅーっで、ぎゅるぎゅるで、ドドーンだから5ポイントだもん!」

「……回し蹴りで3体まとめて倒した。10ポイント」


 うん、楽しんでるのもいるみたい。

 


 


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