第7話『決戦前夜・午前』
「ふう…。」
昨日は疲れた。コボルトとの宴会、その後の魔王サタン。てか、後半の体力の減り、ばりやばない?
もう上までいく気力無くて、下のリビングのソファで寝たから身体中、痛くて大変なのよ…。というわけで、喜べ男子っ!!アイリス様の入浴シーンだよっ!!
まぁ、詳しくは言えないんだけど…。banされちゃうからね…。
しかし、リーファさんはまだ眠ってるのか…。寝る子は育つ…って言うけど、この世界の俺とリーファさんは何歳くらいなのだろうか。見た目的にはJKにも見えなくもないしなぁ…俺。
「…やっべ…。」
のぼせてきちゃった。かれこれ、2時間は入ってるからなぁ…。流石に出ようっと。
しかし、バスルームって言ってたけどほとんど銭湯じゃん。あれ。キッチン、食堂とは反対方向にあるんだけど、空き部屋ばっかの方に作らなくて良いと思うんだけどなぁ…。
とりあえず、リーファさんが起きた時ように…今日はシーザーサラダとトースト、スクランブルエッグとハムでも焼くか。
「うっし!!」
…というわけで出来ましたっと。
魔法とか使えば結構楽に出来るけど…やっぱ手料理に限るでしょ。俺ってば良い嫁さんになるわぁ…。まぁ、男と付き合う気なんて無いけどな。リーファさんを起こしに…。
「ふわぁぁぁ…。おはようございましゅ〜…。」
「おはよ。」
…欠伸をしながらやってくるリーファさん。肩より上の短めな髪が所々、乱れている。朝が苦手なのね…。
「むっ。なんですか、そのだめな子を見る目は。」
「よくご存知で。」
ニヤリっ…。
あの時の甘えるリーファさんは可愛かったなぁ…。
俺の表情が気に食わなかったのか、バンっと両手で机を叩くリーファさん。…そんな王道なムムムッ…みたいな表情…しなくても…。
「不覚ですっ!!貴女みたいな…人に…あんなっ…。もう…お嫁に行けないぃ…。」
「あむあむ…。リーファさん、女神なのにお嫁に行くの?」
顔を真っ赤にしてあわあわしてるリーファさんにふと疑問を持ちかける。女神やら神やら…人外めいた謎の存在でも恋やら何やらするんだな…。あれ?今の俺も十分、人外めいてるのでは?
「恋に人外も何も関係ありませんっ!!…全く、先入観で判断する人は嫌いです。」
「はいはい…。で、次は何すればいいの?」
ほんっとリーファさんは相手してて飽きないなぁ…。さっきから顔の表情がコロコロ変わる。今も半泣きで此方を睨みつけて、最後のハムを頬張ったところだ。
「…ずるいですっ…。」
「はいはい。で、次は?」
「…そうですね。近くの町で聞いたことなのですが、このマカの森は東西南北に魔物の集落があり、東のコボルト、西のエルフ、北のスパイダーガール、南のリザードマン…。勇者でも躊躇うほどの苦戦必須の地域であり、あまり人に懐かないモンスターが多いとか…。」
…なるほどな。
リザードマンやエルフはわかる。人形の蜥蜴と耳のとんがった種族…。可愛いの、多いかなぁっ!!
「ごほんっ。何想像してるのですか?アイリス様?」
「…す、すみません。」
…睨まれた。女らしくしろってことか?
まぁ、女神でも変態な人はいるし…。自ら全裸になって矢で射ぬけって…。頭おかしいでしょ…。
「…で、スパイダーガール…ってなに?」
「そうですね。大きさとしてはコボルトより小さいほどの大きさです。大体、小学2、3年生ぐらいの平均的な背丈ですね。その中から上位種としてスパイダー・レディ、アラクネとなります。同様にエルフも妖精王と言われる立場の方が居ますし、リザードマンも…。」
「待て待て、そんなに一気に言われてもわからない!!」
…えーと?
つまり、女子小学生の集落ってこと?なにその、事案発生してくださいみたいな土地は。
「舐めちゃダメですよ。この中でスパイダーガールは最も上位の立場です。その中の最上位種、アラクネともなりますと圧倒的な美貌とプロポーションに惹かれたものを下半身の蜘蛛が喰らうという戦闘スタイル。…蜘蛛の化け物です。それ以外のスパイダーガールも強者です。群れられては、下手なドレイクでは勝てません。」
…何その怖いの。
この世界の蜘蛛はドレイクも捕食するの?
※ドレイクとはドラゴンの中でも低級で弱い部類のこと。つまり、弱いとはいえ、スパイダーガールはドラゴンを喰らうってこと。怖いね!!
「…誰に言ってるんですか。」
…本日、最初のジト目リーファさん。
見慣れてくると可愛いもんだよ。憎まれ口も。
「で?他はどんな塩梅?」
「…エルフはまだ早いですね。そもそも、彼女らは信用した生物しか集落に入れないようですし。個々の強さもかなり上の部類です。魔法を使い慣れてないアイリス様では苦戦を強いられるでしょう。」
「何故、戦う前提なのかなぁ…。」
もっと友好的な手段があるでしょが。
俺はトーストに齧り付き、既に朝飯を平らげたリーファさんの話を聞くことに徹底した。
…だが、そうなるとリザードマンのみになるわけだが…。
「南の湿地、ナパール湿地を根城にするリザードマン。たしかに、次はそこが宜しいでしょう。戦闘力増強にもなりますし、友好関係が気づければ、魚やお肉を分けてくれるかもしれません。」
おっ。
メリットは十分あるな。だが、リーファさんの少し俯いた顔が気になる。そんなに暗くなるような事情があるのか…?
「…はい。リザードマンはコボルトのように多共生の集落です。リザードマン、そして、そこから派生した人によく似た種族、竜人族が暮らすのですが…差別的な考えをリザードマンが持ち、竜人族は迫害されているようです。」
「…なに?」
人になにかされたのか…?
そもそも、魔物の進化とは不思議だ。なぜ、爬虫類から人が生まれるんだ…?
…疑問は積もる。だが、動いてみないことにはなぁ…。オルトロに仲介役を頼もうか。リザードマンとも友好はありそうだし…。
「…行きますか。ナパール湿地へ。」
「あぁ。」
…その前に皿洗いね。