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神様遊戯~光闇の儀~  作者: Riviy
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第八十五ノ契約 合奏会、ご覧あれ?


刻は周囲にいたモノノケを一振りで蹴散らすとタンッとステップを踏むように一回転し、呆然と立ち竦むモノノケに向かって跳躍した。突如近づいてきたことに驚くモノノケに向け、薙刀を振り下ろした。しかし、さすが烏天狗ヨウカイの元で動いているだけあってか刃物を顔の前に置いて防がれてしまい、同時に弾かれてしまう。大きく弾かれたことで刻の体は後方に吹っ飛ばされてしまう。だが足で吹っ飛ばされるのを辛うじて防ぐとすぐさま跳躍し、敵の刃物が振り回されるよりも先に薙刀を振る。が、空を切る音が異様に大きく響いただけだった。つまり。バッと刻が振り返り様に薙刀を振りながらしゃがみこめば、敵の足に当たったような感触と同じく頭の上で空を切る虚しい音。ニヤリ。そう笑うのは無理もない。モノノケの足を蹴り上げスッ転ばせると刻は瞬時に立ち上がり、四肢をばたつかせるモノノケを見下ろした。そして、薙刀を振り下ろした。……はずだった。背後からした鼓膜に直に響くような音に刻はすかさず前のめりになり、前転する勢いで移動した。そうして前を向けば、倒れていたモノノケが新たに現れたモノノケの角を掴んで起き上がり、その上に乗った。新たに現れたモノノケは馬と云うか鹿と云うかそんなモノノケ。つまり、騎乗での戦いに変えたと云うことだ。上に乗ったモノノケは刃物、槍を刻に向けて構えると、足を軽く蹴り、馬を動かした。勢いよく刻に向かってくる敵に刻はガンッと薙刀の石突きを床に叩きつけ、威嚇とすると薙刀を構える。ドドドと床を駆けてくるなんとも不思議な光景に苦笑を漏らしながら刻はタイミングを逃さぬよう、敵を睨み付ける。そして、バッと槍が振られる瞬間に跳躍しモノノケ二体の頭上を通りすぎる。と同時に薙刀を振り、乗っているモノノケではなく馬のような鹿のようなモノノケに刃を滑らせる。


「おや」


が、ガキンという甲高い音に弾かれてしまった。スタッと着地した刻は旋回中のモノノケ達を睨み付けながら先程自分が攻撃したはずの皮膚を見やる。青白い、お世辞にも健康的ではない皮膚の内側からは銀色のような物が見え隠れしている。つまり……体内に金属か?


「……ふふ、ならば、私も本気で行こうか」


薙刀を構え、刻はクスリと笑うと滑るように駆け出した。それと同時にモノノケも駆け出し、再び槍を刻に突きつける。しかし、刻は滑るようにその一撃をかわすと薙刀を手首の上で回転させ、上へ突き上げた。途端に左肩に痛みが走るが気にしない。それよりも先に気になるのは薙刀の先である。薙刀の切っ先は上に乗っていたモノノケの胸元に突き刺さり、そして真横に振りきられていた。仇を取ったと言わんばかりに薙刀に捕らえられたその姿はなんと間抜けなことか。だがそれでもモノノケの動きは止まらない。馬上から飛び降りるとモノノケは刻に向かって振っていた槍を容赦なく抜き放った。ビリビリと左肩に痛みが走る。顔を歪めた刻など知ったことかと紅く染まった槍を振り回す。慌てて避けるために後退すれば、敵の蹴りが飛び、薙刀から手を離してしまう。薙刀を体に突き刺したままで刻を追い詰めようと迫ってくるモノノケ。だが、刻は両腕を構え、一つ一つの攻撃を丁寧にかわしては拳を突き出し、攻撃する。やはり薙刀があるせいか動きが鈍い。その時、刻の背後から二色の刃が放たれた。背後を見ずに右に左へと刻がかわせば、かわした場所から刃物が次々と放たれる刃の群れにモノノケは慌てふためき、刻に隙を与えまくる。刻はその隙を逃さないと云うように一気に攻め込み、薙刀を乱暴に掴むと上へ向けて振り上げた。真っ二つに割れたモノノケの顔が嘘だろと云うように呆然としており、なんとも面白いと刻は思ってしまった。振り切った薙刀を次なる獲物に定めると刻は後方を振り返らずに駆け出した。そんな彼女を執拗に先程の馬なんだか鹿なんだか分からないモノノケが今度はまるで闘牛のように何度も何度も足を振り上げ、勢いよく突進しようと敵が狙う。しかし、


「刻のもとには行かせませんよ?」


その上に重みと殺気を感じた。モノノケがバッと下半身を持ち上げればその上から誰かがクルリとまるで猫のような身のこなしで飛び降りる。目の前に飛び降りた紗夜はにっこりと笑うと容赦なく、槍にもなる杖の切っ先をモノノケの目に突き刺した。どうやら体は金属だが、他は、特に目は金属でもなんでもないらしい。なんとも楽である。突然の痛みに悶え苦しみ角を四方八方に動かす敵に再び容赦なく魔法攻撃を放ち、トドメとする。ホッと息を紗夜がついた、次の瞬間、左側からまるでかっさらうように大きな手が紗夜を捕らえようと伸ばされた。爪は鋭く刃物のように伸び、それだけで一種の武器だ。紗夜は慌てて後方に跳躍するが、まるで見えていると言わんばかりにその巨大な手は執拗に紗夜を追いかける。紗夜は右手に持っていた杖を背中で左手に持ち替えると、右手を大きく振り上げた。途端、その右手を狙って巨大な手が軌道を変えた。やっぱり、狙いは攻撃の手段()か!ズイッと自分の懐に一目散に接近してくるモノノケであろう巨大な手に向けて杖を突き刺す。刃物のように尖った杖の攻撃に手は怯むことなく、紗夜の手段を奪おうと右手を執拗に狙ってくる。此処までくればストーカーで訴えても良いんじゃないかとこの世界で得た知識を脳内でちらつかせてみる。ハッとそれに紗夜は笑うと背後に迫った柱を足で蹴り跳躍しようとする。がそれよりも早く巨大な手が紗夜の右手を捕らえ、柱に縫い付けた。失敗した!そう思ってももう遅い。右腕に響く痛みに紗夜は顔を歪めると敵の攻撃を軸に下半身の力を使って跳ね上がると杖を巨大な手に突き刺した。そうして攻撃魔法を放ち、針山にすると手はみるみるうちに小さくなり、骸骨と化して落下した。どうやら幻等で錯覚させていたらしい。右腕を横目に確認すれば、幻ではないことは一目瞭然。紅く腫れている。ついでにいえば袖もグシャグシャだ。結構気に入っていたので、ちょっと腹が立つ。


「むぅ。お覚悟は宜しいですか?まぁ、答えなんて期待していませんが!」


フヨフヨと漂う無力そうな骸骨のモノノケに向かって柱に一瞬四足歩行でくっついたかと思うと紗夜は勢いよく跳躍し、無事な左腕、ではなく右足に攻撃魔法の二色の刃を纏わせると幻が解けたが故にオロオロと狼狽えるモノノケに向かって強烈な蹴りを放った。ガガガガ、と二色の刃がドリルの如く回転し骨を勢いよく削っていき、胸元に大きな穴を作り出す。左足で着地し、なにもない頭に杖を振り回すと共に右足を胴体に回し蹴りを放つ。勢いよく吹っ飛んだモノノケの体は縁にぶつかった衝撃でバラバラに砕け散り、頭はカランカランと陽気な音を立てながら四階から落下して行った。動かなかったモノノケに満足!と言いたげに紗夜はフンッと胸を張った。

茶々は床に膝をついて着地するとすぐさま跳躍。途端、先程茶々がいた場所がモノノケの凄まじい攻撃を受けて抉り取られる。グラグラと抉られた衝撃で足元が揺れる。その揺れに耐えつつも茶々は壁に着地すると足を勢いよく蹴り、一直線に跳躍する。その先にいるのは茶々を狙って攻撃を仕掛けて来たモノノケ。茶々とよく似た巨大な剣ー刀かもしれないが戦いに身を委ねてしまっている茶々にとってはどうでも良いことだーを持つモノノケで自分の方に一直線に直進してくる茶々を見上げ、ケラリと笑うと肩に担いでいた刃物を頭上付近でぐるぐると振り回すと近づいてきた茶々に向かって振り下ろした。その一撃を間一髪で体を捻ってかわすと武器の上にバク転しつつ着地し、モノノケが刃物を振り上げる前に再び跳躍し、モノノケの頭上に飛び出る。と大太刀を思いっきり振り下ろした。ガァン!となにかがぶつかった音と共に茶々の腕に振動が伝わる。硬い、いや、これは。茶々が確信した瞬間、上がっていた土煙が一瞬にして晴れたかと思うと茶々は大きく吹っ飛ばされていた。腹に直撃した凄まじい一撃に胃から何かか込み上げてくるのを感じる。空中で体勢を立て直して、モノノケを横目に見るとどうやら茶々よりも早く刃物を大太刀と自分の間に滑り込ませたようだ。その凄まじい速さに茶々の口角がみるみるうちに上がっていく。バンッ!と床に着地し、茶々はモノノケを見上げるとニヤァと笑った。その笑みに背筋に悪寒が走ったのはもちろんモノノケだけだった。


「ハハッ。良いよ良いよ!殺してあげる!」


バッとモノノケが刃物を振り回すとよりも速く駆け出し、茶々は敵の足元に滑り込む。敵も素早く対応をし、自身の足元に向けて刃物を逆手持ちに攻撃する。後方からの攻撃に茶々はすぐには対応出来ずに足に痛みが響いたが、それはモノノケも同じこと。素早く自分の足元で動く茶々を追いかけ、刃物を振り回すたびにモノノケの体に傷がついていく。もちろん、茶々も攻撃しないわけはない。頭上を回転しながら越えるとモノノケの背後に回り込んだ。そして大太刀を容赦なく突き刺した。敵の動きがよりいっそう鈍り出す。それに茶々は心底嬉しそうに表情を歪め、まるで掻き回すように突き刺した大太刀をグリグリと回す。ドンドン大きな穴が空いていく恐怖がモノノケを支配するが、茶々にはどうでも良いことだ。後ろ手に刃物を痛みの中振り回してきたモノノケの一撃を大太刀を軸に一回転するとモノノケの肩に着地し、大太刀を引き抜く。モノノケが痛みと茶々を追いかけて刃物を振り回すが振り回しすぎて腕が捻りに捻りまくり、ブチリと嫌な音がしてモノノケの腕が切り落とされた。もちろん、茶々が敵の肩からやったことである。そのまま飛び降りながら大太刀を振り下ろし、攻撃する。敵が一瞬怯んだ隙に顎に向かって蹴りを放ち、後方に仰け反らせる。仰け反ったモノノケに向け軽く跳躍すると茶々は回し蹴りと大太刀を振り切る合わせ技を繰り出す。顔も体も真っ二つにされたモノノケの最期の抵抗と言わんばかりの武器が茶々を狙う。がそれを空中で足を入れ替え、吹き飛ばし着地。敵の刃物をキャッチするとモノノケにトドメを刺した。潰れた顔を晒しながら倒れていくモノノケを見下ろしながら茶々は次の獲物に向けて大太刀を振り回した。


「愉しませてよねぇ~?」


モノノケに突き刺さった別の武器は置いといて。

時雨は目の前で自分と同じように刃物を二本構えるモノノケを見て、舌打ちを漏らした。まるでカマキリのように構えるモノノケに時雨はなりふり構うよりも先に飛び出した。付近の壁と物を足場に素早く跳躍し、駆け、敵の懐に潜り込むと二本の剣をモノノケの顔に向けて突き上げた。しかし、そう簡単には殺らせてくれないようで間一髪で剣と顔の間に刃物を滑り込ませられてしまった。そして力一杯弾かれてしまう。足を踏ん張り、弾き飛ばされた体勢から回し蹴りを放つ。顔面を捕らえたその一撃さえもモノノケは防ぐと時雨の足をもう一本の手で掴むと放り投げた。放り投げると同時に二本の刃物を振りかざし、振り切る。空中に投げ出された時雨はすぐにやってきた攻撃を剣でどうにか弾こうとするが、モノノケの一撃一撃が重すぎて一つを防ぎ弾くので精一杯だった。カンッと衝撃を弾くがもう片方はしったことかと時雨は放置することを決めた。そこからはもう速い。空中で体勢を立て直すとそこに足場があるかのように蹴り上げ、勢いよく吹っ飛ばした張本人に向かって滑るように跳躍する。再びカマキリのように刃物を構え、もう一本の手をゆらりと揺らすモノノケに右の剣を振り下ろす。刃物を二本交差させて防いだモノノケ。空中で固定された時雨にもう一本の腕が伸びる。それを待っていましたとばかりに時雨は背後に隠すように持っていた左の剣を手に向けて切り上げた。ボトリと鈍い音と共に伸縮中だったのだろうか、変な伸び方をした腕が床に落ちた。振り切ったついでと言わんばかりに左の剣を押し合いをする剣の山へと加える。二本対二本の二刀流対決だ。だが、足場もなにもない空中にいる分、床に足をつけているモノノケの方が圧倒的有利には違いなかった。


「だと、思うなよっ!」


しかし、それも圧倒的間違いで。時雨は自ら剣を弾くと後方に回転しながらモノノケから離れ、敵が動くよりも数秒速く、背後に回り込んだ。モノノケの二本の刃物が時雨を狙って振り返り様に振られるがそれよりも早く動き、今度は敵の右側へと移動する。そうして斜め上から剣を振り下ろした。続いてモノノケが反応する前に剣を同じ軌道で振り上げるとモノノケのほぼ真ん中で二本を左右に振った。深い溝のような傷が十字架の如くモノノケに刻まれる。まぁその十字架の縦はちょっと斜めっているが。痛みに悶えながら振り上げかけた刃物を時雨に振り返り様に振り回す。それを時雨は間一髪で上空へ跳躍することでかわすと敵の頭を踏みつけ、足場にすると再び大きく跳躍し、敵の刃物が届かないところまで跳躍する。そこはもう天井なのだが、クルンと空中で回転し、時雨は天井に足をつけ、強く蹴った。勢いよく頭上から降下する時雨をモノノケが痛みの中で狙い、刃物を構える。時雨も空中で剣二本を構え、そして。キィン!と甲高い音の数秒後、スタッと時雨が着地する。と、彼の後方でモノノケが鈍い音を立てて真っ二つ……いや四つにバラバラに切り刻まれたモノノケが意図も簡単に床に転がる。それを気配で感じながら時雨は膝立ちから立ち上がると右の剣を肩に担いだ。


「たわいもねぇ」


ケラケラと笑い、時雨は次のモノノケに向けて駆け出した。




この四人は個々に戦っても強いし、寄ればもっと強い(確信)

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