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神様遊戯~光闇の儀~  作者: Riviy
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第四十四ノ契約 夕暮れ時と黄昏時



細い通路を歩き始め、暫くすると唐突に目の前が歪んだ。無理矢理ねじ曲げるような変な歪み方に哉都は立ち眩みがしたのかと思ったが、一瞬にして違うと察した。この感覚は、一度感じた事のあるもので。つまり、そういう事でしかない。そう瞬時に理解した途端、オレンジ色だった空が完全に真っ黒に染まった。闇のように真っ黒に染まった空には星は見えない。その代わりとでも言うように浮かび上がったのは新たに生まれ始めるのか、それとも消え始めたのか、どちらとも判別のつかない夜の闇と同じく真っ黒な新月だった。つまり、そういう事だったのだろう。立ち止まり、一斉に哉都達は空き地を振り返った。哉都が刻を見上げるとなにも言わずに薙刀を出現させ、にっこりと微笑んだ。その笑みは強い。それに哉都は頷いた。茶々も大太刀を握り、刻と共に哉都達の前に飛び出す。キィンという不協和音が耳鳴りとなって耳に響き、脳内をぐちゃぐちゃにかき混ぜていく。不気味な感覚と気持ち悪さにあの時の歌声を思い出す。いや、あれは本当に歌だったのだろうか?嗚呼、今はそれさえも分からない。だって、()()()()()()()()()()()()


「全く……暇人なのかしらねぇ」

「そんなこと言ってやるなって鈴花」

「まぁ、ある意味俺達は取り逃がした獲物だしな。来るちゃ来るだろ」

「でも、自惚れても良いんでしょ?カナ」


哉都の肩を叩いて国久が言えば、その通りと言わんばかりに哉都は口角を上げて微笑んだ。そう、一緒にいれば大丈夫。自惚れても大丈夫。だって、信じてるから。哉都達の言葉に背を押されるようにして刻と茶々は武器を交差させて構え、そして空き地を睨み付ける。なんにもない、殺風景な空き地に新月が嗤いかけるように影なき影を落とす。と、あの歌声が響いた。いや、正確に言えば歌声と言うよりも鼻歌、もしくは呪詛に近い声はまるで哉都達を捉えるの如く、世界に取り越された空間に響き渡る。首を締め上げられているような妙な圧迫感に隣にいる鈴花の体が震え出し、国久が首を押さえる。嗚呼、怒っている。いや、()()()()()


「殺さないと破棄しないと殺さないと破棄しないと殺さないと破棄しないと殺さないと破棄しないと殺さないと破棄しないと殺さないと破棄しないと殺さないと破棄しないと殺さないと……」


まるで呪いの言葉を吐き出すように響き渡るその声は悲痛で苦悶で。その声にピクリとなにかを感じ取ったのか刻と茶々が微かに反応した。すると、金網フェンスの上の空間がグニャリと歪んだ。ねじ曲げるかのように真っ二つに。ピシッと亀裂が入ったような音もしたが警戒と緊張感に包まれていた哉都達にとってはさだかではない。そうして歪んだ空間から現れたのは金網フェンスに腰かけた人物『神祓い』。案の定、哉都達を逃がした後にも強制破棄を行ったであろう大幣は真っ赤に染まり、真っ黒に染まった空間でそこだけが異様な輝きを保っていた。ぶつぶつと先程の言葉を呟きながら人物は顔を上げた。刻と茶々を視界に納めた人物は光のない瞳を満足げに細めた。ゾワッ。背筋を駆け上がる形容し難い恐怖と悪寒、そして放たれた陽炎のような殺気。つい数日前も似たようなものを浴びたと思ったのに体は正直にも恐怖で震えてしまう。でも


「(俺達の方が、強い)」


キッと哉都は人物を睨み付けた。彼は刻と茶々にしか興味がないようだったが、刻は気づいていた。その(願い)と云う思いを。ギュッと薙刀を握り締め、座ったまま動かない人物を見据える。前回のような歌声を使っての結界による閉じ込めに似ているが、ちょっと違う。だが、必ず勝機も逃げ道もある。


「再戦ってわけだねぇ。今度こそ、キミの血を噴き出させてやる……!」

「まぁまぁ茶々、落ち着きな。まぁでも、借りは返すに限るねぇ!」


刻と茶々から怒りにも似た殺気が放たれる。人物の殺気と相殺され、三人の空間だけ異様な空気を身に纏ってしまう状況だ。一方哉都達の方は殺気が相殺されたために恐怖が薄まり一安心である。と、その時、『神祓い』が動いた。金網フェンスを蹴り上げ、そっとまるで小鳥が羽を休めるかのように優しく降り立ったのだ。その拍子にマフラーが風に揺られて大きくなびく。まるで翼のようで、切れ味鋭い刃のようでもあった。ユラッと人物は顔を上げ、刻と茶々を視界に入れると呟く。


「……破棄すれば、救われる」

「なにが救われるって云うんだ?」


無意識のように呟かれたその言葉に国久が疑問を問いかけるが、人物は完全無視である。強制破棄、獲物は二人だけと云うことなのだろうか?無視されてしまい、国久はムッと顔をしかめていた。すると刻が哉都達を視線のみで振り返り、言った。


「『神祓い』について話したいことがある。と言っても確定ではないのだがね」

「今聞いた方が良いか?」

「いいや。あいつの動きを止めてからの方が良いだろうね」


人間のようでいて人間ではない者『神祓い』。同じように『神の名を冠する者』である刻と茶々にしか分からないことでもあるのだろう。その答えが歌声だと云うことに哉都達は気づいていた。人物が大幣を構えた。来る、言わずともわかった。


「刻、行けるな?」


なにが行けるかなんて、聞かなくても良いでしょう?聞くのは野暮でしょう?哉都の強い問いかけに刻は契約印が刻まれた片手を哉都に見せるように掲げた。


「もちろんさ主君。今度こそ、勝利を主に渡そう」

「そんなことしなくても無事で勝ってくれば良いんだよ」

「ふふ、そうだね」


嬉しそうに微笑む刻にそう哉都は言う。国久が「茶々もだよ」というと彼は「分かってるもーん!」とプクゥと頬を膨らませて叫んだ。


「あいつが動きを止めた時がチャンスだ。気を付けろよ」

「承知した」


哉都からのアドバイスに刻が頷く。動きを止めた時、それは『神祓い』唯一の弱点と言っても過言ではなかった。

そうして、両者は相手を睨み付ける。哉都達はジリジリと後退していくと心許ないがゴミ箱に身を潜めた。それを確認したか否や、人物が大きく跳躍し、刻と茶々も武器の交差を解くと大きく跳躍した。

















相手に跳躍し、武器を振るい身を潜めながら力を送る。そんな彼らの様子を誰にも見つからない、知られない空と云う豪華な席で見ている者達がいることなんて、誰知るよしはない。そう、()()()()()()()()()()()()()()

さあさあ、二戦目開始です!……何話くらいになるか今から不安です……←こらこら

次回は木曜日です!

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