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神様遊戯~光闇の儀~  作者: Riviy
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第三十八ノ契約 不気味な翼、舞い降りて



自分達を囲むようにして集まるモノノケに刻と茶々は背中を合わせ、武器を構える。烏天狗は狂ったように笑いながら上空で翼をはためかせている。通常なら先に烏天狗を仕留めたいところだが、烏天狗は頭上高く飛び立っており、二人が跳躍しても圧倒的に距離が足りないのは目に見えていた。ならば、その風圧に耐えつつもスライム状のモノノケを倒す方が良い。刻と茶々は互いに視線だけで相手を見るとその意図を読み取り、口角を上げた。そうして、同時に跳躍した。刻は薙刀を短めに持つと遠心力を使ってモノノケの、ぶよぶよとした頭ーと言うのかさえ不明だがーを蹴散らしにかかる。茶々も同様に大太刀を振ってモノノケどもを大きく吹き飛ばす。が、敵がスライムなためか、二人の渾身の攻撃はほぼ無意味となって終わってしまっていた。ベジョッと変な音を立てながらモノノケ達は地面に伏せるように倒れ込んだかと思うと、ピョンッと今度はまるでジャンプするかのように復活する。まさかの復活に刻の後方で茶々が「ギャッ!」と悲鳴を上げる。刻も可能なら悲鳴を上げたい。薙刀を普通に持ち直し、自分の近くに這い寄って来たモノノケに向かって石突の方を勢いよく突き刺す。と反対革からやって来た敵に回し蹴りを放つ。顔もなにもない無表情のスライムがグニャリと潰れ、一瞬刻の足がスライムに取り込まれたように見える。が刻は容赦なく、足を振り切り、敵を真っ二つにする。運が良かったのか否や、足蹴りを食らったモノノケは地面にそれこそ影のように吸い込まれて消滅してしまった。そうして残ったのは黒い羽根。刻は怪訝そうに首を傾げながら、もう一体のモノノケを薙刀で切り伏せる。しかし、こちらは運がよろしくない。復活してしまった。その時、無透明なスライムの中に一瞬だけ黒いものが見えた。場所は真ん中よりの下。縫い付けられたかのような近さにある地面付近だ。まさか……そう思った瞬間、刻は先程の黒い羽根を視線だけで振り返った。すでに黒い羽根は風で何処かに飛んで行ってしまっていた。


「茶々!モノノケの中にある黒い羽根だ!それがこのモノノケの弱点……心臓だ!」

「はぁ!?無透明だけどそんなの見えないけど!?」

「よく見ろ一瞬しか見えん!」


一瞬、ねぇ。刻の助言にも似た言葉に茶々は目の前のモノノケを凝視した。攻撃としてはさほど痛くもないし、逃げ足も悪くない。忌々しいのは復活する体を持つと云うことだろうか。左右から茶々を挟み撃ちするように大きく跳躍し、頭上にその体を投げ出すモノノケ二体。前方のモノノケから視線を外さずに頭上を通りすぎようとするモノノケに目を向ける。美しいほどの月明かりがモノノケの無透明の体を照らし出す。すると、その体に黒い羽根が見えた。月明かりに照らされて一瞬だけ煌めいた黒い羽根。それを視界に納めたか否や、次の瞬間には茶々は大太刀をまるで円を描くように頭上へ振りかざしていた。先程見えた羽根はもう見えなくなっていたが茶々にはわかっていた。羽根を真っ二つにしたことを。ザッと空気と共に敵を切った音が耳に届いた瞬間、二体のモノノケは突然砂に姿を変え、最後の抵抗と言わんばかりに真下にいる茶々に雨のように降り注いだ。慌てて茶々が後方に飛び退いた途端、ドサドサッと鈍い音がして砂が落下し、地面にクレーターを作った。まさかの重みにさすがの茶々も顔をひきつらせるしかない。嗚呼、でも


「弱点が分かればこっちのもんだよね!でしょ刻!」


狂喜的な笑みを浮かべ、瞳を爛々と輝かせながら茶々は後方を振り返る。そこにいるのは刻と、その背後にいるモノノケ。ニィと口角を三日月のように上げて笑うと刻と入れ違いになってモノノケに向かって跳躍し、大太刀を真っ直ぐ突き刺した。刻は茶々と入れ違いになると彼の後方にいる、今まさに味方の亡骸を踏み越えながらこちらへ突進してきている。刻も敵の方へ駆ける。両者が正面からぶつかる、と云う瞬間、爪先に力を籠め、頭上へと跳躍する。まるで赤い布をはためかせられた闘牛のように突進するモノノケの頭上を宙返りする要領で飛び、背後に回り込む。視線だけで一瞥した時に見えた羽根を狙い、背中ー……背中?ーに切りかかる。しかし、微妙にずれてしまったらしく、敵の破片が散っただけだった。トンッと着地し、クルリと振り返り様に薙刀を振る。今度こそ薙刀はモノノケの黒い羽根に突き刺さり、縦に裂かれた。切っ先についたスライムをピッと振って弾くと八咫烏警備隊の方を横目に振り返った。刻の言葉が聞こえていなかったのか否や、まだモノノケに苦戦を強いられていた。だが、どちらかと云うと優勢で、どちらかと云うと別の方から逃れるようにやって来たモノノケに苦戦しているようだった。それに加え、烏天狗の風圧攻撃。烏天狗は他のところで恐らくだが八咫烏警備隊と戦っていた別のモノノケが応援として助太刀に入ると満足そうに微笑んだ。上空を飛行していることから明らかに優勢なのは烏天狗だ。どうする?すると、烏天狗がこちらを見下ろした。烏の仮面の嵌め込まれた、赤と云うか黄色と云うか微妙な色合いの宝石がギロリと刻を射ぬく。ゾワリと背筋を駆け上がる悪寒に思わず足がすくんだ。嗚呼、多分『神祓い』と同じくらいの強者だ。狂った烏天狗の気配がそうさせているのかもしれないが、刻にはそう思えてならなかった。


「さあ、さあさあさあさあ!死なないと!!」


そうしなければならない、そう言うように空を滑るようにして急降下を開始する。あれをまともに受ければ、吹っ飛ばされるのは確実だ。刻は烏天狗が近づくのを待ち伏せし、ぶつかるというところで右に転がって避けた。刻にぶつからず、通り過ぎた烏天狗は下駄でスピードを落とし、仮面越しでも分かるほどに笑いながら刻を振り返った。何処か無防備な背後に茶々が大太刀を大きく振りかぶる。烏天狗は茶々に気付き、彼に向かって斜め上に回し蹴りを放つ。間一髪で蹴りを回避し、大太刀を振り切ると先程回された足が刃を防いだ。恐ろしいほどの速度にチッと茶々の口から舌打ちが漏れる。下駄で大太刀を弾き、烏天狗は足を振り切る。と左から刻の薙刀が襲いかかる。足を振り切った直後ではもう一度回し蹴りで防げやしないし、それに右には再び大太刀を振り回す茶々もいる。絶体絶命、挟み撃ち。だが、ガキンッ!


「?!え?!」

「っ!クソッ」


刻と茶々の耳に甲高い音が響く。二人の攻撃を烏天狗がその名の通り烏の翼で防いだのだ。あまりの出来事に驚愕しつつも次の行動に移ろうとする二人に烏天狗が笑いかける。かと思いきや、翼で二人の武器を絡めて引き寄せると否応なしに頭を掴み、地面に向かって叩きつけた。『神祓い』との一戦を思いだし、刻はゾッとした。慌てて紙一重で片手をつくと上半身を捻り、跳ね起き薙刀を振る。間一髪、茶々の顔が地面にめり込むのを防いだ。が、刻が起き上がった時には既に烏天狗はそこにいなかった。いや、()()。突然、腹に来た痛みに思わず体を折り曲げた刻の背に踵落としが襲いかかる。痛みにもがく刻の視界に素早く動く烏天狗が一瞬だけ写った。捉えられない、瞬きしてしまえば、それで終わり。そう言わんばかりの速度だった。一瞬だけ見えた足元に落下していく体を低く屈めると回し蹴りを放って足を刈る。が軽く飛んでそれをかわすと烏天狗はシュン……と小さな風の音を残して消えた。何処だと辺りを見渡す二人。が周囲は阿鼻叫喚と雄叫びと悲鳴で気配が読みづらい。すると、茶々は背後に悪寒を感じた。悪寒を感じた瞬間、勢いよく振り返り様に大太刀を振れば、案の定背後には烏天狗がいた。素手で茶々の大太刀を防いでいる。刃を直接掴んでいるにも関わらず、その手は紅く染まることはなく、逆に茶々の腕に凄まじい圧力がかかり腕が震える始末だ。ギリッと唇を噛みしめ、茶々が大太刀を大きく振り切る。がその前に烏天狗が飽きたと言うように呆気なく刃を離した。そのため大きく茶々の体が前方に傾く。その瞬間を、隙を狙っていたことに茶々も少なからず気づいていた。だからこそ片足を瞬時に折り曲げ、勢いよくしゃがみ込んで茶々の顔面スレスレを通過して行った拳を回避する。拳と云うよりも烏天狗にしてみればただ拳を突き出した、と云うようなものだったがあり得ない風圧と衝撃波が茶々の前髪を掠めて行った。かと思えば、その拳は不安定な体勢の茶々目掛けて落下を開始する。ガンッ、とまたもや顔スレスレに落とされた拳に茶々は軽く口角を上げる。そうして畳み込んでいた足を勢いを付けて跳ね上がらせ、その弾みで烏天狗に大太刀を突くように振る。それを烏天狗は首を傾げる要領で簡単にかわすと翼を広げて一旦距離を取った。ピョンと跳び跳ねるようにして起き上がった茶々のもとに刻がやって来る。二人で上空の烏天狗を睨み付ける。スゥとまるで目を細める感じで烏天狗が笑った。するとまた消えた。が、今度は分かった。シュン、という風を切る音に茶々が素早く大太刀を構えた途端、茶々の目の前に烏天狗が出現していた。そして両腕から放たれているであろう攻撃は素手とは言い難い衣料を持ち、彼を吹っ飛ばした。ビリビリと空気が刃物のように振動し、それに伴い腕も痙攣する。が、足で衝撃を和らげて止まると跳躍しようとした。その時、頬に暖かい感触がした。なんだと指先でなぞると血だった。どうやら先程の風圧や衝撃波で切れてしまったらしい。その事実に茶々は口角を三日月のように歪め、叫んだ。


「刻!」

「任せな」


グルンと薙刀を振り回す刻へと茶々は跳躍し、タイミング良く薙刀を足場にする。茶々が薙刀に乗ったタイミングで刻も大きく薙刀を振り上げ、跳躍の糧とする。大きく跳躍した先にいるのは夜の闇に紛れる烏天狗。刻も近くのテーブルと木を斜めに蹴り上げ、上空へ跳躍する。上空に現れた二人が一斉に烏天狗へと攻撃する。それらをまた烏天狗は翼で防ぐ。がしかし、今回は上空。そうも行かない。上空で翼を止めてしまえばどうなるか、わからないほど馬鹿ではない。だからこそ烏天狗は翼で二人を大きく弾くと続けて来た追撃を両腕で防御した。籠手でも巻いているのか、勢いよく振り下ろされた攻撃は意図も簡単に防がれてしまう。その状態のまま、刻は烏天狗の懐に潜り込むとお返しだとその腹に蹴りをかまし、そのままそこで一回転し腕を弾く。弾かれた衝撃で仰け反った烏天狗の背後から茶々が大太刀を振り下ろす。動きが鈍っていたとは言え、バサッと音がして烏天狗の翼がもがれる。烏天狗の仮面の奥、瞳が驚愕に見開かれ、そうして、()()()()()


「キャハハハハハッッッ!!哀れ!抗うすべを間違えた愚かな者よ!死を望む者よ!…………まだ、これからが本番である」


突然、狂ったような笑い声を響かせたと思いきや一変。低い、低い男のような声で烏天狗は二人の耳に囁くように言った。そうしてもがれた翼は再生され、新たな存在として生まれ変わった。白い、烏天狗とは正反対の白鳥のごとき美しさを持つ者に。それはある意味、二人目の烏天狗だった。


今日は一つです。ゆっくり行きます……多分戻るけど。

次回は来週月曜日です。

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