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神様遊戯~光闇の儀~  作者: Riviy
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第二十ノ契約 二人の神様


哉都達は案の定、と云うか予定通り、アイスを食べたあと食料の買い出しに出掛けた。ちなみに昨夜のうちに国久は両親に茶々と昨日の出来事を話していたらしく「明後日帰る!!」と耳元で叫ばれたらしい。追記、息子も増えたと喜んでいた。ということは買わなければ大変な事になるのでみんな一緒に買い出しである。ついでにお昼も一緒に済ませた。やったね。大荷物の食料や日用品を両手一杯に持った男性陣の前を女性陣+αが軽快な足取りで歩いて行く。もちろん、+αは茶々の事である。ちなみに茶々がいるからか刻は着物姿のままだ。そんなこんな、ゆっくりと慎重に歩く茶々の前を鈴花と刻が楽しげに談笑しながら歩いている。そんな後ろ姿を見て、哉都はほっこりと微笑んだ。


「……買いすぎたかなー」

「主様、ボク持とっか?」

「片方だけお願いしても良いかな?」

「うん!」


多く買いすぎた荷物に国久が思わず悲鳴を上げると茶々が助っ人に入る。二人仲良く片方ずつ持つその姿はなんというか親子に見える。


「……茶々って国久くんの子供かい?」

「は?!」

「あーなんか刻ちゃんの言いたい事分かる気がするわ。刻ちゃんとカナは兄弟っぽいもの」


後ろを振り返った鈴花と刻が優しく微笑みながらそう言えば、国久は照れたように笑い、茶々もクスクスと笑った。


「似るのかね?契約者と神王・神姫って」

「さあ、分からないね。そういう縁の元に私達は召喚されたんだから」


ねっ、と刻が哉都の頭を優しく撫でる。それに哉都は恥ずかしそうに身を捩った。兄っていうか姉っていうか、うん。縁というのがなんだが運命とかそんな神秘的なものを感じてしまい、ちょっとこそばゆくて嬉しいと感じてしまうのはこの楽しさを謳歌してしまったからだろう。もう、あとには引き返せない。そう誰かが言っているようでもあって、哉都は軽く体を震わせた。


「カナ、大丈夫?寒い?」

「アイスの食べ過ぎじゃない?」

「そんな食べてないだろ!?茶々なんか五本だぞ五本!」

「え、茶々!?」

「ちょっ、哉都カナくん言わないでよ!裏切り者ー!」

「どっちかって言うとそれを教えたのは私だよ茶々」


「お腹壊すから二本までにしなさい」と注意する国久に茶々は素直に返事をすると片手で前方にいる刻の着物を掴んだ。どうやら告げ口した仕返しらしいが、ちょっと後方に仰け反っただけで刻はケラケラと笑うのみだ。


「まだまだだね茶々」

「ムゥ、これでも鍛えてるんだよ?刻が強すぎるんだよ、将棋の腕が!」

「将棋の話!?ねぇ将棋の話だったの今の話!?」


思わず国久がツッコミを入れたのは無理もない。刻と茶々が愉快げに笑うのを見てどうやらじゃれているのだと分かったらしく、優しく微笑んでいた。すると鈴花がススス……とさりげなく哉都の隣にやって来、「で」と前置きをしてニヤニヤと笑いながら言う。


「カナはなんでこの時期にアイスを食べようなんて思ったのかしら~?」

「なぁそれまだ続くの?続行なの?」

「今度、自家製アイス作ってみるかなー」

「「楽しみにしてます国久様!」」

「キミたち切り替え早いね!?」


国久の言葉に「楽しみだねー」「そうだなー」とすぐさま話題を切り替える哉都と鈴花に茶々が驚きの声を上げ、そんな茶々を刻が落ち着かせる。一方国久は笑っていた。楽しげに笑う彼らの会話が途切れたのは公園の前を通った頃だった。途端に刻と茶々が真剣な表情で三人の前に躍り出たと思うと公園の中に悠然と佇むなにかを睨み付けた。先程まで楽しそうに笑っていたのも雰囲気も一瞬にして氷を当てられたような、刃物を突き付けられたかのように恐怖に染まる。幸い、哉都達の周囲に他の人や公園で遊んでいる人がいなかったことが救いだろうか?


「刻」

「嗚呼、いる」


緊張と警戒を滲ませた声で哉都が問いかけると刻がそう答える。やっぱり、モノノケか。手慣れた手付きで刻の手から荷物を抜き取ると一瞬彼女と目が合った。そして、その手に薙刀を出現させる。茶々の荷物は鈴花がこっそりと受け取っていた。公園の中、一つ佇むなにかは哉都達を値定めするかのようにじっと見つめている。かと思うとその姿を変貌させた。そこに現れたのは四本の腕を持ち、下半身は蜘蛛の姿をしたモノノケだった。四本中二本の手にはガラスの破片のような刃物を持ち、見えているのか見えていないのかさえ不明な濁った白い瞳をこちらに向けている。ちなみに上半身は人ではなく何故か所々鎧に覆われており、見える部分は茶色い。不思議というかなんというか、モノノケはホントに異形だと常々思う哉都である。


「主君、危ないから公園には入らないようにな」

「嗚呼、分かった。でも、刻も気を付けろよな」

「茶々もね。無理は駄目だよ」

「うん、大丈夫だよ主様!」


心配し、だが大丈夫と確信している哉都の言葉に刻が頷く。茶々も片手を上げ、元気に返事をする。と茶々の右手をオレンジ色の光が包み込み、そうしてなにかを形作る。形作られたのは鞘がない大太刀で、柄の部分が多少短くその分刃物に長さを取っている。所々柄には血のようなものが付着しており、刃にも付着しているように見えるが定かではない。武器を手にした途端、茶々の表情が変わった……ような気がした。


「行くよー刻!」

「無理するんじゃないよ、茶々」

「分かってるよ!」


薙刀と大太刀を構え、二人がモノノケに向かって跳躍した。哉都達は万が一に備えて数歩後方に下がる。周囲は道、狙っているのかいないのか、それとも他の場所でモノノケが大量発生し、その残党が現れたのか。日常茶飯事な世界ではどれが真実かなんて分かりゃしない。鈴花は一応ということなのか、スマートフォン片手に立っていた。


跳躍した二人はモノノケの前後に回り込み、ほぼ同時に武器を振り回した。しかし、敵もそんな簡単に死ぬはずなどなくガラスの破片のような刃物で大太刀を防ぎ、残りの二本の腕で薙刀を鷲掴みにすると回転する勢いを利用して刻を薙刀ごと吹っ飛ばした。空中に投げ出された刻は体を捻り、体勢を整えると着地する。一方茶々は防いだ刃物とは違うもう片方の腕によって振られた攻撃を首を傾げる要領でかわすと援護に回る腕を視界に納める。そうして鎧に覆われた腹を蹴り上げ、その場で一回転すると同時にモノノケの刃物を弾き飛ばす。後方に軽くよろめいた敵に着地した刻が凄まじいスピードで接近し、容赦なく蜘蛛の足を掻き切る。足を刈られるような感じになりつつも懸命に刃物で攻撃するモノノケ。なにも持っていない腕が刻を捕らえようともがいているが、距離を取った彼女を捕らえる事は到底できなやしない。代わりに捕らえられたのは茶々の片腕だった。ギリッと力強く腕を掴まれてしまい、あまりの痛さに茶々の顔が歪む。ギリギリッとまるで骨まで悲鳴を上げているかのような痛みと音に茶々の顔が酷く歪んで行く。モノノケはその間に体勢を立て直し、脇の方で刻の薙刀と片手間に攻防を繰り広げていた。が、その時、モノノケの片腕が宙を舞った。その数、二本。ボトボトと不気味な音を立てながら落下する腕。モノノケの肩口から何色か判別不能の血が吹き出し、近くにいた茶々に襲いかかる。どうやら掴まれた腕ともう一本の腕を大太刀で下から払うように切り裂いたようだ。そしてそのままモノノケの鎧に覆われていない部分に向けて回し蹴りを放つ。二人と距離を取るように敵は後方に飛び退く。


「茶々!大丈夫?」


腕を強く掴まれた歪な音は哉都達の方にまで響いて来ていた。それに多分だが返り血を浴びたように思う。国久が心配で叫ぶと茶々が振り返った。高揚した、興奮したような笑みを浮かべていた。それはさながらゲス顔とでも言うのだろうか?心の底から戦闘を、殺し合いを愉しんでいた。嗚呼、なるほど。その笑みとちょっと困ったように笑う刻を見て哉都は確信した。国久から聞いた契約条件。鈴花は茶々の顔に少なからず付着したモノノケの血ーまるで刃物で右斜めから切られたかのように血がついているーに驚いているようだった。


「ハハッ!ねぇ、綺麗でしょ主様!」


歓喜の声を上げる茶々を刻が止めにかかる。その時の茶々は何処か残酷なまでに妖艶だった。だが国久は茶々に向かって優しく微笑んだ。国久も分かっていたのだ。だからこそ、哉都を振り返り言った。


()()()


その言葉に茶々の表情がふにゃりと緩んだ。とても、とても嬉しそうだったのは言うまでもない。トンと彼の肩を叩いた刻と二人は頷き合い、気を引き締め真剣な表情になると二本の腕を失いつつも刃物を構えるモノノケと対峙した。

色々進みますよー!

茶々は「こんな感じー」と思いながら作ったら出来た結構お気に入りの子です。

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