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第3話『リーファ先生の魔法講座』

…さて、朝飯を終えて、魔女っぽいローブに身を包み、外へとやってきた俺たち一向。

…ローブでも体型はカバーしきれておらず、大丈夫だとは思うが、魔法のまの字も知らない俺は今や、赤子同然。いないかも知れないが、オークやらゴブリンやらに襲われて、子どもには言えないような目にあっても仕方ない。


と言うわけで、お外で魔法をリーファさんに教えてもらいましょうってなわけです。やっぱり最終地点はF◯とか◯Qとかの魔法まで行きたいよねえ。


「こほんっ。良いですか。アイリス様。」


「なに?」


「アイリス様は現在、魔王に最も近いと言っても生まれた鳥のように飛び方もわからぬ子ども。先ずは羽を動かす方法を知る必要があります。」


なんか、回りくどいっすよ?

リーファさん。


「魔法は魔法陣に魔力を満たして、七代元素を掛け合わせて、エレメントを作り出すもの。火、水、雷、風、地、そして、命と死。この世界を作る七代元素を掛け合わせて、魔法となる素を作り出すのです。例えるなら、上質な小麦粉とイースト菌で美味しいパンを作るように…あっ。」


「…お腹空いてるんですね?」


意外と俺の作るご飯が気に入られたようだ。俺が指摘するとリーファさんは顔を赤くして、そっぽ向いてしまった。

…最早、見慣れた光景だ。


「こほんっ!!とーにーかーくッ!!…強い魔法を使う為には、良質なエレメントを扱う必要があります。扱える魔力、エレメントの質、量は生まれてきて決まるものですが、アイリス様ならそれらのことは考えないで良いです。底知らずの魔力量、大抵の魔法なら体得すれば扱えるでしょう。」


…えらく過大評価されているようだ。

豊満…と言えば豊満だが、それは見た目の話。魔力量は感じ取れない。それにエレメントか。確かに起きた直後から、何か色のついた光が空中を飛んでいる…と思ってはいたが、それがエレメントとはわからない。


「…では、見ててください。」


「ん?」


リーファさんが右手に見える木に手を翳す。距離はあれど、木はそれほど大きくは見えない。リーファさんは目を閉じる。

…俺に見える。微かに彼女の周りに水色の光が渦巻き、天空へと伸びる。何が起こっているんだ…?


「『氷雪の息吹(スノーブリーズ)』」


「っ!?」


その瞬間、目を疑った。俺は初めて、異界に来たと実感した。リーファさんの詠唱と共に吹き付ける冷風とわずかながら発生する吹雪。それが、先ほど狙っていた右の一本の樹木を簡単に切り裂いた。

斜めに切れたそれは重力に従ってずり落ち、断面は鋭利な刃物で両断されたかのように滑らかだった。


「…なんなんだ。今のは…。」


「これが魔法です。私は戦闘向きではないので、こういう魔法は苦手です。故にこんな下位魔法しか使えませんが…貴女ならば。」


…もっと上位の魔法も使える?

しかし、ベルト見つけてすぐ変身できるじゃなしに、そうポンポンと出せるものじゃないだろう。


「…ま、やってみるか。」


「あまり本気は出さないよう…。この森林が目立てば、魔王どもに目をつけられてしまわれます故。」


「はいはい。」


…とはいえ、ゲームのようにコマンドが出るわけではない。とりあえず、リーファさんの動きを真似てみる。右手を虚空に翳し、頭の中で魔法陣を形成…。


「そのまま。エレメントを中に込め、射出するイメージで。なんでも良いです。火球でも、雷球でも、水泡でも。玉を込め、飛ばす…パチンコや銃のイメージで今は補完してください。」


「…そう言われてもな。」


…難しい。

鳥の羽音、虫の羽音、風の音、揺さぶる葉の擦れる音。なんだが、心臓が熱いな。初めてのことだとここまで疲れが増すのか。


「ひどいお顔ですね。まるで悪夢にうなされているようです。」


「…慣れない体で慣れないことをするもんじゃないぜ…。」


俺の手のひらから拳大の風の球が出る。風の球はそのまま前方へと飛んでいき、破裂。目の前で大きな竜巻を作り、周りの砂利、草を巻き上げ、木を切り倒した。

…割とセーブしたつもりなのだが…。

リーファさんがわなわなと震えている。


「や…。」


「や?」


「やりすぎですゥゥゥゥゥッ!!」


「ムギャッ!?」


…頭をぶん殴られた。痛い。

その後は小一時間説教された。足が痛い。ずっと正座なんてそんなアニメみたいなこと、あるのかよ…。


「…はぁ…。」


結局、此処でも勉強か。

あの説教事件の後、リーファさんは人のいるとこまで行って買い物に。俺は少しでも魔法について学んでおくため、書物を読み漁っていた。


「…しかし、魔王になれ…か。」


向こうではただの平社員だった俺が転生先で女で目標は魔王とは。昔の俺なら、鼻で笑っていたな。無知故の傲慢。ひどい話だ。


そう言えば、こんな森の奥に居館を構えているわけだが、人が居る場所で買い出し…近くに街でもあるのか。そして、その街やらなにやらの文明はどこまで発達しているのだろうか。


「…少し、周りでも偵察しに。『幻影の蝙蝠(シャドウバット)、行ってこい。」


影の蝙蝠『シャドウバット』を作り出し、いくつか飛ばす。というか、どこまで飛んでいけるか…という実験も加味して、偵察機代わりに窓から飛ばす。


…そして、目を閉じてみる。蝙蝠の視界と自身の視界をリンクする。うん、VRみたいな感じだ。少々、緑がかっている感じもするが、わりかし、見やすい方だろう。


うむ。森しか見えない…。

人間のにの字も無いぞ…。文化らしい文化も…。というか、集落すら無いな。生き物らしい生き物も…。鳥か、虫か…ん?


「…犬?」


狼か。森の奥に集落を構えている…のか?

先ずは彼らを仲間につけるのはどうだろう。帰ってきたら、話してみるか。

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