第10話 やられたらやり返すって響き、最高だな
◇◇
魔王アルゼオンが復活した――。
サンいわく同じダンジョン内の第51層にいるらしい。
けど俺のいるところは綺麗な青空と草原が広がっており、平和そのもの。
だから伝説の魔王がわずか2層先にいるなんて、まるで実感がわかなかった。
まあ、あんまり難しく考えても意味ないよな。
どうせ魔王は第51層から動けないんだし。
きっといつか勇者マリウスみたいな英雄があらわれて、アルゼオンを退治してくれるだろう。
今の俺が考えるべきは、これからどうやって生きていくか、だ。
幸いなことにテントと食料、それに水もある。
数日くらいなら、何もしなくても生きていけそうだ。
ただ裏返せば、何もしなければ数日で干からびるのは目に見えている。
草原の奥には森があるから、そこで小動物でも狩れればいいのだが、その保証もない。水源だって見つからないかもしれないしな。
やっぱりレベルを上げてダンジョンを探索しないと厳しいか……。
「ん? 待てよ。なあ、サン。モンスター・オートメーションってシナリオを決められるんだよな」
森から薪になりそうな木を運んできたサンは、何でもないように答えた。
「ええ。余程無茶なシナリオでなければ自由に設定できるはずです」
火打ち石で火を起こしながら、口に出して考えてみる。
「シナリオって『もし〇〇だったら』というのが条件で、『△△する』ってのが発動の内容で間違いないよな?」
「はい、そうです」
「なるほど……」
パチパチと音を立てて気が燃え出したのを確認した後、俺はステータス画面を開いた。
「ピートさん、どうしたのですか?」
「いや、シナリオとやらを設定してみようと思ってな」
発動条件は『もしモンスターが攻撃を受けたら』にして、発動内容を『敵を倒すまで反撃する』とする。
「シナリオって2つくっつけることはできるのかな?」
「さあ……私にもそこまでは……」
分からなければやってみるだけだ。
もし失敗してもまたやり直せばいいしな。
「ピンチシナリオと今作ったシナリオをくっつけて……。おお! 設定できそうだ!」
発動条件①:もし5歩以内の距離に敵が迫ってきたら
発動内容①:敵が迫ってくる方角にモンスターを召喚し、テイマーを守る
発動条件②:もし敵から攻撃を受けた場合
発動内容②:敵を倒すまで反撃する
「よし! こうしておけば敵に囲まれたら、自動的にサンたちが戦ってくれるってことになる! 一方的に殴られ続けるのも癪だしな! 名付けて【やられたらやり返すシナリオ】だ!」
サンたちプラチナゴーレムのレベルは記憶が正しければ70を超えている。
そしてモンスターハウスで出現したモンスターたちは、目測ではおよそ60程度。
もし【やられたらやり返すシナリオ】が上手く発動してくれれば……。
安全かつ自動的にレベルアップするのも夢じゃない!
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