第六話 呪い蔓延る村
「もうすぐに着くぞ。降りる準備をしろ」
小麦畑を超えた先に円村が見える。近くの川はキラキラと光を乱反射させている。鳥のさえずりがどこからか耳に入る。この静かで簡素で素敵な村がデントストーン村だ。
「今から依頼主の村長に会いに行く。今回我々は表向きは依頼を受けた冒険者という事になっている。くれぐれもボロを出さない様に」
各々が返事をしえ、馬車から降りた。
依頼主である村長の家に着いた。村長は村の広場の近くにあった。家の前にいた人物が話しかけてくる。
「遠くからわざわざありがとうございます。私はドロイドと申します」
村長らしき人物が挨拶をする。年齢は50歳くらいだろうか。長い白髭が特徴的だ。
「立ち話も何だ。是非中に入って下さい」
「お邪魔します」
村長の家は簡素ながら広かった。村長はオリビアたちを席に座らせて話を始める。
「依頼のことですが‥」
「既にギルドの方から聞いています。新型のモンスターと謎の呪いの調査ですね」
「はいそうです。どうにかなるでしょうか?」
「ギルドの方から聞いてはいますが詳しい情報を教えてくれませんか?新たな情報があるかもしれませんから」
「皆さんの聞いている通りあの鎧が現れたのは2ヵ月前です。我々が開発していた鉱山から掘り出されました。奴が現れてから村の老人や子供が次々に倒れてしまったんです。教会の人間に頼んで見てもらったら呪いの類らしいです」
「患者を見せてもらいませんか?」
「それなら村の外れで一緒に看病しています。案内します」
村長に連れられて村の外れの家に入る。
そこには凄惨な光景があった。ベットに寝ている子供や老人は栄養が足りていないのか痩せ細っている。血の気のない表層は苦痛を浮かべている。体を動かすのも辛いらしく、誰一人動かない。
「酷いものでしょう。何が原因かわかりますか?」
「いいえ、今のところ‥思ったよりも深刻な状態ですね。だからこそ我々も慎重に行かなければならないですね」
「どうゆうことですか?」
「まず、あなた方の言っている呪いの正体が全く分からない事が問題だ。死んだら更に呪いをバラ撒くタイプかもしれないからな。周辺の植生を調べて人間以外にはどう影響をしているか調べてから討伐しに行きます」
「なるべく早くしてもらいたいのですが‥」
「2日です。2日我々に下さい。その後鉱山に入ります」
「では案内は私が‥」
ドンッと表の扉が開く。そこには青年が立っていた。
「待ってください、村長。案内は俺がします。ドニーさんは俺を庇って死んだんだ。俺はその償いがしたんだ」
「いいんだ、いいんだ、エドガー。だいたいあのバカ息子があの鉱山を開こうとしたんだ。そしてあのモンスターを掘り出してしまった。息子の不始末は親が償わなければならないんだ」
エドガーと呼ばれた青年は村長と言い争っている。
「お二人とも落ち着いてください。私から提案があります。手分けして我々に同行して頂けませんか?鉱山の案内はエドガーにお願いしたい」
「何故ですか?」
村長が声を荒げる。
「呪いの効力は体の弱い人間を中心に広がっているからですよ。呪いの元に近い鉱山に入ったエドガーさんが無事なんですから尚更です」
「分かりました‥」
「まぁ今すぐ鉱山に行くわけではないです。危険だと感じたら彼は同行させません」
「ありがとうございます」
エドガーは頭を下げる
「では、私とオーウェンはエドガーさんと鉱山周辺を探索する。ギルベルトはドロイドさんと村の周辺の探索を、ジンは‥‥待機だ」
へ?思わず変な声が漏れ出る。本当に待機なのか‥?あんだけ警戒していたのに一人にするのか?もしかして期待されてない?
ジンの困惑をよそにオリビアは話を続ける。
「行動開始。終了は日暮れ前にする。今日は川の近くでキャンプする。その時に報告をしてくれ。解散」
各々の行動が開始された。そしてポツンと取り残されたジン‥
これって試されているのか?ジンは頭をぐるぐると回した。
そして不味い事に気付いた‥今の俺ってめちゃくちゃ怪しい人じゃね?何で冒険者としてきたのに何の調査もしてないなんて。
ジンは村長の家から出たのち、辺りをウロウロしていた。何かしないと狼狽えていると不意に女性から話しかけられる。
「あのー、冒険者の方ですか?今なにをしているんですか?よかったらお手伝いさせて下さい」
やばいどうしよう。俺のやるべきこと、やるべきことは‥そうだ。
「私は冒険者ですが、戦闘をメインにしておこなっていないんですよ。私は科学者なんですよ」
「カガクシャ?何ですか?それは」
「教会とは別の角度で人を助ける仕事です。呪いの根本の解決ではなく、今呪われている人々の命を守る仕事です」
「すごい仕事ですね、わたしにも手伝えるでしょうか‥」
金色の髪を靡かせながら笑顔で話しかけてくる。ジンは思わずどきっとする。
「もちろんです。えぇっと貴方の名前なんと言うんですか?」
「キャサリンです。貴方の名前は?」
「ジンです。ではキャサリンさん畑に案内してくれませんか?」
「わかりました」
オリビアの目的はわからない。だが、ここで自分をアピールしなければ殺されてしまう。
俺には戦う力はまだない。だから知識を使って彼らに自分が殺すには惜しい人材だと証明しなければ。