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第12話『嫉妬の女王』

〈帝都デュランダル跡〉


「…ククッ。ほう、我が友よ。魔王マモンドに勝ったか。鼻が高いぞ?」


荒廃した都。人ではなく、魔物の巣窟と化している。

かつては最強の勇者を生み出したと崇められていたが、人々の移り変わりや勇者の死亡により、魔物達の侵攻に都を移すことを余儀なくされた。

現在は憤怒の席、サンタナ・ランフォーレ率いるサンタナ兵団の拠点となっている。


サンタナのいるデュランダル城跡はあらかた片付けられ、デーモンやガーゴイルなどの飛翔する魔物が跋扈する…呪われし場所とも恐れられている。


サンタナは玉座の間にて、足を組み、兵団の魔物からアイリスについて聞いていた。所謂、良いニュースというやつだ。


「…マモンドの野郎、ざまぁみやがれだ。」


「…おい。サンタナ。」


「レヴィアン。なんだ。来たのか。」


室内に入ってきたのはレヴィアン。

黒色の室内に目立つように白銀の鎧が目を引いた。


「…しかし、ここは何なのだ。魔物に全てを任せて、動かない。怠け者めが。」


「効率化してんだよ。お前も似たようなもんだろが。」


「私の領地は人と魔物が強制している。故に帝都も私の領地を選んだ。貴様の領地では戦火に焼かれかねないからな。」


「…帝都デュランダル…か。」


「…?」


「レヴィアン、後ろを刺されんなよ?」


「…ふんっ。私がか?」


「…人間ってのはそう言う生き物だ。呼び出しといて、人を化け物と称す。全てを道具として使う…愚か者の集団。…特にお前はいろいろと価値が高い。愚かな人間どもは狙いに来る。それが帝都に住う闇だ。」


「…ふんっ。私の領地は…確かに女ばかりだ。狙いに来るのは仕方ないかもしれない。だが、時に女はどの豪傑な男よりも強い。舐めるな。」


「へいへい。」


…出された紅茶を悠然と飲むレヴィアン。

付き人も無しに来ているところを見るとかなりサンタナを信用していると見える。


「…一発、やるか?」


「馬鹿言うな。私が負ける。」


八重歯を見せ、ニヤリと笑うサンタナ。それに対し、クールなレヴィアン。

二人の会話と共に外の空気が歪み、どんどんと天気が荒れる。雷雲に豪雨。瓦礫を吹き飛ばす暴風。


「おいおい。やる気満々じゃねえか。」


「…ここで貴様とやるのは良い。だが、やる意味がない。私は戦うのは好きではないからな。」


「…俺たちは同じ穴の狢なんだよ…。お前は俺が我が友を認めた…それに至った経緯を知りたいのだろう?だが、俺は教える気はない。…それが意味だと思うが?」


「…はぁ…。馬鹿が相手だと疲れる。」


「表へ出やがれ。…少し遊ぼうぜ。」


サンタナに連れられ、外へ出るレヴィアン。手には大きな青い三叉の槍を持っていた。


「…いつでも来い。私は逃げも隠れもしない!!」


「さぁてっと。…行くぜ、『イグニート・バルスト』ッ!!」


火球を打ち上げ、雲ごと上から降り注ぐ大量の熱線。


それをレヴィアンは華麗に避けていく。


熱線は雨を蒸発させ、コンクリートを溶かしていく。


「…馬鹿が。『ジエロ・バルブレス』ッ!!」


それに対するは氷の薔薇。


雹のように鋭く、花粉を飛ばし、炎の熱線をかき消していく。


「散れッ!!『コキュートス・ベルベット』ッ!!」


指パッチンと共に薔薇は花弁を四方八方へと飛ばす。


その一枚の大きさは帝都デュランダル城跡をゆうに超える巨大なもの。


それをサンタナは簡単に切り裂く。


「ククッ…。やるじゃねえか!!お嬢様ッ!!」


「…ふんっ。よそ見をするな。『ブレスオブギアチャイオ』ッ!!」


「『ブレスオブインフェルノ』ッ!!」


レヴィアンの放つ吹雪の塊。それは溶けたコンクリートすらも硬め、空中の水分すらも凍らせる。


対して、サンタナの放つ高音の熱風。ぶつかり合い、帝都跡の空を二つに分けた。


「…くっ。」


「おいおい!!どうしたァ?レヴィアン。」


二つの魔法は空中で光の粒子になる。

その時間は放ってから10分はかかった。


「…やっぱり…お前との戦いは嫌いだ。」


「はぁ?今更何言ってんだよ…。」


「疲れるのだっ!!お前だと…余計にな。」


「はぁ…。めんどくせ。気晴らしだろうが。テメェがなんか迷ってんのははなから見え見えだ。」


「…貴様に相談するようなことではない。」


「へいへい…そうですか。うーんと暴れて、少しはその肩の荷…降ろせよ。昔みたいに。」


「…っ!?…何も変わらぬな。貴様は。」


「あっ。土産はねえぞ。帰えんだったら…って、もう居ねえじゃねえか。生きづらそうなやつだなぁ…っと。」


…独り言を呟いて、城の中へと帰っていく。

嫉妬の炎と憤怒の炎のぶつかり合いはよくあること。それ故に憤怒の領土には人は近づかない。来るもの拒まず、去るもの殺す。それが憤怒の領土の流儀なのだ。





























「ふぅ…。」


「ややっ!?姉さん!!どうしたんですか!?汗だくで。」


嫉妬の領土。

輪廻会館…レヴィアン達が住う場所。此処は男子禁制であり、大きな館には総勢60000人の侍女やらなにやらが住んでいる。


「ロンド…。」


「はいっ!!深海兵団第二兵士ロンドです!!」


敬礼するのはサハギン、『ロンド』。

ワカメのような深緑の長髪に、青い鎧をつけているのが特徴的でそれ以外は普通の人間っぽい。


「…すこし、馬鹿者の相手をしていてな…。」


「サンタナ様ですか?でも姉さん、それが楽しいと…。」


「…いつ、そんな話をした…。私はそもそも争いは嫌いだ。」


「サンタナ様のこと、どう思ってるのですか?」


「…どうもこうもない。馬鹿だ。私が止めねば暴走する。」


去る主人の背中を見て、ロンドは思った。

お似合いだなぁ…と。

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