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第18話 この幼女、あどけない顔して強すぎだろ!

◇◇


 どんな分野でも上には上がいるというのは、世の常みたいなものだ。

 第53層のモンスターハウスで無双できるようになったからといって、最強になったわけじゃないのにな。

 ここまであまりに順調だったから、すっかり油断していたのだ。


「ルナ! エアリス! カーリー!」


 洞窟の中。

 突き当りの大きな部屋で3体は仰向けに倒れていた。


「ううっ……」

「いてて……」

「……やられた」


 3人とも白銀の体が真っ黒にこげている。

 かなりの重傷だが、息はあるようだ。

 完全に死んでしまったモンスターはも二度と召喚できなくない――と何かで読んだ覚えがある。

 せっかく仲良くなったのに、死なせるわけにはいかない。

 どこか安全な場所に避難させることはできないか……。


「ピートさん! モンスターボックスです!」

「そうか!」


 腰にぶら下げたモンスターボックスに入れてしまえば、敵に狙われる心配はなくなる。

 しかも時間とともに体力が回復するようにできているから一石二鳥だな。

 3体を手早くモンスターボックスに収納すると、サンが再び甲高い声をあげた。


「ピートさん、あれ!」


 彼女が指さした先に松明を向けると、巨大なコウモリが赤い目を光らせてこちらを睨みつけている。


「ルナたちを痛みつけたのはあんたか?」

「ルナ……ね。モンスターになまえをつけちゃうあたり、まおーのてしたって感じね!!」


 ん? このコウモリずいぶんと若いな。

 声だけしか分からないけどサンたちよりも随分幼く感じる。


「魔王の手下? 誰が?」

「あんたに決まってるでしょ! パパのさいだんもめちゃくちゃにして! あたしが許さない!!」

「パパの祭壇?」


 いったい何を言ってるんだ?

 だが俺が眉をひそめた瞬間に、コウモリは甲高い声をあげて激怒した。


「もういいっ!! くらえ! ホワイトスパーク!!」

「ピートさん! 危ない!!」


 俺の前に回り込んだサンが両手を広げた。

 同時にコウモリの全身から白い閃光が放たれる。

 あまりの眩しさに目を開けてられない。しかもとんでもなく熱い。


「ぐっ……!」


 苦しそうなうめき声が耳に入る。

 ゆっくりと目を開くと、サンががくりと膝を落としていた。


「サン!!」

「ピートさん……。無事で……よかった……」

「サン!! サン!!」


 意識を失ったサン。だが息はあるようだ。

 綺麗な体は見る影もなく真っ黒に焦げている。

 ルナたちと同じだ。きっと彼女たちもホワイトスパークを食らったのだろう。魔法耐性のあるプラチナゴーレムを一撃で戦闘不能におちいらせるとは……。

 恐ろしい魔法だ。

 だが怖がっていても仕方ない。この状況を何とかしなくては……。

 サンをモンスターボックスに収納した後、あらためてコウモリと向き合った。


「これ以上、好きにはさせない」

「好きかってやってるのはあんたのほうよ! あんたのせいでパパのくろーがパアになったじゃない!」


 相変わらず言っている意味がまったく分からない。

 が、タダではここから逃がしてくれなさそうなことはよく分かった。


「君が何を言いたいのか、は知らない。でももし棲み処を荒らしてしまったなら謝る。だから俺たちをここから逃がしてくれ」

「いやっ!! あんた、この先にある『くさりのふーいん』をねらってるの、あたし知ってるもん!!」

「鎖の封印?」

「とぼけないで! いいわ! ゆーしゃのむすめのあたしが相手してあげる!!」


 コウモリは地面に降り立った直後、なんと人間の幼女に姿を変えた。

 背丈からして8歳くらいだ。毛先がカールしたブロンドの髪を揺らしながら、可愛らしい顔で俺を睨みつけている。


「なっ……!」


 驚く俺をよそに幼女は一気に間合いをつめてくる。

 早いっ……!


 ――ドンッ!


 彼女の小さな拳が俺のみぞおちにめり込んだ。


「ぐっ!」


 鈍い痛みが腹全体に広がる。

 だがサンほどのパワーはないようだ。

 三歩よろめいただけで、どうにか態勢を整えることができた。


「ふふふ。さすがはまおーのてした。いくらあたしがゆーしゃマリウスのむすめだとしても、パンチいっぱつでは死なないみたいね」

「マリウス……。って、あのマリウス!?」

「マリウスと言えばパパしかいないでしょ! まおーアルゼオンをたおして、このダンジョンにふーいんしたでんせつのゆーしゃだもん!!」


 少女が腕を組みながらドヤ顔で鼻を鳴らした。

 ……が、そんなバカな。

 伝承によるとマリウスは数百年前に活躍した人だぞ。


「あんたは自分が英雄マリウスの娘だと言いたいのか?」

「むふっ。えーゆー……って、そうよ! あたしがえーゆーマリウスの娘よ!」


 ん? 幼女の顔がちょっとだけニヤけたような……。

 気のせいか? いや、違う。気のせいじゃない。

 ということは、この幼女、もしや……。


「そうだったのか……。マリウスと言えば世界一有名な英雄だもんなぁ。その英雄の血を引いた娘もまた英雄ってことか……」

「んなっ! あたしがえーゆー!?……むふふふっ。……って、そんなのかんけーないでしょ! つぎはホワイトスパークのばんよ!! こんどこそ死になさい!」


 やはりこの幼女。おだてに弱いな。

 よしっ。サンが一瞬で瀕死に追いやられた魔法を食らったらたまったものじゃない。

 だったらおだてまくってここを乗り切るしかない!



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