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第15話『奴隷エルフ』

「こちらで御座います。我が君。」


「その我が君っての…なんだ?」


「我が君は我が君で御座います。」


…なんか、痒いんだよなぁ。それ。

なんとか名前で呼んでくれないものか…。


「なぁ、名前にしては…。」


「我が口で我が君の名を呼ぶなど、あってはならぬことっ!!例え、命令であろうともっ!!至高たる御君の名を私のような一介の死神が呼ぶなどっ!!」


「でも、痒いんだよッ!!良いから名前で呼べっ!!これは命令だ!!めーれいっ!!」


「嗚呼…我がマスター、アイリス様っ!!このグリム、名をいただくに飽き足らず、我がマスターアイリスの名を口に出来ること、身に余る幸福でございます。」


…なんかうっとりしてるし。

変なやつを仲間にしたものだ。

残念イケメン…ってやつ?前世(向こう)にいたら、ストーキングでもするのではないか…?


「アイリス様。着きましたよ。」


「ん?…あぁ。」


コイツのせいで目的を忘れかけた。

俺は指さされた檻の前に行く。そこには目を奪われるかの如く美しい金髪ロングの緑眼の少女がいた。エルフ特有のツンっとした耳もある。


「この子は…。」


「エルフの精霊王リューゼンの娘です。生まれた時に奴隷商人に拐われ、リューゼンに一度は取り戻されたものの、リューゼン死後、奴隷商人に再び拐われました。現在は母メーデルが死に物狂いで探しております。」


「…それってさ。仮に俺が買い取って、エルフの里に連れて行っても殺されない?」


「大丈夫ですよ。仮にそうなろうとも我がマスター、アイリス様に手が及ぶ前に私が根絶やしにしますので。」


…やだ、この子。笑顔でとんでもないこと言う。


さて…コイツの話がほんとだとすると、この子はエルフのお姫様となる。どうするか…。


「グリム。この子を貰おう。」


…とりあえず、こうでもしなけりゃ話は始まらない。周りも表向きは市場のように賑わってはいるが、商品は殆どが人や生物だ。その中でも彼女は割と綺麗にされている。…つまりはそう言う目的で売られているんだろう。


「了解です。表向きとして、8ベルクスもらいます。」


「ほら。」


俺は8ベルクス(16000円ほど)を支払い、グリムが扉の南京錠を開ける。扉が開き、艶やかな金髪を持つ彼女をグリムは連れてくる。


「此方のご婦人が今日から貴様の主人だ。」


「…妾が人間などに靡くと思うなよ。下賤め。」


…あら…人は見た目によらないってのはほんとみたいねぇ…。清楚そうな見た目だが、俺とグリムの二人をきっと睨むその姿はまさしく、ワガママ姫といったところか。


「…貴様。我が至高の主人とあらせられる虹の魔女アイリス様に下賤とは…死を覚悟しろ。」


「…人に汚されるくらいならばそれぐらい造作もないわ。妾はエルフの精霊王が娘、メーデル2世であるぞ。妾を殺すことはこの森のエルフを敵に回すことになると思え。」


…別に汚すことはしないんだけれど…。


「あ、あのさぁ…。」


俺の声に反応してか、エルフの娘、メーデル2世と名乗る少女はきっと此方を睨む。流石に容姿端麗だ。全国男子諸君のエルフ像を具現化したような胸部がふくよかなタイプのエルフちゃんです。


…こういう目で見てるから、警戒されるんだろうな。


「俺はお前をどうこうするつもりはない。ただ、お前にエルフとの交友関係を結ぶ架け橋になって欲しい。」


「…貴様、正気か?妾ら、エルフは決して他の生物に靡くことのない威厳ある種族。それと友好関係を築くなど…マカの森でも占領し、魔王にでもなるつもりか?」


「…そのつもりだ。」


…俺の言葉に目を白黒させるメーデル2世。その後、口を押さえて、笑い出した。…何がおかしいんだ?


「アハハハッ!!何を言うかと思えば、魔王になるつもりで妾に声をかけた…だと?ふざけた凡人め。妾は二度と魔王という人種を見とうない。妾はエルフの里に帰る。もう二度と妾に構うな。」


「…貴様、生きて帰すとでも思うのか?我が至高の主人を愚弄したこと、あの世で後悔しろ…!!」


「待てッ!!グリムっ!!」


「はいっ。」


…危ない、危ない。

こんなとこで殺したりなんかしたら、二度とエルフとの交友関係なんて無理ゲーになる。


…てか、今のグリム、殺気丸出しかと思えば、すぐピンっと止める…犬みたいだな…。


「…終わったか?ならば、妾は帰るぞ。」


「…お前、魔王という人種を二度も見たくないって言ったよな?どういうことだ。」


「…そのままの意味だ。妾は魔王ルシフェルと会ったことがある。」


…なるほど。

この子は俺の知らないルシフェルという男を知っている。それだけではない。俺の隣にいるグリムも、ルシフェルを知っている。成すべきことがあるのなら、過去を知ることが近道…だ。


「何者なんだ。ルシフェルってのは。」


「…その男の話を妾らエルフはしない。他を当たってくれ。」


「待て。…お前の主人はこの俺だぞ。何処にも行かせない。」


「…なんなのだ、貴様は。妾は先程、帰ると言っただろ。貴様のような愚女の話はもうウンザリだ。このまま、帰らせてもらう。」


…何を言っても無駄か。

だが、無理矢理、強引に連れ出しても…なぁ…。余計、警戒されてこの話が頓挫してもダメだ。この性格ならその可能性が一番高い。

とはいえ、俗に言う洗脳や呪いみたいなスキルは持っていないし…。


「おいっ!!」


「…ん?」


…囲まれた?

14、5人ほどの男たちが俺たちを囲む。どう見ても銃やら何やらをもって武装しているのが丸わかりだ。


「その娘は俺が予約されたものだ。なぜ出ている。説明しろっ!!商人っ!!」


…なんだあれ。

小太りの髪をくるんっとさせたお世辞にもかっこいいとはいえない男が騒いでいる。


「おや、キール伯爵殿。これはこれは…。約束の日は本日でしたか?まさか、リザーブされていらっしゃるとは。私、聞かされておりませんでしたので、此方の御婦人に言い値で売らせていただきました。もはや、このエルフは、此方の御婦人のもの。貴方様が何を言おうと、我々は無関係でございます。」


「なっ!?」


…グリムが冷静に突き放す。

問題を起こさないように…してたが、こんなことになるとはな。俺はエルフを守るように少し身を引く。


「なっ!?…貴様などに守られなくとも妾は!!」


「…俺が困るんだよ。あんな奴にアンタを渡したくはない。」


「ふんっ。それは貴様がエルフと交友を結ぶためか?ならば、お門違いだ。妾は貴様に手など…。」


「違うよ。…お前はもう俺のものだ。俺は勝手でね。手を貸す、貸さないは後でいい。今はお前が傷つかないかどうかが心配だ。」


「…貴様。」


「こう見えても俺、強いから。」


…さて、あの伯爵とやら。

かなり頭に血が上っているな。グリムに軽くいなされたのが、プライドを刺激したか。


「…くっ!!俺のメーデルちゃんと仲良くしやがってぇぇ…!!やれっ!!この二人を撃ち殺せッ!!ここで起きた事は上にはわからぬッ!!人死が出ても、俺が揉み消してやるッ!!謝礼金も多く弾もうッ!!早く、殺せッ!!」


…男の怒号に反応するように男たちが銃口を向ける。しかし、四方八方がこれでは彼女を連れて逃げられない。もはや、戦闘は避けられないか。


「ご安心下さいませ。我が至高の主人、アイリス様。」


「グリム?」


グリムが此方に微笑み、仮面を取り外した。グリムの左目…開眼はしているが深い斜めの一閃の傷跡ができていた。


「…此処はこのグリムめにお任せくださいませ。アイリス様の手は煩わせませぬゆえ。」


「…貴様ッ!!思い出したぞ…!!貴様は…!!あのッ!!」


怯える伯爵にニヤリと笑うグリム。

…なんか俺、この子が怖くなってきたよ。

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