第10話『襲来』
「グルル…。」
…こりゃひどい。
さっきまで画期づいていた牙竜の里が…。
家には火がついてるし、リザードマン達も頑張ってるけど、ボロボロだ。子ども達は路地裏に隠れてるし、竜人族も然りだ。
「…へぇ。あいつが。」
「クルハハハッ!!テメェが魔王になるとか言ってるアマか!!俺の名はオーガ族、強欲の席、マモンドである!!」
…天空に飛ぶカオスドラゴン。その背に乗る斧を持った肌のよく焼けた金髪の男、マモンド。
間違いない、サンタナの言っていた男だ。
…面倒くさいなぁ…。
カオスドラゴンって言っちゃあ、アンデッド族のAランクモンスター…。
ハンター達でも簡単には攻略できないレベルだ。
※モンスターはCからSS、更にその先まであるよ。魔王達は全てそれ以上になるんだ!!凄いね!!
「言ってる場合ですかっ!!」
…はい、すんません…。
「クルハハハッ!!…ただの魔女が調子に乗りおって!!ルシフェルのように、ウィザードロードなら話は別だが…貴様はたかだかレベル5の雑魚ではないか!!
貴様に傲慢の席はまだ早いわっ!!」
「…レベル…5?」
初めて知ったぁぁぁ…。
この世界、レベルなんて概念あったのね…。
てか、あの男、声でかいな…。
カオスドラゴンにも負けてない…。
「…やれ、カオスドラゴンッ!!」
カオスドラゴンの咆哮…ってか!!あれ、やべえの来るな…!!
「『フルバリア』ッ!!」
牙竜の里、全体を守るドーム状のバリア。
動けねぇ…けど!!動く必要はねえッ!!
「…グルル…。お客人…。」
やっぱり、アイツの狙いはこの牙竜の里を俺ごと吹き飛ばす事だった。竜の咆哮が牙竜の里ごと包み込む。
…バリア系は使った事ないんだけどなぁ…。
「クルハハハッ!!吹き飛べ、雑魚魔女ッ!!」
「チッ…!!」
あの声デカ男ッ!!調子乗りおってからにぃぃぃ…!!
…はぁ、やっと終わった…。
疲れたぁぁ…。
「…ちぇっ。まさか、カオスドラゴンの咆哮をあんなバリア如きに全部、塞がれちまうとはな。」
周りの湿地が少々、干上がっている。
食らっていたら、リザードマンごと消し去っていた。
…強欲の席、マモンド。
こういう最初に来る敵って、大体、弱いってのが鉄則なんだけどなぁ…。
あのドヤ顔、ムカつくわァァァ…。
絶対悪、みたいな。
「…グルル。」
「おい、ランドル。」
ランドルが俺の前に出る。
薙刀も構えているようだ。
…まさか、闘うつもりじゃねえだろうな?
カオスドラゴンはともかく、マモンドは張り合えなさすぎる。
俺でもビシビシ感じる大物感。
こりゃ、やべえな…。
「クルハハハッ!!…ンダァ?トカゲ野郎。そんなイカつい顔してよぉ…。」
「グルル…。お客人…いえ、アイリス殿。」
「…なんだ。」
ランドルがかしこまって、俺の名を言った。
…やる気なのか。
「…グルル…。里のもの、護っていただき感謝する…ッ!!」
「オイッ!!ランドルッ!!」
ランドルが急に走り出す。
皆が見る中、ランドルは飛び上がり、一言…。
「…『斬竜爪』」
「なにっ!?」
カオスドラゴンの腹に薙刀を突く。
稲光が発生し、カオスドラゴンは悶え、上に乗っていたマモンドは転げ落ちた。
「ちぇっ…。やるじゃねえか、トカゲ野郎。」
「グルル…。」
「…睨むつうことはどういうことか、わかってるだろうなッ!!」
…そのドヤ顔、崩さねえのかよ。
白い竜の腹に傷が出来ている。あの一撃、それほどのパワーがあったって事だ。
「やるじゃねえか。ランドル。」
「グルル…。これでも…族長、舐めないでくれ。」
「ちぇっ…。我々、極竜会。舐められちゃ、困るぜ。せっかく、レヴィアンの所まで行って、借りてきたつうのに…。」
髪を掻き上げ、したり顔で言うマモンド。
「…リザードマン、総勢3000人ッ!!竜人族、総勢2000人ッ!!その族長、ランドルの名において、この先、一歩も通さぬッ!!」
天に槍、薙刀を突き上げ、吠えるリザードマン。それを陰から見る竜人族。
…あぁ。そう言うことね。
「マモンド。お前が狙ってんのは、俺一人だろ?」
「…クルハハハッ…。やる気…てか?」
「牙竜の里は俺の領地だ。勝手に攻撃されてはこっちも黙ってはおけない。」
…さて、やるしかないよねぇ…。
でも、マモンド相手にどうするか…。
「…ステータス、オープン。」
「…リーファさん?」
隣にいたリーファさんが手を翳して、そう呟く。
すると、奴の周りに数字…やら、文字やら…。MPにHPまで…。なんだこりゃ。
マモンド
種族名:オーガ
LV25
HP:2500/2500
MP:1250/1250
スキル:『雷魔法』LV2 『雷耐性』LV1 『強欲』LV5 『破壊衝動』LV3
…スキルなんて初めて見るぞ。
どゆこと?
「実戦は初めてですからね。コボルトやリザードマン達は戦いというより試合に近かったですから。」
「…なるほどな。」
…魔王にしては弱いステータスだ。
もっとこう…うん百万とか…カンスト!!とかじゃないんだな。
「…実力者ほど、ステータスを偽ることが出来ます。ですが、彼は偽ってないようですね。破壊衝動ってスキルがそれを補っているようです。」
「へぇ。なるほど。で?俺は?」
アイリス
LV5
種族:魔女
HP250/250
MP60000/60000
スキル:『炎魔法』LV2 『水魔法』LV2 『雷魔法』LV2 『地魔法』LV1 『守護魔法』LV3
…HPひっく!!
なにこれ、瞬殺じゃん!!
いや、攻撃力とかまだわからないからいいけどさッ!!
「…すみませんね。人に見せようとすると明確な情報は出せないんですよ…。」
「いや、リーファさんが役立たずってわけじゃないから。」
「やくっ……。そうですよね…役立たず…ですよね…。」
落ち込まなくていいからっ!!
「クルハハハッ!!おいゴルァァァ!!俺を無視するんじゃねえぞッ!!アマどもッ!!」
「うるっさいなッ!!後で構ってやるから、今は待ってろッ!!」
「待てねえよッ!!ここ、ジメジメしてイライラするんだよッ!!…アイリス、おっ始めようぜッ!!『サンダー』ッ!!」
雷の玉を俺に向かって打ってくるマモンド。
俺はそれをバリアでガードする。
…てか、危ないなッ!!
雷耐性がある以上、雷系の魔法は使えない。ヤバイぞ…こりゃ。
俺はとりあえず、空を飛んで相手から距離を取る。
「クルハハハッ!!逃げてばっかの兎になにができるっつうんだよッ!!」
ムッカァァァァ!!
あいつ、殺す、絶対殺すッ!!
「『サンド』」
俺は湿地に砂の山を作り上げ、そのまま相手を閉じ込める。
だが、マモンドはそれを横薙ぎの一閃で砂の山ごと切り裂く。
「クルハハハッ!!上級魔法の力を見せてやるぜッ!!『ライトニングサンダー』ッ!!」
「いっ!?」
スピードの増した稲妻が俺に向かってくる。
間一髪で避けたが、髪が掠っちまった…。
なんだよ、アレ。
死の危険を感じたぜ。
「クルハハハッ!!テメェは俺には勝てねえよ。」
…たしかに、正直言ってアレはキツいな…。
殺されかねねえ…。
俺の体力じゃ尚更だ。
回復担当のリーファさんも竜人族を守ってるしなぁぁ…。
「…しゃあないなぁ…。」
「クルハハハッ…あん?なに言って。」
「…魔王ってのは馬鹿みたいに強いらしい。だが、俺もそれを目指してる。だからこそ、ここでアンタに負けるわけにはいかないんだよッ!!
『クレイドサンド』っ!!」
…水魔法+地魔法。
即席の泥魔法といったところか。
四肢のように自由に湿地の泥が魔王マモンドの体を触腕のように絡め取る。
「クソッ!!ンだよ、これッ!!」
この湿地なら際限なくやれる。
そのまま、ぶん投げる。
「どうわぁぁぁッ!!」
キラリーン…っと。
空までぶっ飛ばしたぜ!!
あのドヤ顔野郎、弱かったなぁ…。気持ちいいぜ。
さて、帰りましょうか。