第17話 ゴーレム娘たちとのダンジョン探索♪
◇◇
レベル100になって初めての魔法を覚えると同時に、別のスキルも手に入れていた。
その名も【オートテイム】。召喚しているモンスターが自分の意志で行動することを許可するスキルだ。
これをオンにしている間はMPを消費し続けるが、モンスターを何体でも戦闘や探索に参加させることができる。
ただしテイマーが直接命令を下さるのは使役しているモンスターだけで、【オートテイム】のモンスターはあくまで自分の意志で行動することになる。
つまり主人であるテイマーを見捨てて逃げ出す可能性もあるということだ。
まさに普段からのモンスターとの絆が試されるスキルってわけだな。
試しにサンたち全員に対して【オートテイム】を1日中オンにしたところ、消費MPは400だった。つまり1体あたりMP100消費するという計算。
さすがに寝ている間はオフにするから、半日で1体あたりMP50。4体で200。
レベル100で最大MPは2500まで達したから、これくらい消費しても何の問題もない。そもそもMPを消費するシーンはモンスター・オートメーションのシナリオが発動している時と、プチ爆発を起こすホーリーフレアを利用した時くらいだからな……。
「おー! お宝の匂いがするよー!!」
俺たちからだいぶ離れたところでエアリスの弾んだ声が聞こえてきた。
「ちょっとエアリス! 勝手な行動は慎みなさい!」
俺の一歩後ろからルナがエアリスを注意したが、エアリスは聞く耳など持たず、大きな岩のあたりで地面を掘りはじめた。
第54層は岩、石、砂利が広がるフィールドで、53層と同じように空があって、まるで外の世界にいるような錯覚すら覚える。
「……敵も発見。わたしが対処する」
カーリーがエアリスの背後に忍び寄るイノシシ型のモンスター目がけてダッシュしていった。
「カーリー! ご主人様の命令を聞いてから……」
いつでも律義なルナ。
自由奔放なエアリス。
猪突猛進なカーリー。
オートテイムのおかげで彼女たちの性格をもっとよく知ることができたよ。
「ピートさんの周囲100歩以内に敵はいません。安心してくださいね。何があっても私が守ってみせますから! あ、そこ!」
足元にある石を踏みつけて粉々にするサン。
「ああ、よかったぁ。ピートさんがつまづいて転んだら大変なところでした」
彼女はオートテイムの間でも相変わらず心配性で過保護だ。
俺の横にピタリとはりついて離れようとしない。
「ご主人様、ごめんなさい。エアリスもカーリーもわがままばかりで……」
「ルナ、謝られる理由なんて一つもないよ。むしろこれくらいの方が賑やかで楽しいじゃないか」
「あはは! お宝ゲットー!!」
光るキノコを高々と掲げながら手を振るエアリスに、俺は片手をあげて微笑む。
カーリーも仕留めたイノシシを引きずりながらこっちへやってきた。
「……ご主人様、倒してきました」
「よくやったね。今夜さっそく猪肉でスープでも作ることにするよ。ありがとう」
「……へへへ。嬉しい」
幸いなことに、この辺りで出てくるモンスターのレベルは、モンスターハウスのモンスターとさほど変わらない。
だからエアリスとカーリーが勝手に前を行っても問題にはならないはず――なんて考えていると、大抵は大きな問題にぶつかるものだよな。
いわゆるフラグってやつ。
ただ2体はここらのモンスターではかすり傷一つ負わせることすらできないほど強い。
多少のことは目をつむっても大丈夫だろう。
◇◇
順調に先を進んでいくと、岩山のふもとの洞窟の前に出た。
「次の階層にいくにはここを通る必要がありそうだな」
洞窟の奥は真っ暗で、何があるのかまったく見えない。
妙な胸騒ぎがするのは俺が単に臆病なだけなのだろうか……。
前のパーティーでは索敵と罠の解除を押しつけられてたからな。
臆病に思えるくらい慎重に行動する習慣が身についているのかもしれない。
隣にいるサンも同じだったみたいだ。
くいっと袖を引っ張ってきた彼女は暗い声でつぶやいた。
「ピートさん。なんだか嫌な予感がします。今日はもう引き返しましょう」
「ああ、そうだな……」
しかしエアリスとカーリーにとって、緊張とか恐怖とか、そういったものとは無縁のようだ。
「お宝の匂いがプンプンするよー!」
「……奥でモンスターの声。倒してくる」
彼女たちは立ち止まることなく洞窟の中に入っていってしまった。
「エアリス! カーリー! 待ちなさい!!」
たまらずルナが2体を追いかけて洞窟へ消えていく。
ますます嫌な予感がしてきたぞ。
「ピートさん、どうしましょう……?」
ここでオートテイムをオフにしたら、エアリスたちは洞窟の中で動きを止めることになる。
万が一強力なモンスターに囲まれたりしたら危険だ。
どうしたものか、と悩んでいると、サンが何かを思いついたように顔を上げた。
「モンスター・オートメーションを使ったらどうでしょう?」
「そうか! その手があったか!」
「発動条件は『もしテイマーから10歩以上離れたら』とかどうでしょう?」
「うん、それがいい。発動内容は『テイマーのもとへ帰ってくる』にしよう」
シナリオ名を【呼び戻しシナリオ】とする。
しかしそのシナリオをセットする前に異変が起こった――。
「うあああああ!!」
「きゃああああ!!」
洞窟の中から響く悲鳴。
いったい何が起こったんだ?
だが考えている場合じゃない。
俺とサンは目を合わせてうなずきあった後、入り口の方へ駆けていった。
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