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第6話『魔王と友達になりました』

「アイリスしゃま〜。ま〜だのめましゅよ〜。」


「はいはい。」


…なーんで俺がメイドをおぶってるんですかねぇ…。てか、さりげなく女の子の体、触ってるし…。いや、俺も今は女だけど。なんか、やらかいし。あと、可愛いし。娘とか居たらこんな感じだったかなぁ…とか。いや、何千歳も上だと思うけど。


「飲み足りないれすよ〜。神界にはあんな飲み物ないれすからぁ〜。」


「はいはい。頼むから、暴れないでくださいね〜っと。」


…しかし、飛ばすに歩くとなると日がどんどん傾き始める。もう、夕方か。てか、家まで意外と距離あるなぁ…。仕方ない。頑張るかぁ…。

























「やっと家までついたぁぁ…!!」


歓喜の嵐よ。よく頑張った俺っ!!よくやった俺っ!!あぁ、ちょっと蔦がはって汚いけど…まぁ、ご立派な洋風豪邸でしょ。赤煉瓦の家ね。うん。


「着きましたよ。リーファさん。」


「ん〜…ベッドまで…。」


…リーファさんも甘えることなんてあるんだ…。まぁ、本人もなんか体の関係で心まで幼児化してしまった…とかなんとか言ってたけど、そんなもんなのか。


リーファさんの部屋は…俺の横だったな。


「失礼しまーす。」


…人を抱えて開けるのは一苦労だぜっと…。うん。こじんまりしてていい感じ。観葉植物とか…まぁ、緑ですね。室内は。葉っぱの壁紙に緑の布団。ワンルームサイズだけど、それでも殺風景ね。


「ほら、ベッドですよ。」


「う〜ん…。」


俺はリーファさんのベッドに腰をかけ、リーファさんをゆっくりとだが、下ろしていく。とてもじゃないが、夕飯は食べられそうにないな。


「…お休みなさい。」


俺はリーファさんが眠ったことを確認すると布団をかけて、リーファさんの部屋から静かに出て行った。


…しかし、リーファさんがあんなにも酒癖悪いとは。いや、俺も人のこと言えないが…。


とりあえずご飯でも食べようかなぁ…。

リビング…というか、まあ、リビングか。リビングらしき場所のソファに腰をかける。てか、ちょっと疲れた…。コボルトたちのノリの良さ…俺にはちとキツいなぁ…。例えるなら、アレは陽キャと呼ばれる部類だ。うん。


「はぁ…。」


「なに、ため息ついてるんだ?」


「それが疲れてさぁ…。ん?」


…誰?このイケメン。

髪は俺より赤いし、なんか軍服みたいな黒いマントみたいな厨二病が好きそうな服着てるし…。羽生えてるし…。なんか、目ぇ赤いし…。


「…誰?」


「ほう!俺か!?俺はサンタナ・ランフォーレ。サンタナ領を占める憤怒の魔王様だっ!!褒め称えるがいいッ!!」


そう言うと男は対面のソファから立ち上がり、胸を張って、八重歯を見せながら笑った。

あら、お耳の恋人と言わんばかりのイケボ。でも少年っぽいのね…。てか、サンタナ領を占める…憤怒の魔王か…。


憤怒の…『魔王』…。マオウ?マオウってなんだっけ…。


「…魔王ッ!?」


「うおっ!?なんだ、魔女っ子よ。びっくりしたではないか。」


いやいやいやッ!?

魔王様相手に俺、ガニ股でソファの背もたれにもたれてたよ!?だめじゃんッ!!無礼じゃんっ!!殺されるじゃんっ!!


俺はすぐにソファの上に正座をする。

この間、僅か0.2秒!!社会人直伝ジャパニーズ『DOGEZA』で許してくれる…かな。許してくれる…よな。きっと…。


「誠に、申し訳!!」


「待て待て待てッ!!別に俺はそんなことをして欲しくて来てるんじゃねぇよ。魔女っ子。楽にしてくれよ、な?」


は、はひぃぃぃぃ…。

魔王様、舐めたらアカン…アカンよ…。殺される…。腰の刀みたいなやつでサイコロステーキになるぅぅぅ…。アカン…。俺の人生…終わった。


「…それで…ま、魔王様が…こんな辺境に…如何なさいましたか…?」


サンタナという男はまたあの笑顔に戻り、どっかりとソファに座った。さっきまでも満面の笑みだったが、ちょっと汗をかいていた。

…ちょっと親近感湧くけど、人外なんだよね。それも大化物。俺の汗で湖が出来るくらい、今、出てるわ。汗止まらんわ…。


「うむっ!!単刀直入にっ!!最近、このルシフェル領だった場所を支配するという馬鹿者がいると聞いてな!?遊びに来たんだよっ。その馬鹿者のところに。」


「…へ、へぇ…。」


…魔王様の笑みが怖い…。純真無垢ゆえタチが悪いとはまさにこのこと…。だけど…つまり、俺が魔王の座を狙っていることを知ってるってことだよなぁ…?


やっぱり殺されるぅぅぅぅっ!!

おじさん…涙が出てきたよ…。

今、お姉さんだけど…。


「…俺はなぁ…。そんな馬鹿者が…。」


急にサンタナの周りから魔力の風が発生する。威圧感、とも取れるそれは俺をビビらせるに至っていた。骨の髄まで目の前の女を震撼させるには十分だった。


…だが、俺も諦めたくはない。

今、コイツと戦っても魔法に不慣れな分、俺が幾分か不利だろう。だが、それでも何年経ってもこの男を超えてやる。敵意を剥き出しにされたらそれだけの力は見せてやる。


「…大好きだっ!!」


「…へ?」


…今、なんて?


「俺はなぁ?他の奴らにここを取られなけりゃいいと思っていた。だが、ぽっと出のお前なら取られてもなんの問題はない。それに、お前を放っておいた方が俺の大好きな戦いが楽しめそうだからなっ!!」


…なんか、変わったやつ。

俺、ちびるかと思ったよ…。だけど、いい奴ってことでいいのか?


「魔女っ子よ。名前を言えッ!!」


「な、名前?…アイリス…ですけど…?」


俺が名前を出した途端、サンタナはキラキラとした眼差しでガラス張りの机に乗り出し、此方を見てきた。


「ほう!!アイリスかッ!!麗しいなッ!!俺はアイリスと呼ぶから、お前は俺をサンタナと呼んでもいいぞッ!!」


「…は?それは…。」


「あと、タメ語でいいッ!!俺たちは友達だッ!!ハッハッハッ!!」


…友達って…。

てか、なんか嵐みたいな人だな。なんか、そのうち、責務を全う…とか、いきなり…ライバルだっ!!…とか、言い出す熱血系キャラの感じがするわぁ…。


「…い、良いのか?」


「あぁ!!」


…なんか立ち上がってシェイクザハンズを求めてきてるし…。まぁ、やるけど。あっ、ゴツゴツしてる。オルトロとは違うゴツゴツだ。こいつ、多分、モテるな…。


「よし、俺はもう帰るとするか。騒がしくしてすまねえな。上でなんか寝てるんだろ?」


「え?わかるのか?」


「おうよ。俺は炎の使い手。この建物内の温度を色で探知することが出来るのさ。上の奴、相当飲んだのか、だいぶと体温が上昇している。…とはいえ、そんな奴はどうでも良いな。さてと、じゃあな。我が友よっ!!」


そう言うとサンタナは玄関へと歩いていった…と思ったら、何かを思い出したように此方に振り向いた。


「…気をつけろよ。一人、狙っているやつがいる。ソイツは俺の大嫌いな陰湿な奴だ。正々堂々を知らない。下劣に醜悪なバケモンだ。だが、強え。…頑張れよ。」


…さっきよりも低い真面目な声に俺はすこしびっくりした。それだけ言うとサンタナはニコッと笑い、此方に手を振ると玄関から出ていった。


…頑張れ…か。

何が来るかは知らないが、そんなことは今やるべきことをしてからにしよう。

…お腹、空いた。

サンタナ・ランフォーレ…憤怒の席に座る赤髪の男。美形な顔と真紅の瞳を持ち、黒く赤い両翼を持つ。戦闘狂の部分があり、力だけなら六代魔王最強。

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