第2話『ご大層な目的』
ギャグあり、シリアスありの感じがいいよね。
とりあえず、此処までわかったことを並べてみよう。俺はクソみたいな会社のせいで疲労やらなんやらで死亡。その後、女神様と出会い、なんやかんやで転生した……。
と思ったら、ボンキュッボンの超スタイル抜群のチャンネーになってたと。で、性転換やらなんやらでなんか、頭がごちゃごちゃになってると思ったら、その…女神様が俺とは真逆のスレンダーな活発少女になって、更には俺のお世話係改め、監視係に上の神様に遣わされた…と。ま、大人な遊びはダメだもんね!!
…で、今、朝ご飯…をその女神メイドさんに作ってもらっているところ…だが…。
「…なにこれ。」
正直、その言葉に尽きる。てか、ホントになにこれ…。木のボウル?皿の中で、青紫のスライムみたいなやつが蠢いているんだが…?
人の食べるものじゃないんだが?
俺はメイドさんを睨む。メイドさんは苦笑いで俺から目を背けた…。
「…料理は…得意ではないのです…。」
「不得意のレベル超えてるでしょ…。これ…。」
…なんか魔界のエネルギーみたいなやつでも影響…とかしてないの?
『いぬのえさ』やら『ねこのえさ』とは違うんですよ?マヨラーやら糖尿病のアレ、食ってる方が…まだ…マシじゃあねえな。
てか、ほんと、なにこれ。
顔みたいなんでてきましたけど?ケラケラ、笑い出しましたけど?…怖え…。
「…とりあえず、俺が作るわ。」
「あっ…。別に捨てなくても…。」
…こんなゴミにそこまで傷心しなくても…。
なんか、内股でモジモジしてるし…。
とりあえず、俺は台所に立つことにする。炊飯器…はないから、飯盒炊爨か。
あれね?キャンプとか、家庭科の授業とかで使ったあのアルミのやつね。
後…冷蔵庫みたいなところにあるのは、味噌、煮干し、豆腐、油揚げ、榎茸、玉葱…結構あるな。じゃ、チャチャと作っちゃいますか。
「…良い匂い。」
さて、対面に座る女神様にご飯と味噌汁を振る舞う。ってか、それを作れと言わんばかりに用意周到。女神様も御満悦な…あ、こっち見てそっぽ向いた。意外とツンツンしてるんだよなあ。
「あむ…ん!!美味しいっ!!…なんか、悔しいですね。」
「このぐらいは当たり前だ。」
一人暮らし歴、舐めんなよ。
…と、女神様、そんなに睨まんでも良いじゃねえか。
「しっかし…。」
…この屋敷、妙な場所だ。周りを見れば、右には何もない平原、左にはまるで森。奥まではわからないが、今のところ、人の手手付かずの場所と言っていただろう。
フロアは2階。俺の最初にいた恐らく、このカラダの部屋。下に降りて右手の廊下を真っ直ぐ行って突き当たり。そこが今いるキッチン兼食堂。
…なるほど。これだけでも相当な有権者に割り当てられた…と。まぁ、女神様と暮らすには上等な屋敷か。
「ん…当然ですよ。私、女神ですよ?」
そんな胸張らなくて良いの。しっかし…初めて会ったときのあのメロンは何処に?
「…変態。」
女神様のジト目、頂きました。
…てか、今の状況を説明して欲しいんですけど。女神様。
「…その前にそれ、やめません?女神様、転生者さんって言うの。」
「あ?…名前が必要ってことか?」
「そうですよ。…そうですね。私はリーファ…とでも良いですかね。髪の色も緑ですし。」
髪の毛クルクルして、言われても…。
名前か…。
髪の毛、緑でリーファ…なら、俺は紅だから…無難にスカーレット…とか?
…そんな睨まんでも。
なんか悪い?スカーレット。…じゃあ。
「…アイリス。」
「…『虹』ですか。貴女は色でしか考えられないんですか?」
…良いだろ。そんなジト目で対抗しなくても。俺、こういうの苦手なんだよ。リーファも相当だぞ?
「むっ。なんですかッ!!私も別に得意じゃないですし…。それで、転せ…アイリスさん。なにから教えましょうか。」
「…ん?そうねぇ…。」
…教えてくれると言うなら、ピンからキリまで聞かないとな。
「…ピンからキリまで…ですか。先ずは、アイリスさん…いえ、アイリス様の立場をお教えしましょう。」
「あん?立場?」
…珍しく、女神さ…リーファさんが真剣な顔をして、此方を見る。食事は既に空。空は恐ろしいほどの晴天。なにか、面倒ごとの可能性もあるが、仕方ない。
「この世界では、アイリス様は世界屈指の大魔法使い。七代魔王に最も近い存在と畏れられてます。」
「待て待て待て…。その…七代魔王…ってのは、なんだ?」
…リーファさんの目的も去ることながら、この世界、そして、七代魔王…俺と言う存在。一体、何がなにやら…。
「七代魔王はまだ情報が不確かなため、どれがどれとは言えません。ただ唯一。七代魔王の一人、〈傲慢〉ルシフェルのみ、死亡を確認しています。貴女にはこの世界の均衡を覆し、この世界を統一する。どのような形であろうとも。」
「…俺に魔王になれ…というのか。」
リーファの顔が少し暗くなる。
…魔王になるなどよくわからないが、俺は俺で楽にやらせてもらえる…ってことか。
「ええ。此処、元ルシフェル領で貴女様の名を広めていただき、七代魔王の一角、傲慢の座を確立し、他の魔王を攻略して、この世界…ジャングリラの唯一神の座を確立して欲しいんです。」
「…なにそれ。」
ご大層なお話だ。普通の会社員から神様になれとは…。ん?てことは、俺が今度の女神様…ってこと?女神アイリス…良いかも。
「ま、変態さんには無理ですけどね〜。」
「うぅ…うっさい!!」
…骨が折れそうだ。