転生して名もなき雑草になりました。正式名称はアランフィオレンティーナといいますが、誰も呼んでくれません
私は雑草である。
どこにでも生えて、抜いても抜いても生えてくる、しぶとい雑草と呼ばれている。
草として目覚めた時は、そりゃあ驚いたし、前世の意識があったから正直狂うかと思ったよ。手も足もないから、動けない。まさに植物状態、草だけに。誰とも会話できないことが、辛いことなのだと思いしらされたね。
でも、私は強くてね。
根っこが少しでも残っていれば、再生可能な強靭な生命力と、寒さ暑さもへっちゃらな環境適応能力があった。しかも、転生したためか草にあるまじき、異例の固有スキルをも持っていた。
吸収、といってね、いろいろなものを少しずつだけど、自分のものにできるんだよ。
私はね、長く、長く、生きたんだよ。
そして、根っこを、のばしにのばしたんだよ。
何百年、何千年、もしかすると何万年かも?もう時間なんて意味がないぐらいに。
私の上で、魔王と勇者が戦ったこともあった。
古竜の争いも、人間の大戦も、いろいろな戦が私の上でおこなわれ、その血や骸を吸収した。
私は、大都市にも辺境にも、どこにでもいる。
そう、大陸全土が私、一つのアランフィオレンティーナなのさ。誰も知らないけどね。
大陸全土が、私の胃袋ってことを。
あー
あの子可愛いな。とっても美味そう。
私ね、スキルがふえにふえて、一瞬で喰えるようになったんだ。ふりかえると、もういない、ってね。
いただきます。うまーっ。やっぱり子供は柔らかくて、いいね。
なァ、最近さ行方不明って多いよなァ。
ああ、この間は王宮から王子が忽然と消えたって。
こわいよなァ。