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神様遊戯~光闇の儀~  作者: Riviy
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第十九ノ契約 秘密の作戦会議


カチャカチャ、パシャパシャと音が響く。皿を洗い、水で泡を洗い流す音がまるで音楽のようにリビングに奏でられている。広いと云うか狭いと云うか微妙な判断しづらい台所で横一列に並んで皿を洗っているのは茶々、鈴花、刻である。茶々が皿を洗い、泡まみれになった皿を鈴花が水で洗い流し、それを布巾で刻が拭く。流れ作業中である。刻が拭いた皿は傍らに種類別に積み上げられている。また茶々の傍らには綺麗になった皿とは反対に汚れた皿が山積みになっている。茶々が平らげた料理の残骸である。国久が言っていたように茶々に料理を作りすぎたのだ。結果、食料がなくなるという事態になった。そりゃあそうだ。昨日は哉都達三人にご馳走して、茶々にご馳走したならばなくなって当然である。食料買い出しが決定した瞬間であった。が、その前にと後片付け開始だ。ちなみに哉都と国久はテーブルを拭いているところだ。


「手ぇ冷たーい!でも、楽しー!」

「良かったね茶々」


泡まみれになった手と皿を楽しげに見ながら茶々が笑って言うと刻が彼の方へ身を乗り出して言った。茶々が元気よく頷き、鈴花に泡まみれの皿を渡した。


「前はこんなことやらなかったからね!」

「あら、そうなの?」

「うん、時代の違い!」


チョンと遊ぶように泡がついた人差し指を自分の方へ振り返った鈴花の鼻へとつける。えっ、と驚く鈴花の前で茶々が悪戯っ子の笑みを浮かべる。


「茶々ー?!」

鈴花リンちゃん、次のお皿行くよー」

「え、あ、ちょっ……もう!」


怒ったような表情をした鈴花からのっけらかんと逃れ、茶々が次の皿を渡してくる。慌てて皿を受け取る鈴花だったが鼻の泡を取ろうにも先程茶々に受け取った皿と今まさに受け取った皿で両手が塞がっているため、素直に泡を洗い流すしか方法がない。怒っていながらクスクスと笑うという高度な表情をし、鈴花は洗い物を再開する。刻は鈴花の鼻についている泡を不憫に思ったのか、


「鈴花ちゃん、ちょっと」

「え?……あら、ありがとう刻ちゃん」

「いいえ。茶々、あまり悪戯をしてはダメだよ」

「はーい」

「だから泡!」


刻が布巾で泡を取ってくれた。笑みで礼を鈴花が言うとそう茶々をたしなめる。が泡まみれの手で返事した茶々から泡が飛び、鈴花が叫ぶ。怒った表情で鈴花と茶々がむぅと睨み合い、ケラケラと笑い合う。二人の周囲に花が舞っているような、美しくも楽しげな雰囲気が漂う。それを刻は微笑ましく思いながら皿を拭くために布巾を持ち直した。


「仲が良いねぇ」

「っていうか茶々のノリが良いんだよ」

「鈴花もね」


テーブルを拭きながら哉都と国久は台所の三人を見て嬉しそうに笑う。刻と茶々は知り合いだからこそ仲が良いのだろうが、新たな友人ーと云うよりも国久の部下だかーと早くも仲良くと云うか楽しげく話せて嬉しい自分がいた。それと同時に何処か不安と心配もあったのだが、きっとモノノケに対することなのだろうとすぐに分かった。それよりも哉都には国久に聞きたいことがあった。だからか、何度も何度も国久の方を覗き見るような感じになってしまった。それに国久も気がついていたのだろう、布巾を畳むと屈めていた腰を伸ばす。


「カナ、ちょっと一緒に来て貰って良い?手伝って欲しくて」

「え?嗚呼、良いけど」

「ありがとう。鈴花、あと頼んだ」


突然言われて哉都は驚いたが、リビングを出て行こうとする国久に着いて行く。国久に頼まれ、鈴花が「ええ!」と声を上げるのを背に哉都はリビングを出た。リビングを出た二人を鈴花が何処か暖かくも不安げな瞳で一瞥していたことなど知るよしもないが、()()()()()()()()()()

リビングを出た二人は玄関と部屋を繋ぐ廊下の中間辺り、国久の自室付近まで来ると壁に背中を預けて国久が言う。


「で、なに?カナ」

「うん、契約条件とか世界のこと聞いたか?」


刻に聞いた、習った事とは少し違う神王・神姫と世界、そして自分達の秘密話。些細な秘密を親友二人には言えずにいたことが何処か心苦しかった。まぁ、鈴花の場合はどんな手を使ってでもそこまで辿り着いてしまいそうではあるが。それでも、秘密を共有出来、()()()()()()()()()()()が出来た事は嬉しかった。

哉都の問いかけに国久は柔らかく笑い、肯定の意を示した。神王・神姫とかわした契約書をその体の何処かに刻んだのだから当たり前だ。それにその行程の一部を目の当たりにもしたのだから。


「聞いた。秘密なんだってね。契約者に課せられたもう一つの楔ってとこかな」

「茶々の契約条件ってなんだった?」

「……どうかしたの?」


国久は哉都の様子に疑問を覚えたらしく、心配そうに問い返すと哉都は首を軽く振った。


「……ちょっと気になっただけ。刻は『裏切らないこと』って言った。それが気になって」

「そっか。神姫だし色々あるんだろうね」

「あ、あと!教えてもらった奴、ちゃんと合ってるかなーって」


恥ずかしそう、と云うか不安と云うか複雑な感情と表情で言う哉都に国久は一瞬、ポカンとしていたが意味が分かったのか、「ブッ」と口元を押さえて吹き出した。国久らしからぬ吹き出し方だったので逆に哉都が驚くことになった。


「茶々でしょ?茶々……っはは……」

「く、国久?」

「っ、大丈夫、大丈夫。まぁ、茶々はあの通り明るい性格だからね。心配になるのも無理はないよ。ご飯食べるまで忘れてたっぽいけど」

「嘘だろなぁ?!」


マジか!いや、茶々ならあり得る!いや、それにそういう奴もいるよな!うん!納得していても驚くものは驚いてしまう。哉都が驚愕にツッコミをかませば、国久の笑いのツボに余計にはまってしまったらしく口元を押さえて笑いを堪える。オロオロと哉都がしていると暫くして収まったのか、「ごめんごめん」とちょっと笑いながら言った。……やっぱりまだ笑ってるんじゃないか?


「ご飯食べたら思い出したみたいだね……契約条件は『ボク(茶々)を怖がらないこと』……僕らは、ちゃんと彼らを知らない」


真剣な瞳で言う国久に哉都も頷く。モノノケ対策とは言え、自分達の関係はまだ脆い。世界と強く繋がっていようとも、今は自分達の友人で。相棒とも言える彼らを知りたいと思うのは無理もなかった。多分、長い時を生き召喚される彼らが受け入れてもらいたいと思うのと同じなのだろう。


「どういう意味かはわからない。でも」


トン、哉都の胸元を拳で軽く叩く国久。哉都は片手を上げ、拳でやり返すかのように国久の胸元を軽く叩いた。


「僕らは応じるまでだよ。目的のために」

「そうだな」


クスリと笑い合う二人。昨日のこともあり、国久は一皮向けたように感じる。それが哉都にはちょっと嬉しかったりする。


「(ま、無理は禁物か)」


一瞬、刻のあの笑みが脳裏に甦った。少しだけ、胸が締め付けられるようなそんな感覚に哉都は軽く首を傾げる。と、その時、リビングの扉が開き、チョコンと茶々が顔を覗かせた。


「主様ーお皿洗い終わったよー!」

「分かった、ありがと茶々」

「アイス食べて良い!?」

「良いよ」


「やったー!」と叫んで扉の向こう側に茶々が消えていく。弟もアイスを食べていたが、そんなに美味しいのだろうか?夏以外あまりアイスを食べない哉都にとってはちょっと魅力的だった。


「……俺もアイス食べたい」

「え!?カナ、珍しいね?!」

「弟も茶々も食べてて、気にならない方が可笑しくない?」


ニィと哉都が笑えば、国久も笑う。そうして二人はリビングに戻った。リビングで鈴花も刻もアイスを食べていたので一緒に食べたのは良い思い出だ。

楽しく過ごさせたい……云うことなくなってきた(早い)

次回は月曜日です!

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