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第5話『六代魔王』

戦いが終われば、何処の世界も同じ。某海賊漫画と同じく、宴会だ。コボルトや獣人たちも踊るや、食べるのどんちゃん騒ぎ。

木を組み、火をつけ作るキャンプファイヤー。ランチョンマットみたいなのを広げ、そこに俺たちも座り、大皿小皿の料理を頂く。


「…ん?」


真ん中には豚の丸焼きとしか思われない料理があり、それを切り崩して食べるが、ジューシーでなんとも美味い。少なくとも、隣のリーファさんの料理よりは幾分かマシだ。


「…ぐぬぬ…。ほんとだから言い返せない…。」


本当にぐぬぬなんて言う人、居たんだな。オルトロも気を許したのか、笑顔で応対してくれている。


「やぁ、楽しんでくれているか?アイリス様。」


「あぁ。」


昔は宴会なんていかなかったからな。

…いや、いけなかったが正しい。会社での友達はパソコンだったからなぁ…。うぅ…。心の中で泣いておこ。


「…これは。」


マットに置かれた陶器のコップに口をつける。匂いからして、ワイン…か?果実酒の芳醇な香りが鼻を突き抜ける。ちょっと飲んだだけで頭がクラッとする。多飲厳禁だ。

それにこのカラダになってから、ガツガツと食えなくなった。恐らく、栄養は一点集中だろうがそれだけ少食になったってことだろう。


「リーファさ…!?」


「ふえぇ…。なんれすかぁ〜?」


…出来上がってらっしゃる!?

普段は堅物の冷静沈着毒舌メイドさんが肩を回して、舌ったらずに…。

可愛い。可愛いけど!!


「リーファさん、しっかりっ!!」


「なにがれすか〜?アイリス様も飲みましょーよ〜。」


「いや、俺…もそんなに強くないから…。」


…ここで俺まで酔い潰れたら誰が家まで連れてくんだよ。


「ハッハッハッ。愉快な人間どもだ。…貴様らに着いて行ったら、毎日がこのような愉快さなのだろうか。」


「…すまないな。普段は…もう少し…。」


「良い。主従関係というものは疲れるものだ。俺とてそれも同じ、父上や弟。そして、部下。貴女も一国の主人となるのなら、覚えておいた方がいい。全てを背負える覚悟を。」


…覚悟、か。


「…まだ実感が湧かないな。魔王なんてなれるものなのか?」


俺はオルトロに聞いた。

オルトロは天を見上げ、息を吐くように言葉を紡ぎ始めた。


「我々、弱小の魔物は魔王の指揮下に入ることで改めて、力を得る。だが、魔王と呼ばれる魔物とて同じ。領土を確保すれば確保するほど、戦にさける人員が確保でき、勢力争いに優位に立てる。魔王ルシフェルが死んだ今、このマカの森はいつ戦火に焼かれてもおかしくない。我々にも統率者がいるのだ。…魔女アイリス様。」


「…。」


オルトロの目はいつも以上に真面目だった。しかし、統率者か。俺はご大層なところに突っ込んでったなぁ…。ブラック企業の平社員が魔王やら統率者やら…もうわっけわかんない…。頼みの綱の女神リーファさんも…。


「あ、ポンポンっ!!良い踊りれすねぇ…!!」


腹踊りって女の子がするようなことじゃないでしょ!!特に女神様がッ!!


「はぁ…。」


「ハッハッハッ。」


「…俺はそんなご大層な存在じゃない。オルトロ。」


俺の言葉をオルトロは優しげに微笑み、ただ聞いている。…言葉は適当にしか出てこない。ちゃんと考えてもいない。人を動かすには至らない。

…だからこそ、俺にしか出来ないことを探す必要があるのだろう。


「…でも、頑張りたいと思う。魔王ってのはよくわからないけど…それでも俺にお前たちを預けてほしい。一人も死なせない。」


「…ふふっ。その言葉、心に刻んでおくよ。アイリス様。」


…とりあえず、あの駄女神を回収して、帰るか。もうだいぶと騒いだ。


「…帰るんだな。アイリス様。」


「…あぁ。非常に楽しかったよ。ありがとう。オルトロ。」


「…何かあれば頼ってくれ。」


…オルトロのゴツゴツとした手と握手を交わす。とはいえ、女神様の痴態はどう弁明したものか…。




















※※※





「…ルシフェルの領土。どうしたものか。」


…大きく翼を広げた鷲のような姿をする魔国『ヴェルサイト』、その中央に位置するマカの森を含むルシフェル領を巡り、六代魔王らは焦っていた。


「そう頭を抱えるなよ。レヴィアン。俺たちは取り合うだけで良いんだぜ?簡単だろ。」


憤怒の席、座るは背丈の高い赤髪の男。黒色の軍服のような格好にマントを羽織る白銀の眼光の持ち主、紅蓮翼『サンタナ・ランフォーレ』


そして、嫉妬の席に座るは同じく背丈の高い銀とも白とも青とも取れる不思議な髪を後ろで結った女性。聖騎士のような青き甲冑は何処となく魚の鱗のようなものを感じさせる。深海龍『レヴィアン・メルベール』


…以下、集まりは悪いがこのヴェルサイトで最も力を持つ6名、六代魔王。


「さて、俺たちも狙わねえとな。マモンドのやつ、動き出したぞ。」


「…争いなど、私は好まぬ。最も死者を少なく、最も簡単に済ませるのが最適解だ。私は貴様やマモンドのような武闘的な手段は取らぬのだ。わかっているようなことを聞くな。」


「へいへい…。俺も遊びに行ってみますかねぇ…。」


カチャッと音を立て、サーベルのようなものを取り出し、刃を舐めるサンタナ。その姿を訝しげにみるレヴィアン。


「…気色悪い男だ。」


「…別に女に興味はねえ。俺は戦えればそれで良いんだよ。…それにィ…面白いやつがあそこにいるらしいからなァ…。魔女、アイリス…新たなる傲慢…。クックックッ…。」


「…馬鹿な男だ。」


バサっと音を立てて紅色の羽を広げ、飛んでいく。目指すはマカの森だ。


「…ルシフェルに至るか。或いは…。」


ただ、サンタナは笑っていた。

美形が歪むほど、狂気的に…。

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