第11話 パンチ一撃でモンスターを黙らせるあたり、さすがです
◇◇
翌日。
テントの中ってすごく温かいんだな。
おかげで爆睡できたよ。
知らないうちに疲れがかなりたまっていたみたいで、昼前まですっかり寝入ってしまった。
しかしこの草原はダンジョンの中なのに昼夜があるのか……。
四季もあるのかな?
雨とか降ったりするのかな?
「おはようございます! ピートさん!」
律義に外で待っていたサンの明るい声で目が覚める。
「今日は何をしましょうか?」
「MPも全快してるし、昨日作った【やられたらやり返すシナリオ】を試してみようか」
「はい! では防具を用意しますね!」
「いや、このままでいいよ」
「えっ?」
【やられたらやり返すシナリオ】がうまく発動しなかったら、すぐに【ピンチシナリオ】に切り替えればいいだけだからな。
重い防具をつける必要なんてない。
普段着のままモンスターハウスに足を踏み入れた。
「あの人間はバカか」
「自殺志願者かもしれぬ」
モンスタートークの効果は召喚したモンスターだけが対象ではないのだな。
彼らの呆れた声が耳に入ってきた。
「とにかくやっちまうか」
「あんな弱そうなヤツ、準備運動にもならねえだろ」
「ガハハハ! 違いねえ!」
敵を甘くみてはいけません。能あるガーゴイルは爪を隠す、です――って冒険者育成学校で習った覚えがあるが、モンスターたちがそんなことを知らないのは当たり前か。
『やられたらやり返すシナリオの発動条件を満たしました。モンスターを召喚します』
「ご主人様!」
「やっほー!」
「……出番か」
昨日と同じゴーレム娘3体に加え、サンが俺を囲む。
さあ、【やられたらやり返すシナリオ】のお披露目だ!
まずやってきたのはよだれを垂らした巨大なクマのモンスター。
サンの目の前に立ったクマは嫌らしい目つきで笑った。
「グヘヘ。可愛いゴーレムちゃんじゃねえか。俺のお腹でスリスリしてやるよ」
うげえ、気持ち悪いな。クマのくせにゴーレムに欲情するなんてな。
「その前にこのツメで眠らせないとな!!」
クマがサンに向けて右手を振り下ろす。
――カンッ!!
高い音を立ててツメが弾かれた。
サンはノーダメージのようだ。
「ちっ。嬢ちゃんはガードが固いってか。大人しく俺のおもちゃになりやがれ!」
クマが両手を上げてサンに抱きつこうとする。
だがサンにとって、それは絶好の反撃のチャンスだった。
「サン、行きます!! はっ!!」
サンの強烈なアッパーが巨大な熊のモンスターの腹にめり込む。
――ドゴォォォン!!
ただのパンチなのに、大爆発が起きたような轟音が響き渡った。
あれは絶対に痛いな。
クマの後ろに立っていたゾンビが、背中を貫通した衝撃波で部屋の向こう側の壁まで吹っ飛ばされていったし。
「うぐはぁぁぁ……」
クマはうずくまって、そのまま動かなくなった。
『サンの会心の一撃! ヘルグリズリーを倒しました!』
やられたらやり返すシナリオ――大成功だ!
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