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第29話 もともとクソ野郎だったけど、さらにクソに成り下がったな

◇◇


 ニック……。本当にニックなのか?


「まさかこんなところで再会するなんてね。それにしても不思議な場所だ。可愛い女の子もいるし」


 まとわりつくようなしゃべり方も、わざとらしい作り笑いも、無駄に整った顔立ちも、すべて俺の知っているニックであることを物語っている。

 おいおい、まじか……。こっちくるなよ。


「ん? どうしたんだい?」


 どうしたんだい?

 じゃないから。

 そもそも俺にあんなことをしておきながら、よくも平気な顔してられるよ。

 ……と、心の中でいくら文句を言っても、現実は変わらないよな。

 まずはチラチラとサンを見る卑猥な視線をどかしたい。


「いや、あまりにも驚いてだな……。あ、紹介するよ。ここにいるのはサン」

「サン? って、ゴーレムのかい?」

「ああ、ここにいるピピのおかげで人間の姿に変化したんだ」

「ふーん。そっか。彼女はゴーレムか」


 サンに向ける視線がとたんに冷たく変わる。

 分かりやすいヤツめ。


「じゃあ、こっちの小さい子もモンスターなのかい?」

「ああ、そうだ」


 ピピが「ううーっ!」と犬のようにうなっている。

 初対面なのに邪気みたいのを感じたのかな。

 あ、でも下手に刺激するとホワイトスパークを放ちかねない。

 そんなことになったらこの家は全焼だ。それだけはなんとしても避けねば。


「ニック。ちょっと外に出て話さないか?」

「ああ、いいよ。僕も話しておきたいことがあるんだ」

「サン。ピピを頼む」

「はい。ピートさん」


 ニックと二人で外へ出る。

 幸いなことにルナたちは第54層で石拾いをしているからしばらく帰ってこないはずだ。

 家を離れてモンスターハウスの方まで歩いていく。

 そう言えばニックのレベルだとモンスターハウスを抜けるのは無理だったよな?

 だったらどうやってここまでたどり着いたんだ?


「君が聞きたいことは口に出さなくても分かってる」


 むっ?

 まさか心を読まれたのか?


「僕たちは無事にSランクになれたのか、ってことだろ?」


 いや、全然違う。むしろまったく興味はない。


「ま、まあ、それもあるけど、モンスターハウスを抜けてきたなんて、すごいなって思ってな」

「いや、話せば長くなるんだけどね。あれから僕にもいろいろあったんだよ」


 おいおい、人の話を全然聞いてないだろ。前からだけど。

 それに長い話なんて聞きたくない。

 3行にまとめてほしい。3行に。


「とにかく僕は強くなった。新たな目標もできた。だからこの先にある『鎖の封印』を解くつもりだ」


 おお、奇跡か!?

 まじで3行にまとめてくれるとは。

 ……って、今なんて言った?


「鎖の封印を解く、だって……?」

「おや? その様子だと封印のことを知っているみたいだね。もしかして場所も分かるとか。あはは! だったらちょうどいい。君もなってみるかい?」


 勝手に話を進めるところも全く変わってないな。

 それに「君もなってみるかい?」って意味が分からない。


「いや、断る」

「そう言うなよ。僕らの友だってなったんだから」


 ニックがくいっと手招きをすると、それに応じるように奥からガタイのいい男が近づいてくる。


「んなっ……!? と、トラビスか!?」


 そうそれはトラビスだった。

 けど俺の知っている彼とは明らかに違っていた。

 肌の色が真っ白で、瞳に黒目がない。口と目から血が流れ、足を引きずって歩いている……。


 明らかに死んでるだろ、これ……。


「あ、言い忘れたけど、僕はとある人のおかげで生まれ変わったんだよ。死霊使い(ネクロマンサー)にね! あはははは!!」


 ああ、完全に魔王の手下に成り下がったな。この男。

 


次は元仲間に最初の復讐を果たします。

これからも応援をお願いいたします。

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