聖女と伝説の賢者ならぬ愚者の噛み合わない会話
聖女は後悔していた。
伝説の賢者ならぬ愚者に拝み倒されて一緒に食事に出かけたのだが、この愚者は、とにかく言葉が汚い。
特に気になったのは、『非常に』を『クソ』と表現することだ。
『クソ暑い』
とか
『クソうるさい』
とか口にする。
しかも、食事中に、
「ここのカレー、クソうまい!」
と大声で言われた時には身が縮む思いをした。店主も他の客達も一斉に冷たい視線を投げ掛けて来たのは言うまでもない。
聖女は、食べ終わると、
「もう出ましょう」
居心地が悪いので、すぐに店を出た。
店を出ると、伝説の愚者は、
「あー食った食った。クソ食ったよ!」
と、まあ、クソでかい声で言いやがった。完全に別の何かを食べたと勘違いされること必至だろう。
「ちょっと、声が大きいし、もうちょっと上品な言葉を使えないんですか?」
「ええと、ゴメン。でも、マジでクソ腹いっぱいで」
多分、愚者は聖女の言葉を一切理解していないだろう。
聖女は愚者のことを何とも思っていなかった……と言うか、むしろ、この一件で軽蔑していたが、対する愚者は聖女を何とかモノにしたかった。憧れていたのだ。
それこそ、話が一気に飛躍するが、ここで一発したいと思っていた。
ただ、彼なりに緊張していた。
そして、言い放った言葉が、
「俺、(聖女様と)クソ(Hが)してえ!」
緊張の余り、言葉が部分的に抜けていた。
ただ、これを聞いて聖女は、文字通り愚者が排泄をしたいと捉えた。
「何よ。ちょっと声が大きい」
「してぇものはしてえ! しょうがねえだろ!」
「じゃあ出せば。したければ、すればイイでしょ!」
「へっ?」
「我慢は健康に悪いわよ?」
これを聞いて愚者は、
『もしかして、ここでヤラセてくれるのか?』
と勘違いしたのは言うまでもない。そして、愚者は、
「じゃあ、あの宿でイイか?」
と宿泊以外に休憩もアリの安宿を指さした。
一方、聖女は、
『何で私にイイかどうか聞くんだろ?』
と思ったのは言うまでもない。
「じゃあ、あの宿に入るぞ!」
「いってらっしゃい。じゃあ、私は帰りますので」
「えっ? 聖女様も一緒に来るんじゃねえのか?」
「何故、私が一緒に行く必要があるのでしょうか?」
「一緒に来るんだろ!」
愚者が聖女の袖を掴んで強引に引っ張った。
「キャー! 何をするんです!」
聖女は、当然抵抗した。
丁度ここに兵士が通りかかった。そして、
「この愚か者。何をするんだ!」
愚者は兵士に捕えられた。
一言、『クソひどい』と言ってやってください。
さすがに、これをラジオで流すわけには行きませんよね?
クソ汚い話ですみません。