第5話 スキルポイントありすぎじゃない!? すごっ!
「サン? サンって君があのサン?」
少女が目を細めてニコリと微笑む。
闇の中なのに春の日が差し込んだようにあたりが明るくなった気がした。
「ふふ。驚かせちゃいましたね」
「いや、うん……。でもここは夢の中だから何が起こってもおかしくないよな」
サンが首を横に振る。
「ううん。ここは夢の中じゃありません。ピートさんの中です」
「俺の中?」
「正確には意識の中、になるでしょうか。とにかく今、やるべきことがあるからピートさんはここにいるんです」
「やるべきこと……」
俺の背後に回ったサンが肩越しに両腕を伸ばしてきた。
思わず背後を振り返ると、可愛らしい顔がすぐ目の前にあって、余計に慌ててしまった。
「な、何をするんだ!?」
「ステータス画面を開きますね」
ステータス画面?
疑問に感じると同時に、目の前に光でできた文字盤のようなものがあらわれる。
そこに映し出されていたのは、まさに俺のステータスだった。
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名前;ピート・アイリス
レベル:35
HP:1530
MP:320
腕力:53
防御力:42
魔力:35
スピード:57
スキル:なし
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ああ、これはギルドに置かれている【ステータス・タブレット】とまったくだ。
ステータスの表示や現在使用可能なスキル・魔法が確認できる。
けど、なんで今ここで?
「ピートさん、【スキルポイント】を振り分けてください」
スキルポイントとはレベルに関係する経験値とは別に手に入るポイント。
それを消費して、冒険や戦闘に役立つ様々なスキルを身につけることができる。
しかし戦闘に参加すらさせてもらっていない俺が、振り分けられるスキルポイントを持っているはずがない。
だからここ2年くらいは、自分にいくつスキルポイントがあるのか、確かめることすらしていなかったんだよな。
「ピートさん、早くしないとモンスターに食べられちゃいますよ!」
背中で密着しながら俺を急かすサン。
夢の中とはいえ、不謹慎にもドキドキしてきたぞ。
いや、待て俺。サンはゴーレムなんだぞ。
「もうっ! 待てません!」
しびれを切らしたサンが右手をぐいっと突き出して顔を俺の横に並べてきた。
『スキルポイント』と書かれたボタンに細い指が触れ、画面が切り替わる――。
「な……んだと!?」
「ピートさん! 56837ポイントもありますよ!」
バカな……。
通常、戦闘で手に入れることができるスキルポイントは1。
50000を超えているということは少なくとも5万回は戦闘をこなさなくてはいけないはず。
1日に5回モンスターと出くわしたとしても、10000日、つまり30年くらいかかる計算だ。
ましてや俺は戦闘に加わっていないのだから、もっとありえない……。
「待て、待て! これは夢だよな!? サンが可愛い女の子で、俺が見たこともないようなスキルポイントを持っているなんて!」
俺から離れて正面に回り込んだサンが恥ずかしそうにうつむきながら頬を赤らめる。
「ふふっ。可愛いって言ってもらえて嬉しいです。でも、ピートさん。これは現実ですよ。ピートさんは仲間たちに押しつけられた雑用をこなしているうちにスキルポイントをためていたんです」
「信じられない……」
……と、次の瞬間、サンがはっとしたかと思うと、険しい表情になって周囲を見渡した。
「ピートさん。もう本当に時間がありません。いいですか。30000ポイントを使って、【モンスター・オートメーション】というスキルを身につけてください」
【ヒロイン:サン】
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