第二話 新しい仲間
徹夜で書き貯めを作りました。
とりあえず区切りのいいところまでは一日二回投稿頑張ります。
次は昼辺りに投稿します。
祐也は獣の息の根を完全に止める為、神から貰った携帯用のナイフで念入りに刺した。
ぐちゃぐちゃになった獣の皮をゴム手袋をした手で慎重に剥がす。鼻先に色褪せた鉄の臭いが突き刺さり裕也は思わず顔を顰める。ナイフで探っていくと硬い骨にぶつかった。その下には内臓たちがミキサーにかけられた果実のごとく、その鮮血を散らしていた。裕也は好奇心と罪悪感に相まみえながら取り憑かれるように解体を続けたが、あるところでピタッと辞めた。この動物には横隔膜があり、脊椎がある。この動物はおそらく哺乳類であろう。
生き物を刺すことなんて小学生のフナの解剖以来だった祐也にとってその感触は嫌に手に残った。
祐也は獣の解剖を終える立ち上がった。
辺りが騒がしい。耳を澄ませば獣の唸り声が聞こえてくる。1匹の獣が裕也の前に躍り出てきたのと同時に続々と周りから獣が姿を現す。どうやら解剖に夢中になっているうちに、沢山の獣囲まれてしまったようだ。
不味いことになった、自分の能力を把握する前にこんなにも大勢の獣を相手しなければならないなんて‥
祐也は額の汗を右手で拭い、左手をポーチに突っ込んだ。
1匹の獣が祐也襲いかかろうとした時、獣の頭を矢が射抜いた。獣の断末魔を合図に女性が2人出てきて次々と獣を殺していく。あれほど沢山いた獣がものの数分で全滅した。
あまりにも突然の事態に祐也は混乱していた。
すると、1人の女性が祐也に手を差し伸べてくる。爽やかな風が吹き、彼女の首にかけているブレスレットがゆらりと揺れる。
「大丈夫かあんた。怪我ないか?」
「助けてくれてありがとうございます。あの‥お名前は何というんですか?」
「私か?私はイザベル、弓を使っているのがカミラ、向こうの方にいるヌボーとしたやつはジュリアだ。あんたの名前は?」
「ユウヤです」
「南の方から来たのか?」
「はい、そうです」
服装から祐也のことを南の人間だと思っているようだ。
「あんた見たところソロで戦ったいるようだし、お世話にも戦い慣れているようにも見えない。よかったら私たちと一時的に組まないか?大人数でいれば安心だ」
祐也は迷った。ここでついていかない方が断然安全だ。先程のギルドにいた黒髪の青年のように日本人とばれてしまう可能性があるから。だが今の祐也には余りにも情報がない。ここはリスクを犯してもついていった方が情報が得られるだろうと判断した。
「是非お願いします」
「そうかいよかった。カミラ、ジュリア挨拶しな」
「カミラです。一時的ですがよろしくお願いします」
「ジュリア‥よろしく」
「お二人ともよろしくお願いします。それにしても凄いですね皆さん。女性なのにお強くて‥」
「14の頃から冒険者してるからな。もう10年の大ベテランだよ。困ったことがあったら相談してくれ、ルーキー」
「はい、よろしくお願いします。皆さんはどんな依頼を受けたんですか?」
「付近の獣の討伐と、とある薬草の採取だ。これならあんたでも大丈夫だろう?」
「そうですね」
祐也たちが話していると次第に東の空が暗くなる。
「ユウヤ、こりゃあ一雨降るぞ。しょうがない近くの洞窟に避難しよう。それにしてもこの時期に雨なんて珍しいな」
「そうですね」
祐也たちは洞窟に避難した。祐也は洞窟を見て目を見張った。鍾乳洞だ。壁一面に白色の世界が映し出されている。これはなかなか見れないほど見事だ。祐也が感嘆に浸っていると後ろからイザベルが声をかけてくる。
「見事なもんだろ。ここは拠点として私たちがよく使っているんだ。あぁ、あんまり奥にはいくなよ。奥には崖があって危ないから」
「ほんとに綺麗な鍾乳洞ですね」
「だろ、いいショウニュウドウだろ?直ぐに雨は止むだろう。少し休もうか」
だが雨は一向に止むことがなく、夜になってしまった。
「カミラ、ジュリア、ユウヤ、飯にするぞ」
イザベルがみんなに声をかける。イザベルは火を起こし、カミラはテキパキと食材を切り分ける。ジュリアは‥‥寝たまんまのようだ。
祐也はカミラの元へ行き、手伝いをしながら喋った。
「カミラさん、皆さんはどうゆう関係なんですか?」
「私たちは同じ村出身です。イザベルが冒険者になりたいって言ったのをきっかけにみんなで冒険者になったんです」
「同郷の方たちなんですね」
「ユウヤさんはどうして冒険者に?」
「やりたいことがあるんです」
「男のロマンってやつですか?」
「まぁそんな感じです」
祐也とカミラが喋っているうちに料理の準備はできた。切った具材を鍋に入れ、よく煮る。
その匂いを嗅いだせいかジュリアが眠い目を擦り、欠伸をしながら起きてきた。
「みんな、できたから食べようぜ」
イザベルの合図と共に食事が始まった。でてきた料理は豚肉と豆、米、野菜が入った料理。ホクホクと湯気をたてる食材たちが裕也を見つめる。それらの匂いが裕也の鼻腔をさすり食欲を掻き立てる。とても素材自体は質素なものではあったが、祐也にはこれまでで一番美味しく感じた。祐也は食べて安心したのか、そのまま寝てしまった。
祐也が起きるとそこは冷たい床だった。どこからか水滴が垂れてくる。祐也は先程まで焚火の前にいたはずなのにそこは寒くて暗い。どこまでも続く暗闇が裕也の心を煽る。
すると急に上から炎が投げ出された。松明の淡い光で少しずつ暗闇がかき消え、その代わりに不気味な影が地面を這う様に伸びる。
祐也の目に写ったのは‥
どこまでも続く暗闇の中に乱雑に捨てられた数多の死骸とそこに佇む大きな化け物と‥
暗闇から祐也を見下ろす冷徹な6つの目玉だった。