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第42話 【閑話】絶望のイライザ②

◇◇


 この私自ら、ダンジョンを巣食うモンスターどもを一掃してあげることにしたの。

 あ、でも勘違いしないでよね。

 ギルドにいても誰も相手してくれないから、暇すぎて仕方なく、ってことじゃないわよ。決してそんなんじゃない。決して……。


「イライザさん。あなたのパーティーは解散となっているのはご存知ですよね?」


 受付嬢のエイミー。いつにも増して声がキツイ。

 まるで槍で突き刺すようだわ。

 声は性格をあらわすって、パパから聞いたことある。

 彼女の性格も絶対にキツイに決まってる。

 この私を何だと思ってるのかしら?

 そもそもあんたの給料は私たち冒険者への依頼を仲介する時の仲介料でまかなわれてるのを知ってるのよ。

 しかも私はAランクなのよ。

 私への依頼の仲介料だけであんたの月収をゆうに超えるんだから。

 つまり私がいなければ、あんたは食うことすらできないくらい貧乏だったってこと。

 そこんところ、本当に分かってる?


「ええ、もちろんだわ。ニックがあんなことになったのですもの。パーティー解散はやむを得ませんね」

「でしたらランクもいったんリセットされます」

「へ?」


 ウソ。そんなの聞いてない。


「まさか知らないとは言わせませんよ。冒険者育成学校で習いましたよね?」

「え、ええ。そうよね。もちろん知ってるわよ! ほほほ……」


 エイミーが丸眼鏡の向こうからじーっと見てくる。

 その視線、うっとうしいわ!


「で、でも、パーティーが解散になった時はそれまでの貢献度に応じて、ランクが決まるのよね?」


 そう、思い出したわ。

 これまで私は身を粉にしてパーティーに尽くしてきたものね。

 むしろ私がいなければあのパーティーは何もできない無能の集まりだった。

 だから私は絶対にAランクのままね。確定よ。


「Fランクです」

「はい?」


 今なんて言った?

 Fランク?

 新米冒険者は自動的にGランク。

 でも第1層で木の実の採取と、草食モンスターを数体討伐するというチュートリアル的な任務をこなせば、すぐにFランクへ上がることになってる。

 つまりFランクは実質、一番下。最下層。底辺。


「ごめんなさい。考え事してて、うまく聞き取れなかったわ。私のランクが何ですって?」

「だからFランクです。ちなみにFランクですので、探索可能な階層は第5層までで……」

「ふざけるのもいい加減にして!! この私がFランクですって!? これ以上侮辱するようならパパに言いつけるわよ!!」


 いつになく甲高い声が出てしまったも仕方ないわよね。

 この女は嫉妬してるのよ。

 絶世の美女である上に冒険者としても有能な私にね。

 だから意地悪をしてるんだわ!

 そんなの絶対に許せない。


「大きな声を出さないでください。それにふざけているわけではありません。ほら、こちらをよくご覧ください」

「何よ?」

「いいですか。Bランクに上がるまでの戦闘での貢献度は0。BランクからAランクに上がるまで、ほんのわずかだけ戦闘で貢献したようですけど、それもほとんど0に等しい。にも関わらず、索敵も荷物運搬もしない。キャンプ設置、炊事、洗濯……すべての貢献度が0。つまりあなたがパーティーにいようといまいと、他の仲間にしてみればまったく関係なかった、ということになります。あくまで数字上では、の話ではありますが」

「なんですって……」

「もちろん数字にはあらわせない貢献もあるでしょう。だからこの数字では本来、冒険者育成学校で再教習、となるはずだったのを、あなたのお父様のはからいもあって、Fランクにとどめ置かれたのです」

「そんな……パパが……」

「ええ、ですからお父様に報告くださってけっこうです。むしろお父様に感謝することです。さあ、どうします? Fランクの依頼となりますと……そうですね。『大ミミズ10匹を採取』とかいかがでしょう?」


 信じられない……。

 私が冒険者の底辺だなんて……。


「……もしどうしても、元のランクに戻りたい、ということでしたら、方法がないわけではありません」


 な、何よ!

 落としてから持ち上げるとか、可愛い顔して性格悪いわね♪



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