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神様遊戯~光闇の儀~  作者: Riviy
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第六十二ノ契約 涼しき日々の戯れ


「にゃんこー!」

「にゃぁ~?にゃー!」

「ハハ、可愛いー!」

「にゃあん」


三毛猫を自分の頭よりも高く持ち上げれば、三毛猫は前足を可愛らしく動かす。「抱っこして」「撫でて」と言っているような真ん丸のクリクリとした愛らしい瞳に見つめられ、茶々はギュッと三毛の子猫を抱き締めた。三毛猫は満足そうに「にゃあ~♪」と鳴いた。そんな茶々の足元にはサバトラの猫が「次はこっち」と言わんばかりに頭を茶々の足に擦り付けている。サバトラの猫にも気付き、茶々は片手で頭を撫でると猫は気持ち良さそうに喉を鳴らした。茶々と猫二匹、なんとも和む光景で周囲に花が舞っているような幻さえ見えてしまう。哉都はソッとスマートフォンのカメラで写真を撮った。


「カナ、その写真、僕にもちょうだい?」

「良いぜ。あとで一斉に送る」

「ありがとう」


哉都の隣に座っていた国久が彼のスマートフォンの画面を覗き込みながら言う。画面には子猫を抱き締め、もう一匹と戯れる茶々が映っている。錯覚だろうが花が見える気がする。その写真を見て国久の表情が恐ろしいほどに緩む。親バカならぬ神王バカだと言ったのは鈴花だっただろうか?いや、ノロケだったか?どちらにしろ今の国久は神王バカだ。まぁ、そう思う哉都も写真を無意識のうちに撮っている時点でみんな同じなのだろうが。国久の膝の上には三匹中の最後の一匹、赤毛の猫が気持ち良さそうに丸くなっている。指先で頭を撫でれば、ゴロゴロと喉を鳴らす。猫を撫でる国久を反射的に撮った哉都は悪くない、うん。国久も気にしない方針なのか、猫を撫でながら言う。


「それにしても鈴花と刻、遅いね」

「紗夜が時計持って行ったけど、結構時間経ったよなぁ」

「初めは茶々だったけど」

「それな」

「主様ー哉都カナくーん、聞こえてるよぉ?」


茶々が二人を軽く睨むように言えば、彼の肩によじ登った子猫が「にゃん!」と鳴いた。まるでいつかの紗夜のようだ。それに二人は顔を見合せ、クスリと笑い合った。


涼しい、エアコンが効いた部屋の中。此処は鈴花の家である。図書館での勉強会から数日。モノノケやヨウカイの出現が以前よりも増えている可能性があることから警戒を呼び掛けているが、日常茶飯事と言ってしまえばそれまでである。まぁ、出掛けるよね夏休みだし!みたいな。いや、哉都達の遭遇確率が高いだけか……?まぁそんなこんな、ということで哉都達も出掛ける予定で集まっていた。だが鈴花が「ちょっとやりたいことがあるの」と言って彼らを家に招き、刻を連れて自室にこもってしまった。多分、いつか言っていたお洒落をこの日の記念に施すつもりだろう。刻が少しだけ照れていたのと鈴花が楽しそうにスキップを踏んでいたことが証拠である。哉都達が鈴花の家に招かれた時はまだ彼女の両親がおり、出掛けて行ったはずの鈴花が帰って来た事に驚いていたが鈴花の「女の子の友達をお洒落にするの!」に母親が感激と陥落し「お母さんの使いなさい!」と道具が増えた事も影響していると思われる。鈴花の両親は数分前に仕事で行ってしまったが「楽しんでねー」と「気をつけて」と言われた。結構な確率で何故か出会ってしまっている哉都達にしてみればこれ以上の警告と言うか、言葉はない。ちなみに鈴花が契約していることを微かながらに気づいていたらしく鈴花には言わないものの「これからも鈴花をよろしく」と両親に言われた時は嬉しいとしか言いようがなかった。また、契約の話は鈴花から言われるまで待つらしい。なんというか、鈴花の両親だなと実感してしまった。


そんなこんな、時間が経過していた。腕時計と壁にかけられた時計を見比べ、国久はうんと頷いた。これから行こうとしているのは最近出来たテーマパークだ。春に完成すると言われていた施設だが、ようやっと完成した。色々開園時間は過ぎているし、混雑時間に被らなければ良い話だが……やっぱり長い。夏祭りの時同様、刻にお洒落を施しているのだろうからに他ならない。まぁ、時間がかかるのは承知済みだし、またあの刻が見れるなら……


「(……なに考えてんだ俺はっ!)」


ボッとそこまで考え、哉都の頬に熱が火照る。ま、まぁ、あの時の刻は綺麗だったし……うん、なんだ。熱くなった頬を誰と言うわけもなく隠すようにスマートフォンに顔を埋める。とそこで写真の中の茶々の変化に気がついた。カーディガンはもう暑いので半袖に薄めのガウンを羽織っているが、子猫を抱き上げる茶々の爪に色が塗られているのに気づいた。


「……国久、茶々ってネイルしてたっけ?」

「え?してないけど」

「でも、ほら」

「……してる。オレンジ色かな?」


気になって国久に問えば、知らないと帰ってくる。二人して猫と戯れる茶々を振り返って見れば、確かに茶々の爪にはオレンジ色のネイルが塗られている。いつからだ?確か、部屋に入った時は塗ってなかったような……


「茶々」

「なにー?」

「ネイルしてたっけ?」


国久の問いに「え?」と呆けた表情をすると茶々は子猫片腕に手を見、「嗚呼、これね!」と笑う。


鈴花リンちゃんに塗られた!なんか刻にも塗りたいから試しにって。紗夜にはこの色が合うーってオススメされた」

「……そりゃあ時間かかるわ」

「どう?似合う?似合う?」


恐らく似合うかどうか見たかったのだろう。それか茶々にもお洒落の片鱗が飛んだか。子猫とサバトラ猫を抱えて茶々は爪を見せるようにして近づいてくる。綺麗にオレンジ色に塗られており、少しラメが入っているのかキラキラして見える。


「うん、似合うね。綺麗に塗られてるし。器用だよね鈴花」

「だよなーまぁ瞳と同じ色だもんな、似合うぞー」

「へへ~♪多分、刻も塗ってくるだろうから、楽しみにしててね哉都カナくんっ!」

「なんで俺!?」


驚いてそう叫べば、哉都の膝の上にサバトラの猫を「よいしょ」と乗っけながら茶々は言った。


「え、だって刻の主様でしょ?一番楽しみにしてるの哉都カナくんじゃん」

「っ!」


当たり前でしょ?と言わんばかりの言葉にカッと再び頬に熱がこもる。サバトラの猫が「どうかした?」と哉都を見上げてくるがそれどころではない。ニヤニヤと意地悪く笑う茶々が恨めしい。国久もニコニコ微笑ましそうに笑っているもんだから余計に分が悪い。頬の紅さを消すように哉都は別の話題を出す。


「そ、そういえば時雨ってもう大丈夫なんかな?」


あ、話題間違えたかも。気になることを言ったつもりだったが不安げな表情を浮かべた国久に哉都の思考が一瞬止まった。図書館の件でお礼を言おうとしたのだが「まだ」と言われて時雨は籠ったきりである。


「……一緒に話したいんだけどなぁ」

「時雨にも理由があるんだししょうがないよ」

「茶々みたいにずっと厚着ってのもこの夏はきついからね」


「どう言うこと主様!?」と声を荒げる茶々に国久がまぁまぁと落ち着かせながら今までの彼の服装を説明する。哉都はホッと胸を撫で下ろした。時雨と話したいのは本当だ。まだ彼の中では整理がついていないのだろうか?『神祓い』のことを心配しているなら、姿を見た者は少ないし大丈夫だと思うのだが……


「時雨、いるんだろ?」


じゃれ合う(?)二人を横目に哉都がそう声をかければ、背後の空間ーソファーの後ろーが少しだけ歪んだ。


「まだ無理か?」


反応はない。だが気配が動いた気がした。その気配は哉都の方に身を乗り出すとクスリと笑った。そうして


『後でな』

「!それって……」


哉都が答えを返す前に気配は消えてしまった。けれども、その一言だけでも哉都は嬉しかった。後がいつなのかは知らないが。我知らずに嬉しそうに笑っていたらしい。国久と茶々にニヨニヨと笑われていた。


「良かったね!哉都カナくん!」

「こらこら茶々。あんまり茶化さない茶化さない」

「わかっててやってんだろお前達は!」

「「そりゃあね」」

「くっそっ!」


仲の良い二人である。クスクスと笑う二人に哉都もつられて笑えば、三匹の猫達も嬉しそうに瞳を細める。その時、ガチャリとリビングの扉が開いた。

そろそろ進まなくてはならぬ(誰やねん)はい、三つ、言った通りですはい。でも此処まで。

次回は木曜日です!

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